「結婚しよう」

まひる

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第八章

8.魔力協会の人間だ【2】

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「……魔力所持者風情がここに何をしに来た」

 威圧的な態度で返されます。
 ズラリと並んだ青い長衣ながぎぬを着た魔力協会職員の中から、一際ひときわ身体付きの大きな──おもに横幅が他の人の二回ふたまわり大きい──男性が怒りのこもった声をあげたのでした。
 はなからまともな対応をする感じを受けませんでしたけど、ヴォルが結界を破壊してしまったのでやむをず皆さんで出てきたようです。

「この方はセントラル皇帝の第一皇太子であらせられる」

 そこへ鋭い声が聞こえてきました。
 突然の堅苦しい言葉に声のぬしを振り返ってみれば、案の定ベンダーツさんが厳しい顔をして立っています。
 これまでの雰囲気が違いすぎて、今まで一緒にいた筈の私でも混乱してしまいました。

「我々にとっては皇太子だろうが、何だろうが関係ない。魔力所持者か否かだけだ。大体皇太子などと、そんな言葉信じられるか」

「……あ~、そうかい。でもまぁ、魔力協会が聞いて呆れるよなぁ。ケストニアがこんな風になってるのに、自分達は結界の中で何してんの。そもそもコソコソ隠れて何の相談してるんだ?」

 権力が役に立たないと分かったからか、ベンダーツさんは普通の話し方に戻してしまいます。
 展開が早すぎて私は驚きの連続で、ベンダーツさんの対応はこれで良いのか判断がつきませんでした。

「お前達には答える必要のない事だ。それより魔力所持者のお前、魔力が余っているなら魔法石にしてやろう。今はより多くの魔法石を必要としているのでな」

「話してるの俺なんだけどことごとく無視なのね。でも諦めずに問い掛ける俺。ねぇねぇ、何で魔法石を集めてるのさ」

うるさい奴だ、非能力者のお前には関係がないだろう。世界の魔力量が減っているから、辺境の町や村を丸ごと魔法石にしているんだ。魔法石さえあれば我々の魔力供給に事欠かないからな」

 魔力協会のかたとベンダーツさんのやり取りが続きます。
 しかも話す必要がないとか言っていながら丁寧に答えてくれたりしてました。──と言うか、意外にもベンダーツさんが聞き出し上手のようです。
 そして言い分はおかしいですが、彼等の目的は魔力の供給源を作る事みたいでした。

「そうなんだぁ、しかもここ・・だけじゃなくてって事だねぇ……」

「な、何で魔力を持っていない人達も魔法石にしてしまうのですか?」

 ベンダーツさんが魔力協会員の言葉尻を取って追求します。そして思わず私も問い掛けてしまいました。
 人だけではないです。被害はこの町にいた動物達全てでした。

「本当にうるさい非能力者だな。何故詳しく教えてやらねばならない。本来あるべき魔力を失っていく能力者が増えているからに決まっているだろう。この魔力流出の原因は分からぬが、これ以上保有魔力量が減れば世界は破綻しかねないのだ。それを守るのが魔力協会の勤めなのだから仕方あるまい」

 怒ったように声を出してあらげる魔力協会職員さんです。
 しかしながらこの人、思ったより悪い人ではないのかもしれませんでした。怒っているからなのかもですが口が軽く、とにかく色々な情報を得る事が出来ます。
 そして魔力協会のやっている事とは、この世界の魔力そのものの存在を保持させる事のようでした。
 私が思うにこれって、ヴォルのしようとしている事と相反あいはんする事だったりする気がします。
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