「結婚しよう」

まひる

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第一章

1.俺と来い【4】

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「な、何言ってるんですか」

「ん?言葉は通じるよな」

「そんな事を言ってるんじゃないんです!何故、私の仕事場があなたの意向で変わるんですかっ」

 噛みつきまくりですよ、私。良かったです、お店じゃなくて。って言うか、ここも十分公共の場なんですけど。行き交う人々の視線が痛いです。でもここは引き下がってはいけない気がします。だって私の今後がかかっているんですもの。

「君が欲しい。願うなら、あの店より良い給金だって支払う」

「ば……馬鹿にしないでくださいっ」

 永久就職?冗談じゃないです。って言うか私が欲しいなんてそんな台詞、良く恥ずかしげもなくこんな往来で言えるものですね。

「私にも選ぶ権利があります」

 そうですよね?いくら貧乏農村のなんの取り柄もない私でも、こんな勝手に決められるなんて真っ平ゴメンですわ!って言うか、何で私?マーサとかなら、喜んでついてきますわよっ。

「君じゃなければ駄目だ」

 さっきから好き勝手な事を……そもそも、私はこの人の事を何も知らないのですよ?この人だって、私の事をキミキミって……卵じゃないんですからっ。

「じゃあ、何故私なんですか」

 理由くらい聞いても良いですよね?ついていく訳じゃないですけど。

「君が俺に興味が無さそうだから」

 …………はい?今、何と?キョトンとした私に、男は言葉を続けます。

「他の女じゃ駄目だ。俺を見てサカって寄ってくる女は面倒臭い」

 こ、この人……女を何だと思ってるのですか!そりゃ見た目だけは良いから、数多あまたの女性が言い寄って来るでしょうけど?でもそれにしたって酷い言い様ですっ。

「お言葉ですけど、それなら結婚なんてしなければ良いじゃないですか」

 そうです、何故そんな人が求婚なんてするんですか。

「相手がいないとまた面倒なんだ」

 本当に馬鹿にしています。そんな話を聞いて、ハイハイと私がついていく訳ないでしょう。こんなに腹が立つ事って初めてです。両親も他界していてこの村に親族なんていないですけど、私には私の生活があるのですから。

「あの食事処のマスターには了承を得た。今までご苦労様との事だ」

 って、何勝手に私の仕事を終わらせているのですか?!忙しいですけど遣り甲斐があって、結構気に入っていたんですからね?
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