378 / 515
第八章
5.お前はついでだ【4】
しおりを挟む
そんな私達の向こう、遠く南の方で爆発音が聞こえました。
振り向くと地平の向こうから黒煙が立ち上っているのが確認出来ます。
「派手にやってるねぇ。最近魔法を禁止していたから、鬱憤が溜まってたんかなぁ」
内容の割りにはノンビリとした口調のベンダーツさんでした。
勿論魔法を使っているのはヴォルでしょうし、あの数の魔物を討伐しようと思ったら両手剣だけでは足りません。そんな理由もあって魔法を使う事が分かっている為か、ベンダーツさんは今までのようにピリピリとはしていませんでした。
「ヴォルは他の魔力を持った他の方よりも、全体量が多いのですよね?」
「あぁ、潜在魔力値ね。多いってものじゃないよ、それこそ比べるのが可哀想になるくらいだ。……それでも魔力は半永久的に湧き出ない」
私の問い掛けに、僅かに固い表情でベンダーツさんが答えてくれます。
人の力なのですから、半永久的になんてある筈がない事は分かりました。
「だがら消費が多ければ枯渇だってする可能性がある。……まぁ、どう考えたってアイツが一番最後まで残る口だろうけどさ」
「どういう意味ですか?」
「そりゃ、そのままの……ってこれ、怒られる?」
私の感じたままの問い掛けに、ベンダーツさんが首を傾げます。
誰に怒られるというのでしょうか。けれども話の流れ的にヴォルなのかもしれないと、意味が分からずとも推測されました。
「まぁ、良いや。話のついでだし?」
ニヤリと悪そうに笑みを浮かべたベンダーツさんです。
やっぱり根に持っているようだと、私は苦笑いを返しました。
「ほら、それはこの世界でヴォルが一番の魔力所持者だからだよ」
ベンダーツさんはニッコリと笑顔のままに告げます。
しかしながらその突然の言葉に、私は瞬きを繰り返す事しか出来ませんでした。
世界で一番の魔力所持者とは、どういう意味なのでしょう。精霊さんに好かれる程、強い魔力を持っていると事は知っていました。でも私の知識はそれくらいです。
「あれだけの力があれば、世界征服だって出来ちゃうのにねぇ。人間だって好きじゃないし、魔物だって魔法でアッと言う間に消滅させる事が出来るじゃん?……それを大人しく言われるまま魔法石になる未来を選ぶだなんて馬鹿げてるよ、本当」
吐き捨てるような言葉でした。明らかに怒っています。
良く分かりませんが──ベンダーツさんが憤りを感じている事は理解出来ました。それでも内容が何やら殺伐としています。
「あの……、マークさんはヴォルの監視役でもあるのですよね?」
「そうだよ」
「それなのに、反逆心を煽ってどうするのですか」
思わず説教モードに入ってしまいました。
いったい、この人は何がしたいのでしょうか。
「……そうだなぁ。あまりにも馬鹿正直に生きてるから、掻き乱したくなった?みたいな」
ニッコリと良い笑顔を向けてくるベンダーツさんです。
そんな物騒な意見が通ってしまうようではとても困るのですけど、これが本音なのかもしれないと思ってしまいました。
「俺はさ……家系的に中央の補佐を多数排出してる出自ではあるんだけど、個人的には思うところが色々あったりするんよ」
「はぁ……」
小さく溜め息を吐いたベンダーツさんは、ヴォルのいるであろう南の方角へ視線を向けました。
私も少しだけ聞いた事がありますが、ベンダーツさんの御実家は貴族であるらしいのです。確かに魔力所持者だからといって、皇帝様の御子息に平民を従属させはしないと今なら理解出来ました。
「いっそのこと、独立国を作ったり?」
ポツリと返される言葉は、ベンダーツさんの独り言のように思うがまま綴られます。
しかしながら独立とは──そんな大それた事をそんなに簡単に言われてもと、私は反応に困ってしまいました。
