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第十章
1.思うようにいかない【4】
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「何、どうしたの。メルってば、壊れちゃった?」
心配そうな声とは裏腹に、楽しそうな表情を浮かべながら私の顔を覗き込んでくるベンダーツさんです。
あの後──顔を真っ赤にして話さなくなった私を連れ、ヴォルが部屋まで戻って来たのでした。
正確には、まともにヴォルの目を見て話せなくなっただけで、言葉は返せはするのです。
「な、何でもないです」
俯いたままで、これだけしか言い返せない私でした。
何度か心配したヴォルからも同じような問い掛けをされたのですが、『ごめんなさい』と『何でもないです』を繰り返すだけだったのです。
「熱はないが、日差しに当てられたのかもしれない」
やたら心配そうなヴォルでした。
でも本当にごめんなさい。確かに甲板の上は日差しが強くはありましたが、原因はそれではないと自分で分かっていました。
「ふぅん?」
何かを含んだようなベンダーツさんでしたが、それ以上は何も言わないでくれるようです。
仮に何を言われてたとしても、残念ながら今の私には対抗する術がありませんでした。
「まぁ、ゆっくり休むと良いよ。マグドリア大陸に到着したら、嫌でもまたウマウマでの強行軍になるからね。あ、他の町や村がどうなってても良いって訳じゃないんだよ?」
「はい、分かっています。あまり時間が取れないのですよね」
慌てて言い直すベンダーツさんです。
でも私も分かっていました。
ヴォルの今回の旅の目的と、更には期限がある旅だという事。
それは正確にいつまでかは分かりませんが、ヴォルがセントラルに残してきた彼の左腕の魔力が尽きるまで──なのです。
「ゴメンね、メル。俺もメルの故郷は見てみたいけどさ……、でもさすがにあちこち見物は出来ないかな~って」
ワザと茶化してくれるベンダーツさんですが、その瞳に痛みが浮かぶのを見てしまいました。
彼なりに気遣ってくれているようです。
ケストニアやユースピアのように、人々が全員魔法石になっていたら──って、正直それは私も考えたら怖い事でした。
自分の知っている人達が、動かない石像と化していたら──私はこれまでと同じように、冷静に対処出来るでしょうか。
「ありがとうございます、ベンダーツさん。それでも私は、一度自分の目で見ておきたいのです」
私は真っ直ぐベンダーツさんへ視線を向けました。
多少の怯えを乗せてしまっているのはすみません。でも、これは私の本心でした。
「ん。メルがそう言うなら、俺は反対はしないよ。ただし、一つ約束して。……決して、我慢しない事」
「……はい」
指を一つ立てて、ゆっくりと告げるベンダーツさんです。
我慢しない事──ですか、それは結構難しい約束でした。でも、ヴォルとベンダーツさんが心配してくれているのは分かります。
ですからこれ以上、お二人に心労をかける訳にはいかない事は分かっていました。頑張って我慢しないようにします。
──おかしいですね。
でも自分でこのくらいは大丈夫って思っていても、実際の負荷がそれ以上な事は多々ありました。
これは自分では普通の判断の中なので、かなり気を付けないと難しかったりするようです。
心配そうな声とは裏腹に、楽しそうな表情を浮かべながら私の顔を覗き込んでくるベンダーツさんです。
あの後──顔を真っ赤にして話さなくなった私を連れ、ヴォルが部屋まで戻って来たのでした。
正確には、まともにヴォルの目を見て話せなくなっただけで、言葉は返せはするのです。
「な、何でもないです」
俯いたままで、これだけしか言い返せない私でした。
何度か心配したヴォルからも同じような問い掛けをされたのですが、『ごめんなさい』と『何でもないです』を繰り返すだけだったのです。
「熱はないが、日差しに当てられたのかもしれない」
やたら心配そうなヴォルでした。
でも本当にごめんなさい。確かに甲板の上は日差しが強くはありましたが、原因はそれではないと自分で分かっていました。
「ふぅん?」
何かを含んだようなベンダーツさんでしたが、それ以上は何も言わないでくれるようです。
仮に何を言われてたとしても、残念ながら今の私には対抗する術がありませんでした。
「まぁ、ゆっくり休むと良いよ。マグドリア大陸に到着したら、嫌でもまたウマウマでの強行軍になるからね。あ、他の町や村がどうなってても良いって訳じゃないんだよ?」
「はい、分かっています。あまり時間が取れないのですよね」
慌てて言い直すベンダーツさんです。
でも私も分かっていました。
ヴォルの今回の旅の目的と、更には期限がある旅だという事。
それは正確にいつまでかは分かりませんが、ヴォルがセントラルに残してきた彼の左腕の魔力が尽きるまで──なのです。
「ゴメンね、メル。俺もメルの故郷は見てみたいけどさ……、でもさすがにあちこち見物は出来ないかな~って」
ワザと茶化してくれるベンダーツさんですが、その瞳に痛みが浮かぶのを見てしまいました。
彼なりに気遣ってくれているようです。
ケストニアやユースピアのように、人々が全員魔法石になっていたら──って、正直それは私も考えたら怖い事でした。
自分の知っている人達が、動かない石像と化していたら──私はこれまでと同じように、冷静に対処出来るでしょうか。
「ありがとうございます、ベンダーツさん。それでも私は、一度自分の目で見ておきたいのです」
私は真っ直ぐベンダーツさんへ視線を向けました。
多少の怯えを乗せてしまっているのはすみません。でも、これは私の本心でした。
「ん。メルがそう言うなら、俺は反対はしないよ。ただし、一つ約束して。……決して、我慢しない事」
「……はい」
指を一つ立てて、ゆっくりと告げるベンダーツさんです。
我慢しない事──ですか、それは結構難しい約束でした。でも、ヴォルとベンダーツさんが心配してくれているのは分かります。
ですからこれ以上、お二人に心労をかける訳にはいかない事は分かっていました。頑張って我慢しないようにします。
──おかしいですね。
でも自分でこのくらいは大丈夫って思っていても、実際の負荷がそれ以上な事は多々ありました。
これは自分では普通の判断の中なので、かなり気を付けないと難しかったりするようです。
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