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第九章
10.目障りだ【5】
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「で、昨夜の事はどれくらい覚えてるかな。メルはどうして倒れたのか、分かってる?」
朝食後、唐突なベンダーツさんの問い掛けでした。
笑顔なのですが、威圧感が半端ないです。しかしながら昨日の断片的な記憶からして、ヴォルとベンダーツさんの会話で私に非があるのは分かっていました。
でも何故なのかまでは理解が出来ていない為、怒られるかもしれないと思いつつも私はゆっくりと横に首を振ります。
勿論、自分が意識を失った事は覚えていました。起きたらベッドにいましたので、またヴォルに心配掛けてしまったのだと分かっています。
「そっかぁ。じゃあメルの腕輪に、ヴォルの守護魔法が掛けられているのは分かっているよね。勿論、俺もそれに掛かった事があるからさ」
「はい」
次のベンダーツさんの問いに、それは分かりますと頷きました。
私に危険が迫ると、自動的に風の魔法が発動するのです。
「それを昨夜、無理矢理抑え込んだ事を覚えてるかな」
「あ……、はい。船の中で、あの魔法は危ないと思いまして……」
ベンダーツさんの会話の誘導から、私は昨日の事を思い返しました。
忘れていた訳ではありませんが、何が関係しているのか分かっていないから故です。
「あれ、あまりやらないでね」
にっこりと告げたベンダーツさんの言葉に、私は驚きました。
勿論あの時は意識的に行った訳ですが、その後にどうなるか知っていての行動ではありません。
「結構危険だから」
そしてベンダーツさんから続けられた事柄は、私を絶句させる効果がありました。
結構ってどのくらいですか──待ってください言わなくて良いです、聞くのが怖いです。
勝手に想像して青ざめました。
「少しは分かってくれたかな?魔力を持たないメルが、魔法上級者であるヴォルの力を打ち消そうとしたんだ。結果的に精神へ大きな負担が掛かって、メルは気絶しちゃったって訳。……あの後大変だったんだよ、ヴォルが」
「……煩い」
途中から茶化すように話すベンダーツさんです。
対してヴォルは、不機嫌を思い切り顔に出していました。でも主な原因は私の筈です。
「はいはい、煩くて結構。でも、メルには知っていてもらわなきゃね。魔法を打ち消す事が、どれだけ危険な事なのかを。はい、ヴォルから説明してね」
真面目な表情のベンダーツさんからは、全くからかいや誇張は感じられませんでした。
魔法を打ち消す事の危険性──そしてそれを裏付けるかのように、振り返って見たヴォルの表情が固かったのです。
「……魔法は魔力の塊でもある。それがいくら守護魔法であってもだ。それを打ち消す事は同等の、もしくはそれ以上の魔力が必要となる」
静かに身体を起こしたヴォルが告げた内容からするに、私はかなり無謀な事をしたようでした。──話の流れからそんな気はしていたのですが。
そもそも私は魔力を持っていません。打ち消す事に上回る魔力が必要なのは分かりましたが、今回の場合の対価が気になりました。
「あの……、魔力がなかったらどうなるのですか?」
「精神力で抗う事になる」
「負ければ最悪、精神の崩壊ね」
ヴォルの言葉に続けて、サラリと言ってくれましたベンダーツさんです。
崩壊──それは壊れるという意味以外に思い当たりませんでした。しかも対象が『精神』です。
「だから……」
ヴォルの言葉が途中で消えました。
私はこんな顔をさせているのです。──とても痛そうな、苦しそうな顔でした。普段あまり働かない彼の表情筋ですが、真っ直ぐ私へ向けられるその瞳からも感情が痛い程伝わってきます。
見ている私が泣きたくなる程の、ヴォルの表情でした。
朝食後、唐突なベンダーツさんの問い掛けでした。
笑顔なのですが、威圧感が半端ないです。しかしながら昨日の断片的な記憶からして、ヴォルとベンダーツさんの会話で私に非があるのは分かっていました。
でも何故なのかまでは理解が出来ていない為、怒られるかもしれないと思いつつも私はゆっくりと横に首を振ります。
勿論、自分が意識を失った事は覚えていました。起きたらベッドにいましたので、またヴォルに心配掛けてしまったのだと分かっています。
「そっかぁ。じゃあメルの腕輪に、ヴォルの守護魔法が掛けられているのは分かっているよね。勿論、俺もそれに掛かった事があるからさ」
「はい」
次のベンダーツさんの問いに、それは分かりますと頷きました。
私に危険が迫ると、自動的に風の魔法が発動するのです。
「それを昨夜、無理矢理抑え込んだ事を覚えてるかな」
「あ……、はい。船の中で、あの魔法は危ないと思いまして……」
ベンダーツさんの会話の誘導から、私は昨日の事を思い返しました。
忘れていた訳ではありませんが、何が関係しているのか分かっていないから故です。
「あれ、あまりやらないでね」
にっこりと告げたベンダーツさんの言葉に、私は驚きました。
勿論あの時は意識的に行った訳ですが、その後にどうなるか知っていての行動ではありません。
「結構危険だから」
そしてベンダーツさんから続けられた事柄は、私を絶句させる効果がありました。
結構ってどのくらいですか──待ってください言わなくて良いです、聞くのが怖いです。
勝手に想像して青ざめました。
「少しは分かってくれたかな?魔力を持たないメルが、魔法上級者であるヴォルの力を打ち消そうとしたんだ。結果的に精神へ大きな負担が掛かって、メルは気絶しちゃったって訳。……あの後大変だったんだよ、ヴォルが」
「……煩い」
途中から茶化すように話すベンダーツさんです。
対してヴォルは、不機嫌を思い切り顔に出していました。でも主な原因は私の筈です。
「はいはい、煩くて結構。でも、メルには知っていてもらわなきゃね。魔法を打ち消す事が、どれだけ危険な事なのかを。はい、ヴォルから説明してね」
真面目な表情のベンダーツさんからは、全くからかいや誇張は感じられませんでした。
魔法を打ち消す事の危険性──そしてそれを裏付けるかのように、振り返って見たヴォルの表情が固かったのです。
「……魔法は魔力の塊でもある。それがいくら守護魔法であってもだ。それを打ち消す事は同等の、もしくはそれ以上の魔力が必要となる」
静かに身体を起こしたヴォルが告げた内容からするに、私はかなり無謀な事をしたようでした。──話の流れからそんな気はしていたのですが。
そもそも私は魔力を持っていません。打ち消す事に上回る魔力が必要なのは分かりましたが、今回の場合の対価が気になりました。
「あの……、魔力がなかったらどうなるのですか?」
「精神力で抗う事になる」
「負ければ最悪、精神の崩壊ね」
ヴォルの言葉に続けて、サラリと言ってくれましたベンダーツさんです。
崩壊──それは壊れるという意味以外に思い当たりませんでした。しかも対象が『精神』です。
「だから……」
ヴォルの言葉が途中で消えました。
私はこんな顔をさせているのです。──とても痛そうな、苦しそうな顔でした。普段あまり働かない彼の表情筋ですが、真っ直ぐ私へ向けられるその瞳からも感情が痛い程伝わってきます。
見ている私が泣きたくなる程の、ヴォルの表情でした。
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