「結婚しよう」

まひる

文字の大きさ
上 下
4 / 515
第一章

1.俺と来い【4】

しおりを挟む
「な、何言ってるんですか」

「ん?言葉は通じるよな」

「そんな事を言ってるんじゃないんです!何故、私の仕事場があなたの意向で変わるんですかっ」

 噛みつきまくりですよ、私。良かったです、お店じゃなくて。って言うか、ここも十分公共の場なんですけど。行き交う人々の視線が痛いです。でもここは引き下がってはいけない気がします。だって私の今後がかかっているんですもの。

「君が欲しい。願うなら、あの店より良い給金だって支払う」

「ば……馬鹿にしないでくださいっ」

 永久就職?冗談じゃないです。って言うか私が欲しいなんてそんな台詞、良く恥ずかしげもなくこんな往来で言えるものですね。

「私にも選ぶ権利があります」

 そうですよね?いくら貧乏農村のなんの取り柄もない私でも、こんな勝手に決められるなんて真っ平ゴメンですわ!って言うか、何で私?マーサとかなら、喜んでついてきますわよっ。

「君じゃなければ駄目だ」

 さっきから好き勝手な事を……そもそも、私はこの人の事を何も知らないのですよ?この人だって、私の事をキミキミって……卵じゃないんですからっ。

「じゃあ、何故私なんですか」

 理由くらい聞いても良いですよね?ついていく訳じゃないですけど。

「君が俺に興味が無さそうだから」

 …………はい?今、何と?キョトンとした私に、男は言葉を続けます。

「他の女じゃ駄目だ。俺を見てサカって寄ってくる女は面倒臭い」

 こ、この人……女を何だと思ってるのですか!そりゃ見た目だけは良いから、数多あまたの女性が言い寄って来るでしょうけど?でもそれにしたって酷い言い様ですっ。

「お言葉ですけど、それなら結婚なんてしなければ良いじゃないですか」

 そうです、何故そんな人が求婚なんてするんですか。

「相手がいないとまた面倒なんだ」

 本当に馬鹿にしています。そんな話を聞いて、ハイハイと私がついていく訳ないでしょう。こんなに腹が立つ事って初めてです。両親も他界していてこの村に親族なんていないですけど、私には私の生活があるのですから。

「あの食事処のマスターには了承を得た。今までご苦労様との事だ」

 って、何勝手に私の仕事を終わらせているのですか?!忙しいですけど遣り甲斐があって、結構気に入っていたんですからね?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。

バナナマヨネーズ
恋愛
 とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。  しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。  最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。  わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。  旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。  当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。  とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。    それから十年。  なるほど、とうとうその時が来たのね。  大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。  一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。 全36話

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

【完結】夫は王太子妃の愛人

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵家長女であるローゼミリアは、侯爵家を継ぐはずだったのに、女ったらしの幼馴染みの公爵から求婚され、急遽結婚することになった。 しかし、持参金不要、式まで1ヶ月。 これは愛人多数?など訳ありの結婚に違いないと悟る。 案の定、初夜すら屋敷に戻らず、 3ヶ月以上も放置されーー。 そんな時に、驚きの手紙が届いた。 ーー公爵は、王太子妃と毎日ベッドを共にしている、と。 ローゼは、王宮に乗り込むのだがそこで驚きの光景を目撃してしまいーー。 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...