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第八章
8.魔力協会の人間だ【3】
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「魔力の均衡を保つ為……ねぇ。俺としてはいっそのこと魔力がなくなってしまった方が、所持者と非所持者の壁が消えて逆に良いと思うんだけどなぁ」
静かに告げるベンダーツさんです。
その意見はこの差別ある世界の安寧を願うものであり、ヴォルを想う言葉のようでした。
「これだから非能力者は愚かだと言うのだ。我々魔力所持者がいかに犠牲を強いられようと、非能力者は虫けらを見るが如く冷たい対応をする。愚かな事に、知らぬのだ。この世界を統べる魔力がなくなれば、己の身に降り注ぐ槍を避ける術もなくなるというのに」
魔力協会の方が大袈裟に苦い表情を浮かべます。
これって、魔力協会の人々の苦しみの吐露なのでしょうか──いえ、もしかしたら魔力所持者の皆の声かも知れませんでした。
魔力協会員は魔力所持者である事は聞きましたし、魔法石予備軍だと私は知っています。
「だがそれでも我々は世界から魔力をなくしてはならない。その為に幾多の命を魔法石へ変えたとしてもっ。力ない人間には戦う牙が、鋭い爪が必要なのだ。我々は……」
「そもそもの魔力がなくなれば魔物がいなくなると思わないのか」
ヴォルの声が熱く語る魔力協会の人の言葉を遮ります。
「……何を?」
「現に今、世界中の魔物は魔力欲しさに互いを食い合っている。魔力流出が怖いのは、お前達の方ではないのか」
訝し気な魔力協会員に対し、ヴォルは現在起こっている現象を淡々と語りました。
人も魔物も、魔力を失っていく感覚は変わらないといえます。身体から何かが抜け出てしまう怖さは、自分の存在意義が流れ出てしまうようなものかと想像出来ました。
「そもそもお前はこの魔力流出の中で、何故それ程までに魔力を所持しているのだ」
「さぁな」
魔力協会の方の問い掛けにも、ヴォルはいつもの感情を見せない表情で答えていました。
「まさかお前、魔力の坩堝を持っているのではないのかっ」
突然魔力協会員が目を見開いて叫び出します。
──持っている?
彼いわく、魔力の坩堝とは所有出来るものかもでした。実際は私達が探している側なのですけど、今ここで口には出せません。
そして明らかに狼狽え始めた魔力協会の人々です。互いに視線を合わせ、何やらソワソワと小声で話していました。
「わぉ。まさか、ここでその言葉が聞けるとは思っていなかったよなぁ」
空気を読まない明るい声で、ベンダーツさんが大袈裟に手を振って見せます。
「お前達、何を知っている?」
「良い。ソレは真、セントラル皇太子よ」
ピリリとした空気に包まれた時、教会の奥から白い立派な髭を蓄えた年配の男性が現れました。
──触りたいです。あの髭、動物さんのようです。
「協会長……こ、このような場所にいらっしゃるなどっ」
「良い。……久しいな、ヴォルティ・ツヴァイス殿」
慌てたように先程の横に体格の良い人が腰を低くして出てきますが、お髭の男性はそれを片手で制してヴォルに声を掛けました。
この人が協会長ですか。──って言うか、ヴォルと顔見知りなのですか?
静かに告げるベンダーツさんです。
その意見はこの差別ある世界の安寧を願うものであり、ヴォルを想う言葉のようでした。
「これだから非能力者は愚かだと言うのだ。我々魔力所持者がいかに犠牲を強いられようと、非能力者は虫けらを見るが如く冷たい対応をする。愚かな事に、知らぬのだ。この世界を統べる魔力がなくなれば、己の身に降り注ぐ槍を避ける術もなくなるというのに」
魔力協会の方が大袈裟に苦い表情を浮かべます。
これって、魔力協会の人々の苦しみの吐露なのでしょうか──いえ、もしかしたら魔力所持者の皆の声かも知れませんでした。
魔力協会員は魔力所持者である事は聞きましたし、魔法石予備軍だと私は知っています。
「だがそれでも我々は世界から魔力をなくしてはならない。その為に幾多の命を魔法石へ変えたとしてもっ。力ない人間には戦う牙が、鋭い爪が必要なのだ。我々は……」
「そもそもの魔力がなくなれば魔物がいなくなると思わないのか」
ヴォルの声が熱く語る魔力協会の人の言葉を遮ります。
「……何を?」
「現に今、世界中の魔物は魔力欲しさに互いを食い合っている。魔力流出が怖いのは、お前達の方ではないのか」
訝し気な魔力協会員に対し、ヴォルは現在起こっている現象を淡々と語りました。
人も魔物も、魔力を失っていく感覚は変わらないといえます。身体から何かが抜け出てしまう怖さは、自分の存在意義が流れ出てしまうようなものかと想像出来ました。
「そもそもお前はこの魔力流出の中で、何故それ程までに魔力を所持しているのだ」
「さぁな」
魔力協会の方の問い掛けにも、ヴォルはいつもの感情を見せない表情で答えていました。
「まさかお前、魔力の坩堝を持っているのではないのかっ」
突然魔力協会員が目を見開いて叫び出します。
──持っている?
彼いわく、魔力の坩堝とは所有出来るものかもでした。実際は私達が探している側なのですけど、今ここで口には出せません。
そして明らかに狼狽え始めた魔力協会の人々です。互いに視線を合わせ、何やらソワソワと小声で話していました。
「わぉ。まさか、ここでその言葉が聞けるとは思っていなかったよなぁ」
空気を読まない明るい声で、ベンダーツさんが大袈裟に手を振って見せます。
「お前達、何を知っている?」
「良い。ソレは真、セントラル皇太子よ」
ピリリとした空気に包まれた時、教会の奥から白い立派な髭を蓄えた年配の男性が現れました。
──触りたいです。あの髭、動物さんのようです。
「協会長……こ、このような場所にいらっしゃるなどっ」
「良い。……久しいな、ヴォルティ・ツヴァイス殿」
慌てたように先程の横に体格の良い人が腰を低くして出てきますが、お髭の男性はそれを片手で制してヴォルに声を掛けました。
この人が協会長ですか。──って言うか、ヴォルと顔見知りなのですか?
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