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第十章
8.約束は守ろう【3】
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〈大……丈夫……から……〉
また知らない誰かの声が聞こえてきます。
勝手に頭の中で響く声は、私の意思に反して訴え掛けていました。
私が心配してしまう事はダメなようです。──でも今の私の心には、そんな見えない誰かの声は届きませんでした。
だって、目に見えてヴォルが大変なのです。彼がその場を動かないのも、もしかしたらもっと酷い目にあっているからなのかも知れませんでした。
〈だから……大丈夫……だって……〉
私の心の叫びに答えるかのごとく、その声は頭の中に話し掛けてきす。
──何が大丈夫なものですかっ。
それでも私は怒りに任せて怒鳴りました。すると私の感情に圧倒されたのか、『大丈夫』と繰り返す声が止まります。
そこで漸く冷静になった私は、不意に現在の状況が気になりました。
今更ながらにここは何処でしょう。まさか夢の中なんて事はないと思いますが。
先程は気付かなかったのですが、キラキラと光るものが私の周囲を飛び回っていました。辺りを見渡して、でもちゃんとウマウマさんもいます。
ここはヴォルと一緒に来た島です──たぶん。目を開けて寝ているなんて事、ないとも限りませんが。
〈ここ……結界の……中だから……〉
声が私の内心の疑問へ答えてくれるように、再び話し掛けてきました。
「……ええっ!!」
私はそれを聞き、何度か瞬きを繰り返した後で叫びました。
あまりの状況の変化に驚きすぎて、大声を出してしまったのです。悲しいかな、ウマウマさん達から迷惑そうな視線を向けられました。
ごめんなさいです、はい。
〈大丈夫……彼……生きてる……〉
途切れながらも聞こえた内容。
ウマウマさんへ頭を下げていた私ですが、再び聞こえた声にガバッと勢い良く顔を上げました。
彼とは勿論、ヴォルの筈です。
〈……そんな……音……だったかな?……あ、違う……ヴォルティ……だよ〉
僅かな逡巡の後、声はハッキリとヴォルの名前を呼びました。
──ヴォルティって呼びましたよね。
ちゃんと彼の名前を知っていると言う事は、お知り合いのようです。
〈僕は……だよ〉
頭の中に聞こえる声と連動するように、目の前で漂う光達は輝きを増しました。
今こうして私と会話をしているのは、もしかしなくても精霊さんのようです。
「あの……ありがとうございます、精霊さん」
私は相手がどの光か分からないまま、深く頭を下げました。
王城のヴォルの研究室の中でなら、私にも精霊さんの形がはっきりと視認出来ます。でもそれ以外の状態では光としてしか認識出来ない事に変わらないようでした。
〈僕は……だよ?〉
同じ言葉が、今度は不安げに告げられます。
先程の私の謝意は届かなかったのかもしれませんでした。
〈あ、僕は……だからね。君達の使う言葉とは違うんだよ〉
私の心の問いに、安心したように返答が返ってきます。
言葉が違うと言われました。確かにヴォルは精霊さんと通常の言語で言葉を交わしてはいません。──精霊言語、と言っていた気がしました。
けれども残念ながら、私には精霊言語は分かりません。
〈あ、そっかぁ。僕達の言葉も、君には伝わらないんだね。さっきの、セイレイサンって言うので良いや〉
問題が解決したかのように、楽しそうに声が返ってきました。
先程までは途切れ途切れでしか聞き取れなかった声も、今ではこうして普通に話している言葉は聞き取れます。けれども恐らく名前を名乗っていると思われる部分など、極一部は聞き取れませんでした。
単語そのものが違うのでしょうか──不思議です。そして何より、私がヴォルのお知り合いである精霊さんと認識した途端、言葉が違和感なく交わせるようになったのが不思議でした。
色々難しい問題が出てくるので、思わず首を傾げた私です。
──それよりもこの精霊さんは何処にいるのでしょうか。
〈何処って、君の中。僕はヴォルティの……だから、君といつも一緒にいたんだよ。もう離れられないけど、何の問題もないよね?〉
姿は見えないものの、にこやかな感情が伝わる声でした。
しかしながら、聞こえた内容に何やら不穏な単語が含まれていたようです。そして私には理解しがたい難しい内容でもありました。
ヴォル関係である事は確実です。
──すみません。もう少し詳しく説明して下さい。
