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第八章
5.お前はついでだ【5】
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ドゴゴガガガガ──!
物凄い爆音が響き渡ります。音のした方を振り向くと、驚く事に大地が火の海になっていました。
凄すぎます、というか激しすぎます。
「一網打尽ってやつ?」
ニヤリと悪そうな笑みを浮かべるベンダーツさんでした。
これをしたのがヴォルだという事は分かるのですが、彼の普段からはあまり想像がつきません。どうやらこれまでの旅では使ってこなかったような大規模系魔法を連発しているようで、一気に黒々とした魔物の群れが煙と炎に呑まれました。
そして──さっきとは打って変わって静けさが訪れます。
「ヴォル……」
私の口から意図せず呟きが溢れます。知らず知らずのうちに胸の前で手を合わせていました。
大丈夫だと信じていても、実際にヴォルの顔を見ないと安心出来ません。
「んな不安そうな顔するなって。……ほら、帰ってきた」
ベンダーツさんが少し困ったように告げましたが、私の視線はまだ完全に消えない煙を追っていました。
宥めようとしてくれていたベンダーツさんは、不意に結界の端を見て呟きます。そして同じく私も自然とそちらへ視線が向きました。
目を向けた先──馬車を取り囲むようになっている結界の一部が、黒く丸く膨らんでいきます。頭で理解するよりも先に、心が『帰ってきた』と思いました。
そしてその円が人の大きさになった時、漸くヴォルが姿を表したのです。
「お、お帰り……なさいです」
「……あぁ。戻ったぞ、メル」
僅かに震える声で返す私に、ヴォルは驚いたように目を少しだけ見開きました。
そして自然と双方が歩み寄る形で、私はヴォルの胸に掻き抱かれます。
温かいです──当たり前ですが、ヴォルがちゃんと生きている証拠でした。
「お~い、飯は食わないのか?」
呆れた様なベンダーツさんの呼び掛けに、ヴォルがゆっくりと身体を起こします。
「食べる」
「ん、素直が一番だ。はい、召し上がれ」
簡潔な一言で返したヴォルに対し、ベンダーツさんも良い笑顔を浮かべていました。
やっぱりというか、当然のごとく心配していたようです。──と言うか、当たり前のようにテーブルと椅子が用意されていて驚きました。
これまでの旅ではウマウマさんに積める量の荷物しか携帯出来ません。それなので野宿は寝袋でしたし、食事の際は大地が食卓だったのです。
「何、メルは食べないの?」
「た、食べますけど……。このテーブルと椅子はどうされたのですか?」
「ん?馬車と一緒にもらってきた。これだけ大きな馬車なら入るし、やっぱり地面に腰掛けて食べるのも休まらないし?」
私の戸惑いつつの問い掛けにも、ベンダーツさんは事も無げに答えてくれました。
それであの荷物量でしたか。本当に抜け目がないと言うか──、先見の明がある人の考えはついていけません。
「そ、そうですね。ありがとうございます、マークさん」
とりあえず、素直にお礼を言っておく事にしました。
そして私はベンダーツさんの引いてくれた席に座ります。
「で、どうよ?」
「殲滅完了だ」
食べ終わった頃──端的なベンダーツさんの問い掛けに、ヴォルも当然のように一言で答えました。
食後のお茶を飲みながらのサッパリとした報告ですが、普通なら有り得ません。
あの数を──理解はしかねますが、実際に自分の目で見た事なので疑う余地もありませんでした。
私は改めて後ろを振り返りますがそこには黒い魔物の影はなく、ただ燃え続く炎があるだけです。
「レア?」
「ウエルダンだろ」
「さすがだね」
ヴォルとベンダーツさんの冗談半分な会話でした。
明らかにお肉の焼き加減──の話ではないです。
「で……話、聞いてたでしょ」
「あぁ」
そして二人の雰囲気が変わりました。
ヴォルとベンダーツさんの二人の会話が不明ですが、何やら妙に楽しそうにも見えます。──というよりも、いつ何処で聞いていたのか不思議でした。
「考えてもいなかったな」
「どうよ?」
「……悪くない」
「やっぱり?」
「あぁ」
何だか二人の中では会話が成立しているようです。
端的に交わされる言葉の真意は分かりませんが、とりあえず皆が無事なのは幸せでした。
