「結婚しよう」

まひる

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第八章

7.仲間を救ってほしいと【6】

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「だからと言ってだなぁ」

「マークさん、良いですから。私が悪いのです……。ヴォルは悪くないですから」

「メル……。ったく、ヴォルは冷たいよな。真実だけが人の心に安らぎを与える訳じゃねぇっての」

 苛立ちをあらわにするベンダーツさんです。
 私をおもんぱかって下さってありがたいのですが、そんなにヴォルを責めないでほしいのでした。

「事実は変えられない」

「だからぁ……」

「マークさん、良いです。ありがとうございます」

 言葉の意味が伝わっていないヴォルは逆に不快感を表し、ベンダーツさんは伝わらないもどかしさに苛立ちを見せます。
 私は御礼と共にベンダーツさんに深く頭を下げました。
 誰も悪くありません。ベンダーツさんは私をかばおうとしてくれているだけですし、ヴォルは事実を口にしているだけなのですから。

「……まぁ、メルがそう言うならね」

 思ったよりあっさりと引いてくれたベンダーツさんでした。
 不満そうではありますが、ヴォルが偽りを告げない事も良く知っている筈なのです。
 ──ごめんなさい。本当にありがとうございました。
 私は再度頭を下げます。

「……で、どうするのさ。全部が魔法石になっているとして、ここにいた魔力協会の面々は何処に行ったのかなぁ?まさか、自分達も魔法石になっている訳じゃねぇだろう?」

 気分を入れ替えてから周囲を見渡したベンダーツさんは、不意にある一ヶ所で視線を止めました。
 そこは私でも見て分かるような教会です。屋根近くの壁に教会の紋章も描いてありました。
 この大陸で教会は大概の町にあり、そこでは葬儀も挙式もおこない、常に市民がつどう場所です。

「この町、魔力協会と教会が一緒になってる?何で?前は別だったじゃん」

 不思議そうなベンダーツさんでした。
 けれども私の生まれ育った村でもそれが当たり前でしたから、彼の感じる違和感は分かりません。
 そしてセントラルでは魔力協会と教会は別の建物であり、組織自体も異なっていたのを思い出しました。

「教会は避難場所としての結界が施されているからだ。魔力協会と言えども所詮は雇われの身。己の保身の為に他者を売ろうと、周囲から身を隠す場所は限られている」

「何、それ。って事は、この教会に魔力協会の関係者がいるって?確かにこの魔力協会の看板は、いかにも後付けって感じだけどさ」

 淡々と答えるヴォルに、ベンダーツさんは不快さを隠しもしません。

「詳細は不明だ。中に複数の結界が張ってある」

 ヴォルはチラッと見ただけでそう答えました。
 どうやら結界が張ってなければ、建物の中の様子まで分かるようです。もしかしなくても魔力を感知する魔法でも使って、生命の存在を調べたのかも知れませんでした。
 それでも複数の結界があっては見透せないようです。

「ヴォル……。それさぁ、前から?」

「何が言いたい」

「ん~……、建物の中まで見えるの?」

「見える訳ではない。感覚的に分かると言った方が良い」

 ベンダーツさんが不思議そうに問うのですが、ヴォルは全く普通の事の様に答えるのでした。
 何だか凄いです、超感覚と言うのでしょうか。

「精霊の事もそれで分かるのか?」

「それぞれに感覚が違う。ちなみにこの距離なら分かるが、ケストニアにもまだ生きた精霊がいる」

 驚きを含めたベンダーツさんに、ヴォルは前方の教会へ視線を向けました。
 生きた精霊さん──って事は、魔法石になっていないと言う事です。つまりはSOSの依頼をしてきた精霊さんのお知り合いかもしれませんでした。
 もしかすると精霊さんを助けられそうです。
 先程は距離がありすぎて分からなかったとか、理由が凄くて私では理解が追い付きませんでした。
 それでも石になってしまった町の人々は──いえ、助けられる方法を探さないとならないです。
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