私はどうして良いか分からず、何か怖い事になっているような印象を受けてしまいました。
また知らない誰かの声が聞こえてきます。
勝手に頭の中で響く声は、私の意思に反して訴え掛けていました。
私が心配してしまう事はダメなようです。──でも今の私の心には、そんな見えない誰かの声は届きませんでした。
だって、目に見えてヴォルが大変なのです。彼がその場を動かないのも、もしかしたらもっと酷い目にあっているからなのかも知れませんでした。
〈だから……大丈夫……だって……〉
私の心の叫びに答えるかのごとく、その声は頭の中に話し掛けてきす。
──何が大丈夫なものですかっ。
それでも私は怒りに任せて怒鳴りました。すると私の感情に圧倒されたのか、『大丈夫』と繰り返す声が止まります。
そこで漸く冷静になった私は、不意に現在の状況が気になりました。
今更ながらにここは何処でしょう。まさか夢の中なんて事はないと思いますが。
先程は気付かなかったのですが、キラキラと光るものが私の周囲を飛び回っていました。辺りを見渡して、でもちゃんとウマウマさんもいます。
ここはヴォルと一緒に来た島です──たぶん。目を開けて寝ているなんて事、ないとも限りませんが。
〈ここ……結界の……中だから……〉
声が私の内心の疑問へ答えてくれるように、再び話し掛けてきました。
「……ええっ!!」
私はそれを聞き、何度か瞬きを繰り返した後で叫びました。
あまりの状況の変化に驚きすぎて、大声を出してしまったのです。悲しいかな、ウマウマさん達から迷惑そうな視線を向けられました。
ごめんなさいです、はい。
〈大丈夫……彼……生きてる……〉
途切れながらも聞こえた内容。
ウマウマさんへ頭を下げていた私ですが、再び聞こえた声にガバッと勢い良く顔を上げました。
彼とは勿論、ヴォルの筈です。
〈……そんな……音……だったかな?……あ、違う……ヴォルティ……だよ〉
僅かな逡巡の後、声はハッキリとヴォルの名前を呼びました。
──ヴォルティって呼びましたよね。
ちゃんと彼の名前を知っていると言う事は、お知り合いのようです。
〈僕は……だよ〉
頭の中に聞こえる声と連動するように、目の前で漂う光達は輝きを増しました。
今こうして私と会話をしているのは、もしかしなくても精霊さんのようです。
「あの……ありがとうございます、精霊さん」
私は相手がどの光か分からないまま、深く頭を下げました。
王城のヴォルの研究室の中でなら、私にも精霊さんの形がはっきりと視認出来ます。でもそれ以外の状態では光としてしか認識出来ない事に変わらないようでした。
〈僕は……だよ?〉
同じ言葉が、今度は不安げに告げられます。
先程の私の謝意は届かなかったのかもしれませんでした。
〈あ、僕は……だからね。君達の使う言葉とは違うんだよ〉
私の心の問いに、安心したように返答が返ってきます。
言葉が違うと言われました。確かにヴォルは精霊さんと通常の言語で言葉を交わしてはいません。──精霊言語、と言っていた気がしました。
けれども残念ながら、私には精霊言語は分かりません。
〈あ、そっかぁ。僕達の言葉も、君には伝わらないんだね。さっきの、セイレイサンって言うので良いや〉
問題が解決したかのように、楽しそうに声が返ってきました。
先程までは途切れ途切れでしか聞き取れなかった声も、今ではこうして普通に話している言葉は聞き取れます。けれども恐らく名前を名乗っていると思われる部分など、極一部は聞き取れませんでした。
単語そのものが違うのでしょうか──不思議です。そして何より、私がヴォルのお知り合いである精霊さんと認識した途端、言葉が違和感なく交わせるようになったのが不思議でした。
色々難しい問題が出てくるので、思わず首を傾げた私です。
──それよりもこの精霊さんは何処にいるのでしょうか。
〈何処って、君の中。僕はヴォルティの……だから、君といつも一緒にいたんだよ。もう離れられないけど、何の問題もないよね?〉
姿は見えないものの、にこやかな感情が伝わる声でした。
しかしながら、聞こえた内容に何やら不穏な単語が含まれていたようです。そして私には理解しがたい難しい内容でもありました。
ヴォル関係である事は確実です。
──すみません。もう少し詳しく説明して下さい。
私はどうして良いか分からず、何か怖い事になっているような印象を受けてしまいました。
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