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第十章
6.逃げろっ【5】
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『決定的なって……、さっきの光線?ブレス?アレはヤバかったよぉ、地形が変わっちゃったし。ってか、伝説では竜は知能が高いってあったよなぁ。もしかして、人の言葉を理解出来ちゃったりして』
この状況でも楽しそうなベンダーツだ。
ある意味羨ましくも思えるが、俺自身はそこまで楽観的に物事を捉えられない。仮に人語を解するのであれば更に面倒事が増す気がするので、今は考えたくもなかった。
『会話している暇はないんだろ』
俺は溜め息をつきながら告げる。
既に魔力の残りも少ないのだ。続けて、魔力回復の為の宝石も後一つ──そして現在、目に見える敵の損傷率は皆無ときている。
この最悪とも言える状況下で、全てが今更だった。
『あれ?もしかして、回復出来てちゃったりしてる?アレだけヴォルの攻撃を受けといて、傷一つないなんておかしいもんねぇ』
漸く気付いたように、わざとらしく驚いて見せるベンダーツである。
──本当にいつも楽しそうだ。
『こっちはボロボロだがな』
『ハハハ……、確かに』
俺の呆れを含んだ言葉に、ベンダーツも苦笑を返してくる。
現時点で二人とも既に、面と向かって戦うだけの余力があるように見えなかった。
『風の弓も壊れちゃったし、どうするかねぇ』
『火山から引き摺り下ろすか、現状維持で力で押し潰すか』
顎に手を当てて考える素振りをするベンダーツに、俺は現時点で考えうる二つの方法を告げる。
そもそも、逃げるという選択肢が既に消されているのだ。あの魔物が飽きるまで付き合うか、どちらかが倒れるかしかない。
おそらく俺の魔力が尽きたら終わるだろう、とは続けられなかった。
『引き摺り下ろす……って、どうするのさ。魔法の効きも悪いみたいだし』
『その居座るべき山を破壊すれば良い』
ベンダーツから不思議そうに問い掛けられたが、俺は淡々と答える。
と言うか、それ以外に妙案が浮かばなかった。
『ハハハ……、単純だねぇ。でもそういう考え方、俺は好きだけどさ』
『好き嫌いの問題ではなく、それ以外にないのだがな』
笑顔のベンダーツに、俺は大きく溜め息をついてみせる。
とにかく相手が強すぎるのだ。それならば、せめて相手の回復方法くらいは奪っておきたい。──とは言っても、山がなくなって状況が変わるかは不明だが。
『分かったよ。んじゃ、俺は何をすれば良い?ヴォルは魔力押しだろう?』
『あぁ。マークにはこれをやる』
俺は期待を込めて問い掛けてくるベンダーツに、白い宝石を渡した。
『何、これも魔法の効果があるのか?』
『そうだ。氷の魔力が込めてある。あの巨体に接近戦は不向きだからな』
俺はそう告げながらも、天の剣の剥き出しの刀身に別の水魔力を込めた青い宝石を取り付ける。
これらは回復の為の宝石とは別物。柄に押し付けると同時に溶け込むように密着し、刃が青く輝きを放ち始めた。
『また弓か?あれ、攻撃力があまりないように思うんだけどなぁ』
竜へ翳すようにして白い宝石を覗き混むベンダーツは、何処か不満そうである。
この状況でも楽しそうなベンダーツだ。
ある意味羨ましくも思えるが、俺自身はそこまで楽観的に物事を捉えられない。仮に人語を解するのであれば更に面倒事が増す気がするので、今は考えたくもなかった。
『会話している暇はないんだろ』
俺は溜め息をつきながら告げる。
既に魔力の残りも少ないのだ。続けて、魔力回復の為の宝石も後一つ──そして現在、目に見える敵の損傷率は皆無ときている。
この最悪とも言える状況下で、全てが今更だった。
『あれ?もしかして、回復出来てちゃったりしてる?アレだけヴォルの攻撃を受けといて、傷一つないなんておかしいもんねぇ』
漸く気付いたように、わざとらしく驚いて見せるベンダーツである。
──本当にいつも楽しそうだ。
『こっちはボロボロだがな』
『ハハハ……、確かに』
俺の呆れを含んだ言葉に、ベンダーツも苦笑を返してくる。
現時点で二人とも既に、面と向かって戦うだけの余力があるように見えなかった。
『風の弓も壊れちゃったし、どうするかねぇ』
『火山から引き摺り下ろすか、現状維持で力で押し潰すか』
顎に手を当てて考える素振りをするベンダーツに、俺は現時点で考えうる二つの方法を告げる。
そもそも、逃げるという選択肢が既に消されているのだ。あの魔物が飽きるまで付き合うか、どちらかが倒れるかしかない。
おそらく俺の魔力が尽きたら終わるだろう、とは続けられなかった。
『引き摺り下ろす……って、どうするのさ。魔法の効きも悪いみたいだし』
『その居座るべき山を破壊すれば良い』
ベンダーツから不思議そうに問い掛けられたが、俺は淡々と答える。
と言うか、それ以外に妙案が浮かばなかった。
『ハハハ……、単純だねぇ。でもそういう考え方、俺は好きだけどさ』
『好き嫌いの問題ではなく、それ以外にないのだがな』
笑顔のベンダーツに、俺は大きく溜め息をついてみせる。
とにかく相手が強すぎるのだ。それならば、せめて相手の回復方法くらいは奪っておきたい。──とは言っても、山がなくなって状況が変わるかは不明だが。
『分かったよ。んじゃ、俺は何をすれば良い?ヴォルは魔力押しだろう?』
『あぁ。マークにはこれをやる』
俺は期待を込めて問い掛けてくるベンダーツに、白い宝石を渡した。
『何、これも魔法の効果があるのか?』
『そうだ。氷の魔力が込めてある。あの巨体に接近戦は不向きだからな』
俺はそう告げながらも、天の剣の剥き出しの刀身に別の水魔力を込めた青い宝石を取り付ける。
これらは回復の為の宝石とは別物。柄に押し付けると同時に溶け込むように密着し、刃が青く輝きを放ち始めた。
『また弓か?あれ、攻撃力があまりないように思うんだけどなぁ』
竜へ翳すようにして白い宝石を覗き混むベンダーツは、何処か不満そうである。
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