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第九章
6.魔法とは想像【2】
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宿に戻って昼食を済ませた頃、騎士団の使いを名乗る方が、ヨルグト騎士団長からのお礼状を持ってきました。
あの賊の人達──結構前からユースピアの裕福な人や旅の行商人などを襲っていたようで、騎士団にも再三捕縛命令が出ていたようなのです。
それでもかなり手慣れた一味で、なかなか尻尾を掴めなかったとか言われました。
「餌になったつもりは全くありませんでしたが、あれだけ騎士団が我々を護衛していれば嫌でも目につくでしょう。表向きは皇太子護衛として、実は賊討伐を狙っていたのかも知れません。何故だか腹立たしいですね」
ベンダーツさんは腑に落ちないようです。
でも町を訪れる他の人達が困っていたのならば、結果的にこれで良かったのだと私は思いました。新しく町を再生させようとしているのですから、障害はなるべく少ない方が良いです。
「理由はどうであれ、この町が機能していないと国が疲弊するのだろ。町を盗賊の懐にする理由はない。……それはそうと、随分率直な物言いをするようになったな。もう仕事口調はやめたのか」
「あ、これですか。聞き慣れませんか?今までが今までだったのですから、多少の事は我慢して下さい。場所柄こうしてとりあえずのところ敬語で話していますが、実は私的にこれでも気を使っているのです」
部屋に戻った私達は寛ぎモードでした。私がベッドに座り、ヴォルが椅子に腰掛けています。ベンダーツさんは扉近くに立っていましたが、そんな中でヴォルが私も気になっていた事を問いました。
すると何と、ベンダーツさんの本音と思える返答が返ってきます。──正直、驚きました。
ベンダーツさんにとって、ヴォルは間違いなく主なのです。
「やはりマークとしての口調が素か。随分と『檻』の中では気を張っていたんだな」
「当たり前ですよ。と言うか、檻と表現するのは対外的にいかがなものかと。我々は罪人ではないのですから、聞く者によって誤解を与える言動は避けて下さいね」
「似たようなものだ。それと、気を使われるのもそれはそれで癪に障る」
「仕方がないです、我が儘ですね。分かっていらっしゃると思いますが、ここでは皇太子という立場を隠す事は出来ません。故に私が不敬罪で処罰されます」
ヴォルとの言葉の応酬でした。最終的に、表情を変えず言い切るベンダーツさんです。
そういう事を真顔で話さないでください。ただでさえベンダーツさんの言葉は、冗談か本気か区別がつかないのですから。
「どの話し方でもお前はお前だ」
「……ヴォルティ様?それ、メルシャ様に言われた言葉ですよね?」
「そうだ。俺は俺であり、お前はお前だ。『誰か』が『それ』を知っているだけで、俺は俺自身でいられる。皇太子でも、帝位継承者でもない」
ヴォルは真面目な顔で告げました。
誰かがそれを知っているだけで──私がヴォルの妻である事を、彼は勿論、ベンダーツさんも知っています。
今更でした。私は他の人の目を気にしてしまいますが、ヴォルとベンダーツさんが存在を──ここにいて良いと認めてくれているのです。
私はもう、それだけで大丈夫な気がしました。
あの賊の人達──結構前からユースピアの裕福な人や旅の行商人などを襲っていたようで、騎士団にも再三捕縛命令が出ていたようなのです。
それでもかなり手慣れた一味で、なかなか尻尾を掴めなかったとか言われました。
「餌になったつもりは全くありませんでしたが、あれだけ騎士団が我々を護衛していれば嫌でも目につくでしょう。表向きは皇太子護衛として、実は賊討伐を狙っていたのかも知れません。何故だか腹立たしいですね」
ベンダーツさんは腑に落ちないようです。
でも町を訪れる他の人達が困っていたのならば、結果的にこれで良かったのだと私は思いました。新しく町を再生させようとしているのですから、障害はなるべく少ない方が良いです。
「理由はどうであれ、この町が機能していないと国が疲弊するのだろ。町を盗賊の懐にする理由はない。……それはそうと、随分率直な物言いをするようになったな。もう仕事口調はやめたのか」
「あ、これですか。聞き慣れませんか?今までが今までだったのですから、多少の事は我慢して下さい。場所柄こうしてとりあえずのところ敬語で話していますが、実は私的にこれでも気を使っているのです」
部屋に戻った私達は寛ぎモードでした。私がベッドに座り、ヴォルが椅子に腰掛けています。ベンダーツさんは扉近くに立っていましたが、そんな中でヴォルが私も気になっていた事を問いました。
すると何と、ベンダーツさんの本音と思える返答が返ってきます。──正直、驚きました。
ベンダーツさんにとって、ヴォルは間違いなく主なのです。
「やはりマークとしての口調が素か。随分と『檻』の中では気を張っていたんだな」
「当たり前ですよ。と言うか、檻と表現するのは対外的にいかがなものかと。我々は罪人ではないのですから、聞く者によって誤解を与える言動は避けて下さいね」
「似たようなものだ。それと、気を使われるのもそれはそれで癪に障る」
「仕方がないです、我が儘ですね。分かっていらっしゃると思いますが、ここでは皇太子という立場を隠す事は出来ません。故に私が不敬罪で処罰されます」
ヴォルとの言葉の応酬でした。最終的に、表情を変えず言い切るベンダーツさんです。
そういう事を真顔で話さないでください。ただでさえベンダーツさんの言葉は、冗談か本気か区別がつかないのですから。
「どの話し方でもお前はお前だ」
「……ヴォルティ様?それ、メルシャ様に言われた言葉ですよね?」
「そうだ。俺は俺であり、お前はお前だ。『誰か』が『それ』を知っているだけで、俺は俺自身でいられる。皇太子でも、帝位継承者でもない」
ヴォルは真面目な顔で告げました。
誰かがそれを知っているだけで──私がヴォルの妻である事を、彼は勿論、ベンダーツさんも知っています。
今更でした。私は他の人の目を気にしてしまいますが、ヴォルとベンダーツさんが存在を──ここにいて良いと認めてくれているのです。
私はもう、それだけで大丈夫な気がしました。
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