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第一章
1.俺と来い【5】
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もう、泣けてきちゃいます。……悔しいから泣かないですけど。また職場を探さなきゃ……ってか、再就職可能かしら。
「俺と来い、メルシャ」
何で私の名前を知ってるのですか。胡乱な目で見てしまいます。だって、思い切り怪しいですよ。あ、冒険者だからこの手の情報収集能力もあるって事ですか?
「俺の名前はヴォルティ・ツヴァイス。覚えておけ」
えっ?命令?って言うか、ボ……なんですって?大体そんな長い名前、覚えられないですよ。農村じゃ、四文字が限度なのですっ。
「ボ……?」
「ヴォルティ・ツヴァイスだ」
「ヴォル?」
「……それでも良い」
諦めたような顔をした彼は、何故だか大きく溜め息をつきました。何?私のせいですか?
「で、ヴォル様。私は何をするのですか」
半ば諦めにも似た感情に押し潰されそうになりながらも、とりあえず先方の意向を確認します。大体、私に何をさせようと言うのですか。自分に言い寄って来る女性ではなく、興味を持っていなさそうな私だからですって?
「様はいらない。俺とセントラルに行く」
へぇ~、決定なんですね。様もいらないのですね。私の意思は関係ない訳ですね?
「そこで皇帝に会ってもらう。メルは俺との婚姻の儀が済めば、好きにすれば良い。つまりは、俺が皇帝の前で婚儀を挙げるまで傍にいれば良い。離婚は承知できないが、婚儀の後なら別の男とナニをしようが好きにしろ。そして俺にも構うな」
何を言ってるのでしょう。つまりは偽装結婚を事もあろうに皇帝様の前でしろって言うですか?そんなのバレたら、不敬罪どころか詐欺なんじゃないですか?!下手したら処刑ですよっ。
「それ、私には何の利益もないですよね」
「一生を遊んで暮らせる。不満か?」
ぅわ~、この自信満々な態度。ムカつきます。お金があれば良いだろうなんて、どのような育ち方をしてきたのでしょうか。
「不満だらけです」
「そうか。だが、変更は承知できない。他の女を捜している時間もないしな」
な……、この人はおかしいです。私というより、女性自体を馬鹿にしています。どうしましょう。非常に暴力的に行動したいです。
「すぐに出発する。行くぞ」
「ちょっ、ちょっと待って下さいっ。私、行くなどと一言も口にしていません」
「うるさいな。やはり強制的に連れて出る方が楽。説明が面倒だ」
ブツブツと呟いて整った顔を少しばかり歪ませると、ヴォルはスッと私に歩み寄りました。いえ、腕を掴まれていたのでそんなにも離れていなかったのですが。そこで私の意識が落ちました。えぇ、ストンと。吹き消した灯りのように、闇に包まれてしまいました。
「俺と来い、メルシャ」
何で私の名前を知ってるのですか。胡乱な目で見てしまいます。だって、思い切り怪しいですよ。あ、冒険者だからこの手の情報収集能力もあるって事ですか?
「俺の名前はヴォルティ・ツヴァイス。覚えておけ」
えっ?命令?って言うか、ボ……なんですって?大体そんな長い名前、覚えられないですよ。農村じゃ、四文字が限度なのですっ。
「ボ……?」
「ヴォルティ・ツヴァイスだ」
「ヴォル?」
「……それでも良い」
諦めたような顔をした彼は、何故だか大きく溜め息をつきました。何?私のせいですか?
「で、ヴォル様。私は何をするのですか」
半ば諦めにも似た感情に押し潰されそうになりながらも、とりあえず先方の意向を確認します。大体、私に何をさせようと言うのですか。自分に言い寄って来る女性ではなく、興味を持っていなさそうな私だからですって?
「様はいらない。俺とセントラルに行く」
へぇ~、決定なんですね。様もいらないのですね。私の意思は関係ない訳ですね?
「そこで皇帝に会ってもらう。メルは俺との婚姻の儀が済めば、好きにすれば良い。つまりは、俺が皇帝の前で婚儀を挙げるまで傍にいれば良い。離婚は承知できないが、婚儀の後なら別の男とナニをしようが好きにしろ。そして俺にも構うな」
何を言ってるのでしょう。つまりは偽装結婚を事もあろうに皇帝様の前でしろって言うですか?そんなのバレたら、不敬罪どころか詐欺なんじゃないですか?!下手したら処刑ですよっ。
「それ、私には何の利益もないですよね」
「一生を遊んで暮らせる。不満か?」
ぅわ~、この自信満々な態度。ムカつきます。お金があれば良いだろうなんて、どのような育ち方をしてきたのでしょうか。
「不満だらけです」
「そうか。だが、変更は承知できない。他の女を捜している時間もないしな」
な……、この人はおかしいです。私というより、女性自体を馬鹿にしています。どうしましょう。非常に暴力的に行動したいです。
「すぐに出発する。行くぞ」
「ちょっ、ちょっと待って下さいっ。私、行くなどと一言も口にしていません」
「うるさいな。やはり強制的に連れて出る方が楽。説明が面倒だ」
ブツブツと呟いて整った顔を少しばかり歪ませると、ヴォルはスッと私に歩み寄りました。いえ、腕を掴まれていたのでそんなにも離れていなかったのですが。そこで私の意識が落ちました。えぇ、ストンと。吹き消した灯りのように、闇に包まれてしまいました。
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