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第九章
10.目障りだ【4】
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「目障りだ」
突然の突き放すような言葉に、私は驚いて目が覚めました。
何が起こったのか分からず、現状を把握しようと寝起きの頭がフル稼働です。
とりあえず自分は横になっているようで、現在地は布団の中でした。聞こえる声と背中が温かいのでヴォルの抱き枕になっているようです。
「ほら……急に大きな声を出すから、メルが起きちゃったじゃん」
呆れたような声の主に視線を向け、それがベンダーツさんであると認識しました。それはもういつものように、ピシッとした格好で扉の前に立っています。
対して、ヴォルと私はベッドの上で横になっていました。
「お前が睡眠の邪魔をしたのだろ」
「何だ、自分の事は棚上げか?俺はいつものように、きちんと仕事をしているだけなんだがなぁ」
大きい動作で腕を組んで見せたベンダーツさんです。そしてその後ろには、丁寧に整えられたテーブルの上に並ぶ朝食がありました。
──あ、これって。
多分この言い合いが始まったのは私のせいです。
昨日夜中に起きたので、今朝の目覚めがいつもより随分遅くなったのだと思われます。
そしてヴォルは、私を起こさないように気を使ってくれたようなので、ごめんなさい全面的に私が悪いのでした。
「すみませんでした。寝過ぎましたっ」
慌てて飛び起きて二人に謝罪します。
ベンダーツさんは悪くないですし、勿論ヴォルも悪くないのでした。
「良いんだけどね。別に俺は怒ってなんかいないし、それにメルが良く寝て元気なのも嬉しい事だからね。ただし必要以上に甘やかしているだけでなく、無意味に過保護な扱いをするそこの君の旦那が喧嘩吹っ掛けて来るだけで」
笑顔で返してくれるベンダーツさんですが、言葉にトゲがあります。
朝からまた凄い毒を吐いているようですが、ベンダーツさんにとっての主なのですから言葉使いが少し心配になりました。
「俺がメルに甘いからどうした。問題ないだろ」
ベンダーツさんの辛辣な言葉も全く効果がないようで、ヴォルは平然と私を抱き締めたままベッドに横たわっています。
勿論、ベッドに横座りのままの私は動けませんでした。先程起き上がった勢いで二人へ頭を下げた筈ですが、その体勢で拘束されている私です。つまりはお腹辺りに腕を回されているので、微妙に余分なお肉を感じてしまわないか心配でした。
「ほら、メル。今朝の朝食は特製薬草粥だよ?」
ニッコリとベンダーツさんがテーブルに用意された朝食を指し示します。
ベンダーツさんの薬草粥は美味しくヘルシーで、それでいて栄養価が高いのが特徴でした。勿論ダイエットには最適で、一度食したらもう他の薬草粥は食べられません。
「特製ですか?」
「そ。特製なんだ。これは特に精神力の回復に効果があって……勿論魔力を持つ持たない関係なく、癒し効果抜群なんだよね」
片目を軽く閉じて、良い笑顔を見せるベンダーツさんでした。
精神力の回復──って、ヴォルにとても必要なものです。確か、魔力は精神の力だった筈ですから。
「食べたいですっ。ね、ヴォル。一緒に食べましょう?」
私は勢い良く後ろを振り向き、ヴォルに微笑みかけました。
何故か一瞬、彼の身体が強張ったような気がしましたが──気のせいでしょうか。
「……分かった」
渋々といった感じでしたが、ヴォルは私を解放してくれます。
少し表情が硬いヴォルとにこやかなベンダーツさんでしたが、私は自身の空腹にも気付いてしまったのでそれ以上気にかける事はなくなっていました。
そもそもご飯を前に余所事を考えるのはナンセンスです。
突然の突き放すような言葉に、私は驚いて目が覚めました。
何が起こったのか分からず、現状を把握しようと寝起きの頭がフル稼働です。
とりあえず自分は横になっているようで、現在地は布団の中でした。聞こえる声と背中が温かいのでヴォルの抱き枕になっているようです。
「ほら……急に大きな声を出すから、メルが起きちゃったじゃん」
呆れたような声の主に視線を向け、それがベンダーツさんであると認識しました。それはもういつものように、ピシッとした格好で扉の前に立っています。
対して、ヴォルと私はベッドの上で横になっていました。
「お前が睡眠の邪魔をしたのだろ」
「何だ、自分の事は棚上げか?俺はいつものように、きちんと仕事をしているだけなんだがなぁ」
大きい動作で腕を組んで見せたベンダーツさんです。そしてその後ろには、丁寧に整えられたテーブルの上に並ぶ朝食がありました。
──あ、これって。
多分この言い合いが始まったのは私のせいです。
昨日夜中に起きたので、今朝の目覚めがいつもより随分遅くなったのだと思われます。
そしてヴォルは、私を起こさないように気を使ってくれたようなので、ごめんなさい全面的に私が悪いのでした。
「すみませんでした。寝過ぎましたっ」
慌てて飛び起きて二人に謝罪します。
ベンダーツさんは悪くないですし、勿論ヴォルも悪くないのでした。
「良いんだけどね。別に俺は怒ってなんかいないし、それにメルが良く寝て元気なのも嬉しい事だからね。ただし必要以上に甘やかしているだけでなく、無意味に過保護な扱いをするそこの君の旦那が喧嘩吹っ掛けて来るだけで」
笑顔で返してくれるベンダーツさんですが、言葉にトゲがあります。
朝からまた凄い毒を吐いているようですが、ベンダーツさんにとっての主なのですから言葉使いが少し心配になりました。
「俺がメルに甘いからどうした。問題ないだろ」
ベンダーツさんの辛辣な言葉も全く効果がないようで、ヴォルは平然と私を抱き締めたままベッドに横たわっています。
勿論、ベッドに横座りのままの私は動けませんでした。先程起き上がった勢いで二人へ頭を下げた筈ですが、その体勢で拘束されている私です。つまりはお腹辺りに腕を回されているので、微妙に余分なお肉を感じてしまわないか心配でした。
「ほら、メル。今朝の朝食は特製薬草粥だよ?」
ニッコリとベンダーツさんがテーブルに用意された朝食を指し示します。
ベンダーツさんの薬草粥は美味しくヘルシーで、それでいて栄養価が高いのが特徴でした。勿論ダイエットには最適で、一度食したらもう他の薬草粥は食べられません。
「特製ですか?」
「そ。特製なんだ。これは特に精神力の回復に効果があって……勿論魔力を持つ持たない関係なく、癒し効果抜群なんだよね」
片目を軽く閉じて、良い笑顔を見せるベンダーツさんでした。
精神力の回復──って、ヴォルにとても必要なものです。確か、魔力は精神の力だった筈ですから。
「食べたいですっ。ね、ヴォル。一緒に食べましょう?」
私は勢い良く後ろを振り向き、ヴォルに微笑みかけました。
何故か一瞬、彼の身体が強張ったような気がしましたが──気のせいでしょうか。
「……分かった」
渋々といった感じでしたが、ヴォルは私を解放してくれます。
少し表情が硬いヴォルとにこやかなベンダーツさんでしたが、私は自身の空腹にも気付いてしまったのでそれ以上気にかける事はなくなっていました。
そもそもご飯を前に余所事を考えるのはナンセンスです。
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