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第十章
2.アイツが良いのか【5】
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「ヴォルがご飯を作ってくれないのですか?」
私は文句を続けるベンダーツさんをよそに、項垂れているヴォルに声を掛けます。
するとガバッと音がしそうな程の勢いで顔を上げたヴォルは、一瞬呆けた様な表情をしました。でもすぐにブンブンと首を縦に振ります。
──子犬みたいで可愛いですね。
そしてその勢いのまま立ち上がると、風の魔法などを使いながら調理に取り掛かりました。
「メルってば……」
呆れたようなベンダーツさんに笑顔を向け、私は再びヴォルへ視線を戻します。
その間にも用意していた鍋に魔法の水を入れて魔法の火に掛けていて、もう一方では風の魔法で材料を適度な大きさに細かくしていました。
全て魔法で行われる調理風景はヴォル独自のもので、他の魔力所持者には出来まないらしいです。 ベンダーツさんが言うには、普通は彼のように手足の如く魔法を使えないとの事でした。
そして勿論、彼の周囲は結界で覆われています。安全第一なのでした。
「ったく、調子が良いんだから。でもメル、ちゃんと怒るべきところは怒らないと。デカイ図体してヴォルの対人能力は子供並だから、しっかり言い含めておかないとメルが危ないよ?」
「ありがとうございます、マークさん。でも、彼のそういうところも好きですから」
何の抵抗もなく、本音が出ました。
しかしながら二度三度と同じ事は言えません。──恥ずかしすぎるので。
「あ~……そう。あ、出来たみたいだよ?」
何だか複雑な表情のベンダーツさんでしたが、向けた視線の先に鍋を持った──正確には風の魔法で浮かしている──ヴォルが立って待っていました。
「早いですね、もう出来たのですか?」
具が蕩ける程の煮込み料理なのに、この短時間で完成とか凄すぎます。
魔法が凄いのか、それがヴォルだからかは分かりませんでした。
「ありがとうございます、ヴォル。頂きましょう?」
スープの美味しい匂いがお腹の虫を起こします。
そうしてテーブルの上に買ってきたパンと共に並べ、三人で一緒の夕食となりました。──こうして皆で食べるのは大好きです。
私はまずはスープを一口、大きなスプーンで口に運びました。
うん──、やっぱり美味しいです。大きなお肉が口の中でとろ~ってなくなるのですが、叫びたくなるくらいとてもとても幸せでした。
「メルが幸せなのは良いけど、揃ってヴォルが溶けそうな表情をしているのが怖い」
そんなベンダーツさんの冷たい言葉も、今の幸せ絶頂な私の耳を素通りです。
私達はそのまま美味しい食事を続け、至福の時を過ごしたのでした。
──と言うか後で気付いたのですが、何故ヴォルは一言も話さなかったのでしょうか。いえいえ、普段からそれ程口が達者な方ではありませんが。
それにしても──普段は貴重なヴォルの笑顔をたくさん見れたので、それはそれで良いのでした。
私は文句を続けるベンダーツさんをよそに、項垂れているヴォルに声を掛けます。
するとガバッと音がしそうな程の勢いで顔を上げたヴォルは、一瞬呆けた様な表情をしました。でもすぐにブンブンと首を縦に振ります。
──子犬みたいで可愛いですね。
そしてその勢いのまま立ち上がると、風の魔法などを使いながら調理に取り掛かりました。
「メルってば……」
呆れたようなベンダーツさんに笑顔を向け、私は再びヴォルへ視線を戻します。
その間にも用意していた鍋に魔法の水を入れて魔法の火に掛けていて、もう一方では風の魔法で材料を適度な大きさに細かくしていました。
全て魔法で行われる調理風景はヴォル独自のもので、他の魔力所持者には出来まないらしいです。 ベンダーツさんが言うには、普通は彼のように手足の如く魔法を使えないとの事でした。
そして勿論、彼の周囲は結界で覆われています。安全第一なのでした。
「ったく、調子が良いんだから。でもメル、ちゃんと怒るべきところは怒らないと。デカイ図体してヴォルの対人能力は子供並だから、しっかり言い含めておかないとメルが危ないよ?」
「ありがとうございます、マークさん。でも、彼のそういうところも好きですから」
何の抵抗もなく、本音が出ました。
しかしながら二度三度と同じ事は言えません。──恥ずかしすぎるので。
「あ~……そう。あ、出来たみたいだよ?」
何だか複雑な表情のベンダーツさんでしたが、向けた視線の先に鍋を持った──正確には風の魔法で浮かしている──ヴォルが立って待っていました。
「早いですね、もう出来たのですか?」
具が蕩ける程の煮込み料理なのに、この短時間で完成とか凄すぎます。
魔法が凄いのか、それがヴォルだからかは分かりませんでした。
「ありがとうございます、ヴォル。頂きましょう?」
スープの美味しい匂いがお腹の虫を起こします。
そうしてテーブルの上に買ってきたパンと共に並べ、三人で一緒の夕食となりました。──こうして皆で食べるのは大好きです。
私はまずはスープを一口、大きなスプーンで口に運びました。
うん──、やっぱり美味しいです。大きなお肉が口の中でとろ~ってなくなるのですが、叫びたくなるくらいとてもとても幸せでした。
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私達はそのまま美味しい食事を続け、至福の時を過ごしたのでした。
──と言うか後で気付いたのですが、何故ヴォルは一言も話さなかったのでしょうか。いえいえ、普段からそれ程口が達者な方ではありませんが。
それにしても──普段は貴重なヴォルの笑顔をたくさん見れたので、それはそれで良いのでした。
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