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第九章
4.魔力とは【3】
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「どの貴族も、まさか皇帝様のお血筋に魔力所持者が現れると誰も予想すらしていなかったのでしょう。だからこそ、魔法省が動くまではそのままでいられたのです」
「……それも今更だがな」
ベンダーツさんの言葉に、ヴォルが呆れたように告げます。
ヴォルが魔力を持っていなかったら──なんて、本当に今更でした。実際にお城に捕らわれてしまったのですし、御子息として縛られてしまっています。更には魔力所持者としての枷もあり、逃げる事を考える意思すら罪なのだと認識しているようでした。
でもそうでなければ、ヴォルと私が出会う事もなかったのです。
「魔力所持者の出生理由も分からないのだ。血縁も土地柄も関係なく、何割かの確率で魔力を持って生まれてくる。これも大地の魔法石化現象と何等かの関わりがあるのかもな」
「そうですね……。精霊に好かれる程の魔力所持者が現れなくなったのは、もしや魔法石化現象と関係があるのかもですね。ですがそうなると、思っていた以上に魔力は大地と深い関わりがある事になります」
ヴォルとベンダーツさんがお互いに意見を交わしていました。
でも凡人の私には、大地と関係があるとすれば更に頭が痛くなってきます。いったい、どうしたらヴォルが希望する『魔力を断つ事』が出来るのか分かりませんでした。
勿論、そもそもが可能なのかどうかという問題に行き着いてしまいます。
ヴォルいわく、魔力は魔物の原点でもあるのでした。実際に魔力から魔物が発生するところをケストニアの町で確認されているようですから、魔物は世界に受け入れられている存在なのでしょう。そしてそれをなくしてしまうような事が可能かどうか──でした。
世界から否定される言葉しか思い付きません。
「でも、ヴォル。魔力と大地が関係あるとするなら、魔力をなくす事は難しいのではないでしょうか」
「魔力と大地の関係性を詳しく調べる必要がある。だがその前に、魔力の坩堝が突然現れる大地の放出現象なら、それを防ぐ為に何か出来ないものか」
私の否定的な言葉にも、ヴォルは折れませんでした。
そしてそれどころか新しい目的をたてます。
「防ぐと言われましても……。まさかとは思いますが、ヴォルティ様はそれを溜まって溢れる前に消費させるなどとおっしゃられないですよね?」
「分かっているな」
ベンダーツさんの問いに、ヴォルが淡々と答えました。
何だか凄い発想です。確かに机上論でいうならば、貯蔵出来なくなって溢れてしまう前に、溜まりきらなければ問題はありませんでした。
「なるほど……。でしたらもう少し調べてみないとなりませんね。一度宿に戻りましょう。あちらも我々の尾行に人員を割くのも勿体ないでしょうからね」
「そうだな」
二人して薄い笑みを交わします。
また何だか、二人して分かっていたような会話でした。ちなみに私には全く分かりません。
「メルシャ様、どうかなさいましたか?」
「あ、いえ……その……」
不思議そうに問い掛けるベンダーツさんに、私は返す答えを持っていませんでした。
何が起こっているのかも分からないので、答えようもないのです。会話の内容もそうでしたけど、言葉通りであれば尾行とはあの尾行なのでした。勿論言われるまで──、言われても私にはその人達が何処にいるのか分かりません。
「メルは俺が守る」
「メルシャ様もそれは分かっていらっしゃいますよ。ただ、今まで尾行されていた事に気が付かれていなかっただけでしょう。しかしながら基本、彼等はヴォルティ様の護衛のつもりなのでしょうけれどね」
ベンダーツさんに見抜かれ、にっこりと笑顔を返されました。
けれども、ヴォルの護衛のつもりであるのならば納得です。
「不要だ。と言うより不愉快だ」
「えぇ、そうでしょう。ですが彼等には通用しません。あれでも騎士団に所属していますからね」
笑みを浮かべるベンダーツさんとは逆に、ヴォルは酷く嫌そうな顔をしていました。
