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第十章
5.戦闘開始だ【5】
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幾度も同一箇所を攻撃し続けて鱗を剥がし、漸く竜の肉を傷付ける事が出来ると思ったのだが。
しかしながら、氷の魔法剣ではその先から傷一つ付けられなかった。刃が当たってもそれまでで、火花が出そうな程の硬質な弾かれ方をする。
──属性が変わった。
俺はそう判断すると竜から距離をとり、一度天の剣に乗せた氷の魔力を払う。
「Hi no maryoku wo turugi ni yadosu.」
そして次に火の魔力を剣にのせた。その直後、刃は灼熱の赤を纏う。
冷気を宿した氷の魔法剣と違い、視覚化した炎が刃を包み込んでいるのが確認出来た。天の剣の周囲に空気の揺らめきさえも見える。
水元素で効果がないならば、攻撃の質を変えるまでだ。俺は四元素の魔力を使える。得手不得手は多少あるが、精霊は契約を破棄してはこない。
ベンダーツから聞いた知識では、通常の魔力所持者は一元素の精霊としか契約出来ないようだ。俺の場合は周囲に漂う精霊の数が半端ない為、こちらの取捨択一など関係なく精霊契約がなされている。
再び俺は狙いすまし、竜の鱗が剥がれた箇所に斬りかかった。今度は刃が当たる度に黒煙が上がる。
純粋に肉の焼ける臭いがした。
鱗を剥がせた箇所は少ないが、確実に攻撃が通っている。だが攻撃する度に竜の動きが激しくなり、ついには翼や尾も使うようになってきた。
痛みを感じているのかは不明だが、抵抗してくるのだから不快には思っているのだろう。特に尾が危険である。
巨大な体躯の半分もある爬虫類のしなる尾は、鞭の如く俊敏な動きで俺を叩き落とそうとしてくる。
尚且長い首を巡らせてブレスを吐く為、こちらも徐々に防戦一方になってきた。
攻撃を繰り出せないまま時折当てられる攻撃に、俺の障壁は少しずつ削り取られていく。
このままでは消耗戦となり、埒が明かないと思えた。そして俺は接近戦から魔法戦に切り替える。
炎で効果があるなら、それを精巧に操作をする事で鱗の剥がれ落ちた箇所に当てるまでだ。
「Hi no tama.」
精神を集中する。精霊言語を意識しながら正確に発音し、更に魔力を増す事で遠隔操作を行った。
幾つもの火炎球を出し、竜の動きを読みつつ着実に当てていく。
鱗に当たっては寧ろ回復させてしまいかねない為、大きな魔法を放てないのが難点だ。それでも近接戦と比べれば危険度が違う。
気力と魔力の消耗が激しいが巨大な相手である分──更に今は耳が聞こえない事もあり、距離をとっての視界確保は必須だった。
やはり、鱗の剥がれ落ちた箇所には火の魔力が有効だ。希望的観測かもしれないが、魔法剣ではなくとも確実に体力を削り取っていっているように見える。
少なくとも、魔物の身体のあちらこちらに黒く焼け焦げた場所が目立つようになってきていた。
──しかし、何故あの竜は飛ばない?
その背に巨大な翼を持つのだ。まさか飾りという訳ではないだろ。あの僅かな破れが原因で飛べない筈はなかった。
いつまでも登頂部の半壊した火山に居座り続ける魔物と俺との戦いが続く。──どちらが先に音を上げるのか。
俺は魔物の動きを見ながら攻撃を繰り返しつつも、そんな思考が感情を揺らしていくのを感じていた。
しかしながら、氷の魔法剣ではその先から傷一つ付けられなかった。刃が当たってもそれまでで、火花が出そうな程の硬質な弾かれ方をする。
──属性が変わった。
俺はそう判断すると竜から距離をとり、一度天の剣に乗せた氷の魔力を払う。
「Hi no maryoku wo turugi ni yadosu.」
そして次に火の魔力を剣にのせた。その直後、刃は灼熱の赤を纏う。
冷気を宿した氷の魔法剣と違い、視覚化した炎が刃を包み込んでいるのが確認出来た。天の剣の周囲に空気の揺らめきさえも見える。
水元素で効果がないならば、攻撃の質を変えるまでだ。俺は四元素の魔力を使える。得手不得手は多少あるが、精霊は契約を破棄してはこない。
ベンダーツから聞いた知識では、通常の魔力所持者は一元素の精霊としか契約出来ないようだ。俺の場合は周囲に漂う精霊の数が半端ない為、こちらの取捨択一など関係なく精霊契約がなされている。
再び俺は狙いすまし、竜の鱗が剥がれた箇所に斬りかかった。今度は刃が当たる度に黒煙が上がる。
純粋に肉の焼ける臭いがした。
鱗を剥がせた箇所は少ないが、確実に攻撃が通っている。だが攻撃する度に竜の動きが激しくなり、ついには翼や尾も使うようになってきた。
痛みを感じているのかは不明だが、抵抗してくるのだから不快には思っているのだろう。特に尾が危険である。
巨大な体躯の半分もある爬虫類のしなる尾は、鞭の如く俊敏な動きで俺を叩き落とそうとしてくる。
尚且長い首を巡らせてブレスを吐く為、こちらも徐々に防戦一方になってきた。
攻撃を繰り出せないまま時折当てられる攻撃に、俺の障壁は少しずつ削り取られていく。
このままでは消耗戦となり、埒が明かないと思えた。そして俺は接近戦から魔法戦に切り替える。
炎で効果があるなら、それを精巧に操作をする事で鱗の剥がれ落ちた箇所に当てるまでだ。
「Hi no tama.」
精神を集中する。精霊言語を意識しながら正確に発音し、更に魔力を増す事で遠隔操作を行った。
幾つもの火炎球を出し、竜の動きを読みつつ着実に当てていく。
鱗に当たっては寧ろ回復させてしまいかねない為、大きな魔法を放てないのが難点だ。それでも近接戦と比べれば危険度が違う。
気力と魔力の消耗が激しいが巨大な相手である分──更に今は耳が聞こえない事もあり、距離をとっての視界確保は必須だった。
やはり、鱗の剥がれ落ちた箇所には火の魔力が有効だ。希望的観測かもしれないが、魔法剣ではなくとも確実に体力を削り取っていっているように見える。
少なくとも、魔物の身体のあちらこちらに黒く焼け焦げた場所が目立つようになってきていた。
──しかし、何故あの竜は飛ばない?
その背に巨大な翼を持つのだ。まさか飾りという訳ではないだろ。あの僅かな破れが原因で飛べない筈はなかった。
いつまでも登頂部の半壊した火山に居座り続ける魔物と俺との戦いが続く。──どちらが先に音を上げるのか。
俺は魔物の動きを見ながら攻撃を繰り返しつつも、そんな思考が感情を揺らしていくのを感じていた。
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