あれだけの魔物討伐も、ヴォルの魔法であっという間とかさすがです。何かもう今更ですが、色々と超越しているようでした。
物凄い爆音が響き渡ります。音のした方を振り向くと、驚く事に大地が火の海になっていました。
凄すぎます、というか激しすぎます。
「一網打尽ってやつ?」
ニヤリと悪そうな笑みを浮かべるベンダーツさんでした。
これをしたのがヴォルだという事は分かるのですが、彼の普段からはあまり想像がつきません。どうやらこれまでの旅では使ってこなかったような大規模系魔法を連発しているようで、一気に黒々とした魔物の群れが煙と炎に呑まれました。
そして──さっきとは打って変わって静けさが訪れます。
「ヴォル……」
私の口から意図せず呟きが溢れます。知らず知らずのうちに胸の前で手を合わせていました。
大丈夫だと信じていても、実際にヴォルの顔を見ないと安心出来ません。
「んな不安そうな顔するなって。……ほら、帰ってきた」
ベンダーツさんが少し困ったように告げましたが、私の視線はまだ完全に消えない煙を追っていました。
宥めようとしてくれていたベンダーツさんは、不意に結界の端を見て呟きます。そして同じく私も自然とそちらへ視線が向きました。
目を向けた先──馬車を取り囲むようになっている結界の一部が、黒く丸く膨らんでいきます。頭で理解するよりも先に、心が『帰ってきた』と思いました。
そしてその円が人の大きさになった時、漸くヴォルが姿を表したのです。
「お、お帰り……なさいです」
「……あぁ。戻ったぞ、メル」
僅かに震える声で返す私に、ヴォルは驚いたように目を少しだけ見開きました。
そして自然と双方が歩み寄る形で、私はヴォルの胸に掻き抱かれます。
温かいです──当たり前ですが、ヴォルがちゃんと生きている証拠でした。
「お~い、飯は食わないのか?」
呆れた様なベンダーツさんの呼び掛けに、ヴォルがゆっくりと身体を起こします。
「食べる」
「ん、素直が一番だ。はい、召し上がれ」
簡潔な一言で返したヴォルに対し、ベンダーツさんも良い笑顔を浮かべていました。
やっぱりというか、当然のごとく心配していたようです。──と言うか、当たり前のようにテーブルと椅子が用意されていて驚きました。
これまでの旅ではウマウマさんに積める量の荷物しか携帯出来ません。それなので野宿は寝袋でしたし、食事の際は大地が食卓だったのです。
「何、メルは食べないの?」
「た、食べますけど……。このテーブルと椅子はどうされたのですか?」
「ん?馬車と一緒にもらってきた。これだけ大きな馬車なら入るし、やっぱり地面に腰掛けて食べるのも休まらないし?」
私の戸惑いつつの問い掛けにも、ベンダーツさんは事も無げに答えてくれました。
それであの荷物量でしたか。本当に抜け目がないと言うか──、先見の明がある人の考えはついていけません。
「そ、そうですね。ありがとうございます、マークさん」
とりあえず、素直にお礼を言っておく事にしました。
そして私はベンダーツさんの引いてくれた席に座ります。
「で、どうよ?」
「殲滅完了だ」
食べ終わった頃──端的なベンダーツさんの問い掛けに、ヴォルも当然のように一言で答えました。
食後のお茶を飲みながらのサッパリとした報告ですが、普通なら有り得ません。
あの数を──理解はしかねますが、実際に自分の目で見た事なので疑う余地もありませんでした。
私は改めて後ろを振り返りますがそこには黒い魔物の影はなく、ただ燃え続く炎があるだけです。
「レア?」
「ウエルダンだろ」
「さすがだね」
ヴォルとベンダーツさんの冗談半分な会話でした。
明らかにお肉の焼き加減──の話ではないです。
「で……話、聞いてたでしょ」
「あぁ」
そして二人の雰囲気が変わりました。
ヴォルとベンダーツさんの二人の会話が不明ですが、何やら妙に楽しそうにも見えます。──というよりも、いつ何処で聞いていたのか不思議でした。
「考えてもいなかったな」
「どうよ?」
「……悪くない」
「やっぱり?」
「あぁ」
何だか二人の中では会話が成立しているようです。
端的に交わされる言葉の真意は分かりませんが、とりあえず皆が無事なのは幸せでした。
あれだけの魔物討伐も、ヴォルの魔法であっという間とかさすがです。何かもう今更ですが、色々と超越しているようでした。
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