でも本当に話の内容が理解出来ていないのは私だけです。だいたい、何処に護衛の方々がいるのかすら未だに分かっていませんでした。
「……それも今更だがな」
ベンダーツさんの言葉に、ヴォルが呆れたように告げます。
ヴォルが魔力を持っていなかったら──なんて、本当に今更でした。実際にお城に捕らわれてしまったのですし、御子息として縛られてしまっています。更には魔力所持者としての枷もあり、逃げる事を考える意思すら罪なのだと認識しているようでした。
でもそうでなければ、ヴォルと私が出会う事もなかったのです。
「魔力所持者の出生理由も分からないのだ。血縁も土地柄も関係なく、何割かの確率で魔力を持って生まれてくる。これも大地の魔法石化現象と何等かの関わりがあるのかもな」
「そうですね……。精霊に好かれる程の魔力所持者が現れなくなったのは、もしや魔法石化現象と関係があるのかもですね。ですがそうなると、思っていた以上に魔力は大地と深い関わりがある事になります」
ヴォルとベンダーツさんがお互いに意見を交わしていました。
でも凡人の私には、大地と関係があるとすれば更に頭が痛くなってきます。いったい、どうしたらヴォルが希望する『魔力を断つ事』が出来るのか分かりませんでした。
勿論、そもそもが可能なのかどうかという問題に行き着いてしまいます。
ヴォルいわく、魔力は魔物の原点でもあるのでした。実際に魔力から魔物が発生するところをケストニアの町で確認されているようですから、魔物は世界に受け入れられている存在なのでしょう。そしてそれをなくしてしまうような事が可能かどうか──でした。
世界から否定される言葉しか思い付きません。
「でも、ヴォル。魔力と大地が関係あるとするなら、魔力をなくす事は難しいのではないでしょうか」
「魔力と大地の関係性を詳しく調べる必要がある。だがその前に、魔力の坩堝が突然現れる大地の放出現象なら、それを防ぐ為に何か出来ないものか」
私の否定的な言葉にも、ヴォルは折れませんでした。
そしてそれどころか新しい目的をたてます。
「防ぐと言われましても……。まさかとは思いますが、ヴォルティ様はそれを溜まって溢れる前に消費させるなどとおっしゃられないですよね?」
「分かっているな」
ベンダーツさんの問いに、ヴォルが淡々と答えました。
何だか凄い発想です。確かに机上論でいうならば、貯蔵出来なくなって溢れてしまう前に、溜まりきらなければ問題はありませんでした。
「なるほど……。でしたらもう少し調べてみないとなりませんね。一度宿に戻りましょう。あちらも我々の尾行に人員を割くのも勿体ないでしょうからね」
「そうだな」
二人して薄い笑みを交わします。
また何だか、二人して分かっていたような会話でした。ちなみに私には全く分かりません。
「メルシャ様、どうかなさいましたか?」
「あ、いえ……その……」
不思議そうに問い掛けるベンダーツさんに、私は返す答えを持っていませんでした。
何が起こっているのかも分からないので、答えようもないのです。会話の内容もそうでしたけど、言葉通りであれば尾行とはあの尾行なのでした。勿論言われるまで──、言われても私にはその人達が何処にいるのか分かりません。
「メルは俺が守る」
「メルシャ様もそれは分かっていらっしゃいますよ。ただ、今まで尾行されていた事に気が付かれていなかっただけでしょう。しかしながら基本、彼等はヴォルティ様の護衛のつもりなのでしょうけれどね」
ベンダーツさんに見抜かれ、にっこりと笑顔を返されました。
けれども、ヴォルの護衛のつもりであるのならば納得です。
「不要だ。と言うより不愉快だ」
「えぇ、そうでしょう。ですが彼等には通用しません。あれでも騎士団に所属していますからね」
笑みを浮かべるベンダーツさんとは逆に、ヴォルは酷く嫌そうな顔をしていました。
でも本当に話の内容が理解出来ていないのは私だけです。だいたい、何処に護衛の方々がいるのかすら未だに分かっていませんでした。
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