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第八章
6.魔力以外を感じられない【2】
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「……そうか。だが、俺には他にどう言えば良いのか分からない」
ヴォルがベンダーツさんから視線を逸らします。
怒っている事は伝わっていても、彼の求める言葉が分からないのだと素直に答えていました。
私も人の事を言えた義理ではありませんが、本当にヴォルのこんなところが不器用な人だと思ってしまいます。
「ヴォル?そう言う時は『ありがとう』で良いのです。たくさんの言葉は必要ないですよ」
「ありがとう……?」
我慢出来なくなって、私から声を上げました。そして首を傾げながらも口にするヴォル。
何だか疑問符がついている気がしますけど、それでも言葉にしてもらうと嬉しいです。
「ったく、頼むからもう少し対人技能をあげてくれよぉ。……それで、魔物殲滅後の様子は?」
「問題ない……のだが、南部が静かすぎる」
ベンダーツさんからの指摘に、ヴォルが少し困ったように途中で言葉を加えました。
そんなヴォルを可愛いと思いつつも、私は『静か』で何がおかしいのかと首を傾げます。
だって周囲を魔物に取り囲まれたら、息を殺して身を隠すのではないかと思ったからでした。
「どう言う事だよ。隠れてるんじゃなくて?」
「違う……と思う。魔力以外を、感じられない」
眉根を寄せるベンダーツさんの問い掛けに、ヴォルもどう表現して良いのか分からないかのように視線を先程の討伐地点へ向けます。
だいぶ火が消えかけているそこへ同じく目を向け──ベンダーツさんと私は、そのヴォルの言葉の不明瞭さに一瞬止まりました。
それでもいち早く回復したベンダーツさんが苛立ちを見せます。
「はぁ?もっと分かりやすく言えっての。こっちは魔力を感知出来ないんだぞ?」
「……生命を、感じられない」
僅かに言い淀むヴォルでした。でもその瞳は真っ直ぐベンダーツさんへ向けられています。
嘘でも冗談でも誇張でもなく、その言葉が真実であると伝えていました。
「えっ、ちょっと待てって……。何か?ヴォルは魔力感知だけではなく、生命力も感じられるってのか?」
目を見開いたベンダーツさんは、慌てたようにヴォルに問います。
しかしながら驚くところはそこなのですかと、私は思わず心の中で突っ込みを入れてしまいました。
「魔力と生命力は大きく関係している」
「あ、あぁ……それは聞いたけど」
「故に生命力も認識出来る。魔力と違って反応は薄いが、生命力を感じると生きている存在だと分かる。生きていないものは魔物だ」
不思議そうなベンダーツさんに、ヴォルは説明を続けます。
つまりヴォルは魔力と生命力とを認識する事で、魔物かそれ以外の生物かの区別をしていると判断しました。これを使って行われたのが、この旅での魔物回避な訳です。
「……もう一つ聞くけど、南部って何処までだよ」
眉根を寄せて考え込んでいるようなベンダーツさんですが、追加でヴォルに質問を投げ掛けました。
確かにここは大陸の南端らしいのですが、私の視界には続く大地しか映りません。
そして更に言えば私達はヴォルの魔力関知の範囲を知っている訳ではないので、『それが何処まで南を指すか』は分からないのでした。
「海まで」
ベンダーツさんの問い掛けに対し、ヴォルの返答です。
そうですか、海ですか──海ですって?
勿論私はこの先の地形を知らないので詳しく把握出来ませんが、それっておかしくないのかと驚いてしまいました。
「お前……それで『はいそうですか』って、納得すると思ってるのか?!なめてんのかよっ」
突然大きな声を出したベンダーツさんに驚き、私は思い切りビクッと肩を跳ねさせてしまいます。
彼が怒鳴った理由は分かりませんが、大声は怖いと感じました。自分が怒られているのではなくても、本能的に身体が萎縮してしまうのです。
ヴォルがベンダーツさんから視線を逸らします。
怒っている事は伝わっていても、彼の求める言葉が分からないのだと素直に答えていました。
私も人の事を言えた義理ではありませんが、本当にヴォルのこんなところが不器用な人だと思ってしまいます。
「ヴォル?そう言う時は『ありがとう』で良いのです。たくさんの言葉は必要ないですよ」
「ありがとう……?」
我慢出来なくなって、私から声を上げました。そして首を傾げながらも口にするヴォル。
何だか疑問符がついている気がしますけど、それでも言葉にしてもらうと嬉しいです。
「ったく、頼むからもう少し対人技能をあげてくれよぉ。……それで、魔物殲滅後の様子は?」
「問題ない……のだが、南部が静かすぎる」
ベンダーツさんからの指摘に、ヴォルが少し困ったように途中で言葉を加えました。
そんなヴォルを可愛いと思いつつも、私は『静か』で何がおかしいのかと首を傾げます。
だって周囲を魔物に取り囲まれたら、息を殺して身を隠すのではないかと思ったからでした。
「どう言う事だよ。隠れてるんじゃなくて?」
「違う……と思う。魔力以外を、感じられない」
眉根を寄せるベンダーツさんの問い掛けに、ヴォルもどう表現して良いのか分からないかのように視線を先程の討伐地点へ向けます。
だいぶ火が消えかけているそこへ同じく目を向け──ベンダーツさんと私は、そのヴォルの言葉の不明瞭さに一瞬止まりました。
それでもいち早く回復したベンダーツさんが苛立ちを見せます。
「はぁ?もっと分かりやすく言えっての。こっちは魔力を感知出来ないんだぞ?」
「……生命を、感じられない」
僅かに言い淀むヴォルでした。でもその瞳は真っ直ぐベンダーツさんへ向けられています。
嘘でも冗談でも誇張でもなく、その言葉が真実であると伝えていました。
「えっ、ちょっと待てって……。何か?ヴォルは魔力感知だけではなく、生命力も感じられるってのか?」
目を見開いたベンダーツさんは、慌てたようにヴォルに問います。
しかしながら驚くところはそこなのですかと、私は思わず心の中で突っ込みを入れてしまいました。
「魔力と生命力は大きく関係している」
「あ、あぁ……それは聞いたけど」
「故に生命力も認識出来る。魔力と違って反応は薄いが、生命力を感じると生きている存在だと分かる。生きていないものは魔物だ」
不思議そうなベンダーツさんに、ヴォルは説明を続けます。
つまりヴォルは魔力と生命力とを認識する事で、魔物かそれ以外の生物かの区別をしていると判断しました。これを使って行われたのが、この旅での魔物回避な訳です。
「……もう一つ聞くけど、南部って何処までだよ」
眉根を寄せて考え込んでいるようなベンダーツさんですが、追加でヴォルに質問を投げ掛けました。
確かにここは大陸の南端らしいのですが、私の視界には続く大地しか映りません。
そして更に言えば私達はヴォルの魔力関知の範囲を知っている訳ではないので、『それが何処まで南を指すか』は分からないのでした。
「海まで」
ベンダーツさんの問い掛けに対し、ヴォルの返答です。
そうですか、海ですか──海ですって?
勿論私はこの先の地形を知らないので詳しく把握出来ませんが、それっておかしくないのかと驚いてしまいました。
「お前……それで『はいそうですか』って、納得すると思ってるのか?!なめてんのかよっ」
突然大きな声を出したベンダーツさんに驚き、私は思い切りビクッと肩を跳ねさせてしまいます。
彼が怒鳴った理由は分かりませんが、大声は怖いと感じました。自分が怒られているのではなくても、本能的に身体が萎縮してしまうのです。
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