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第十章
5.戦闘開始だ【3】
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『了解~。ってか……あの綺麗な鱗を剥いだら、どんな色の肉なのかなぁ。知ってる?竜の肉って、不老不死の妙薬なんだってさ。調べてみたいなぁ』
弾むような声で話すベンダーツだ。
──また始まった、ベンダーツの研究癖。
コイツは薬や変わった反応を示す物質に、おかしな程興味を引かれるらしい。
先程からやけに楽しそうだと思っていたが、それが目当てのようだ。──変なものをメルに食べさせるのだけは阻止しなくてはならない。
しかしながら、魔物の肉に食材として利用出来るものがある事は知っていた。実際に旅の道中では使ってもいる。だが、さすがに竜の味は知らなかった。
「討ち取る事が出来たら、後で好きにするが良い。今はこちらに集中してくれ」
俺はベンダーツの全ての行動に口を出すつもりはない。それよりも逆にアイツの興味を引けたのは容認すべき事項だ。
経験上アレは、実益を伴う方が集中力が勝る。現金な性格だが、綺麗事を言っていても始まらないのも事実だ。
寧ろ、その方が信頼出来る。
『はいは~い』
軽いベンダーツの返答を聞きながら、俺は頭の中で竜の様々な行動を予測した。
生半可な攻撃ではあの固そうな鱗に傷一つつける事は出来ない。しかも、どの魔法も確実な効果がないように見えた。弱点がまだ見つけられないものの、悩んでいる時間はない。分かった事は、火の山にいるだけあって火の魔法元素は却下という一点だ。
──それも貴重な情報か。
俺は風魔法の浮遊で竜に近付いていく。大きさの比率では、竜の目玉すら俺よりも巨大だった。──だが、怯んでいても何も変わらない。
俺には『守る者達』がいるのだ。
メルに出会うまで俺の中の義務感的言葉だったこれは、今は実体を伴って存在している。ついでにベンダーツも──隅の方にだが──入れてやる心の余裕があるのだから、不思議なものではあるが決して不愉快ではなかった。
「Koori no chikara wo turugi ni yabosu.」
波立つ精神を抑え込み、手にした天の剣に氷の魔力をのせる。すると透明な剣が白く光を帯び、冷気を放つようになった。
俺は意識を切り替える為に一度固く瞳を閉じ、そして強く見開く。
竜は相変わらず俺を見ていた。
──いつまでそうしていられるか。
俺は風を纏い、速度上昇を追加する。
「行く」
そして飛び立った。竜を目掛けて飛び込み、その喉元を狙う。
だが、そこで漸くヤツが動いた。巨大な翼を広げたかと思うと、俺の魔法剣の狙う先を片側の翼で防御する。──固い。
ぶつかり合い、激しい音が上がった。軽く腕に痺れが走る程である。
その膜のような見た目と違い、全く俺の剣が通らないのには驚いた。同時に竜の高温の体表と俺の氷の魔法剣がぶつかる事で、ジュウジュウと熱を発しながら水蒸気が周囲に雲を作る。
俺は翼を突き破ろうと、風の魔力で再度勢いを増した。すると魔物はそれを見計らっていたかのように、もう片側の翼で俺を叩き落とすべく降り下ろしてくる。
「くっ!」
即座に魔力方向を変更出来なかった俺は、その攻撃を全て障壁で受け止めた。ガラスを割ったような甲高い音が連続で響く。
十枚からなる結界の半分が打ち砕かれる。だがこちらもそのまま吹き飛ばされてはやらない。
敵のその攻撃を利用し、俺は竜の翼を突き破る事に成功したのだ。
だが次の瞬間、竜の咆哮が俺の鼓膜を打ち破る。
「っ!!」
俺の耳に聞こえた音は、脳天を揺さぶる程の轟音が最後だった。
弾むような声で話すベンダーツだ。
──また始まった、ベンダーツの研究癖。
コイツは薬や変わった反応を示す物質に、おかしな程興味を引かれるらしい。
先程からやけに楽しそうだと思っていたが、それが目当てのようだ。──変なものをメルに食べさせるのだけは阻止しなくてはならない。
しかしながら、魔物の肉に食材として利用出来るものがある事は知っていた。実際に旅の道中では使ってもいる。だが、さすがに竜の味は知らなかった。
「討ち取る事が出来たら、後で好きにするが良い。今はこちらに集中してくれ」
俺はベンダーツの全ての行動に口を出すつもりはない。それよりも逆にアイツの興味を引けたのは容認すべき事項だ。
経験上アレは、実益を伴う方が集中力が勝る。現金な性格だが、綺麗事を言っていても始まらないのも事実だ。
寧ろ、その方が信頼出来る。
『はいは~い』
軽いベンダーツの返答を聞きながら、俺は頭の中で竜の様々な行動を予測した。
生半可な攻撃ではあの固そうな鱗に傷一つつける事は出来ない。しかも、どの魔法も確実な効果がないように見えた。弱点がまだ見つけられないものの、悩んでいる時間はない。分かった事は、火の山にいるだけあって火の魔法元素は却下という一点だ。
──それも貴重な情報か。
俺は風魔法の浮遊で竜に近付いていく。大きさの比率では、竜の目玉すら俺よりも巨大だった。──だが、怯んでいても何も変わらない。
俺には『守る者達』がいるのだ。
メルに出会うまで俺の中の義務感的言葉だったこれは、今は実体を伴って存在している。ついでにベンダーツも──隅の方にだが──入れてやる心の余裕があるのだから、不思議なものではあるが決して不愉快ではなかった。
「Koori no chikara wo turugi ni yabosu.」
波立つ精神を抑え込み、手にした天の剣に氷の魔力をのせる。すると透明な剣が白く光を帯び、冷気を放つようになった。
俺は意識を切り替える為に一度固く瞳を閉じ、そして強く見開く。
竜は相変わらず俺を見ていた。
──いつまでそうしていられるか。
俺は風を纏い、速度上昇を追加する。
「行く」
そして飛び立った。竜を目掛けて飛び込み、その喉元を狙う。
だが、そこで漸くヤツが動いた。巨大な翼を広げたかと思うと、俺の魔法剣の狙う先を片側の翼で防御する。──固い。
ぶつかり合い、激しい音が上がった。軽く腕に痺れが走る程である。
その膜のような見た目と違い、全く俺の剣が通らないのには驚いた。同時に竜の高温の体表と俺の氷の魔法剣がぶつかる事で、ジュウジュウと熱を発しながら水蒸気が周囲に雲を作る。
俺は翼を突き破ろうと、風の魔力で再度勢いを増した。すると魔物はそれを見計らっていたかのように、もう片側の翼で俺を叩き落とすべく降り下ろしてくる。
「くっ!」
即座に魔力方向を変更出来なかった俺は、その攻撃を全て障壁で受け止めた。ガラスを割ったような甲高い音が連続で響く。
十枚からなる結界の半分が打ち砕かれる。だがこちらもそのまま吹き飛ばされてはやらない。
敵のその攻撃を利用し、俺は竜の翼を突き破る事に成功したのだ。
だが次の瞬間、竜の咆哮が俺の鼓膜を打ち破る。
「っ!!」
俺の耳に聞こえた音は、脳天を揺さぶる程の轟音が最後だった。
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