「ほら、俺は優秀だからさ。宰相もこなせると思うんだよね。どう?……ほら、何なら料理長も出来ちゃうし」
今度は爽やか系笑顔のベンダーツさんです。
聞きながらもコトリとお皿を置く音に手元を見ると、いつの間にかたくさんの食事がテーブルの上に並んでいました。
何だか色々と驚きです。そして私の出来た手伝いはパンを運んだだけに終わっていました。
話しながらこれだけの手際の良さ──素晴らしいです、その能力を少しでも分けてほしいです。
振り向くと地平の向こうから黒煙が立ち上っているのが確認出来ます。
「派手にやってるねぇ。最近魔法を禁止していたから、鬱憤が溜まってたんかなぁ」
内容の割りにはノンビリとした口調のベンダーツさんでした。
勿論魔法を使っているのはヴォルでしょうし、あの数の魔物を討伐しようと思ったら両手剣だけでは足りません。そんな理由もあって魔法を使う事が分かっている為か、ベンダーツさんは今までのようにピリピリとはしていませんでした。
「ヴォルは他の魔力を持った他の方よりも、全体量が多いのですよね?」
「あぁ、潜在魔力値ね。多いってものじゃないよ、それこそ比べるのが可哀想になるくらいだ。……それでも魔力は半永久的に湧き出ない」
私の問い掛けに、僅かに固い表情でベンダーツさんが答えてくれます。
人の力なのですから、半永久的になんてある筈がない事は分かりました。
「だがら消費が多ければ枯渇だってする可能性がある。……まぁ、どう考えたってアイツが一番最後まで残る口だろうけどさ」
「どういう意味ですか?」
「そりゃ、そのままの……ってこれ、怒られる?」
私の感じたままの問い掛けに、ベンダーツさんが首を傾げます。
誰に怒られるというのでしょうか。けれども話の流れ的にヴォルなのかもしれないと、意味が分からずとも推測されました。
「まぁ、良いや。話のついでだし?」
ニヤリと悪そうに笑みを浮かべたベンダーツさんです。
やっぱり根に持っているようだと、私は苦笑いを返しました。
「ほら、それはこの世界でヴォルが一番の魔力所持者だからだよ」
ベンダーツさんはニッコリと笑顔のままに告げます。
しかしながらその突然の言葉に、私は瞬きを繰り返す事しか出来ませんでした。
世界で一番の魔力所持者とは、どういう意味なのでしょう。精霊さんに好かれる程、強い魔力を持っていると事は知っていました。でも私の知識はそれくらいです。
「あれだけの力があれば、世界征服だって出来ちゃうのにねぇ。人間だって好きじゃないし、魔物だって魔法でアッと言う間に消滅させる事が出来るじゃん?……それを大人しく言われるまま魔法石になる未来を選ぶだなんて馬鹿げてるよ、本当」
吐き捨てるような言葉でした。明らかに怒っています。
良く分かりませんが──ベンダーツさんが憤りを感じている事は理解出来ました。それでも内容が何やら殺伐としています。
「あの……、マークさんはヴォルの監視役でもあるのですよね?」
「そうだよ」
「それなのに、反逆心を煽ってどうするのですか」
思わず説教モードに入ってしまいました。
いったい、この人は何がしたいのでしょうか。
「……そうだなぁ。あまりにも馬鹿正直に生きてるから、掻き乱したくなった?みたいな」
ニッコリと良い笑顔を向けてくるベンダーツさんです。
そんな物騒な意見が通ってしまうようではとても困るのですけど、これが本音なのかもしれないと思ってしまいました。
「俺はさ……家系的に中央の補佐を多数排出してる出自ではあるんだけど、個人的には思うところが色々あったりするんよ」
「はぁ……」
小さく溜め息を吐いたベンダーツさんは、ヴォルのいるであろう南の方角へ視線を向けました。
私も少しだけ聞いた事がありますが、ベンダーツさんの御実家は貴族であるらしいのです。確かに魔力所持者だからといって、皇帝様の御子息に平民を従属させはしないと今なら理解出来ました。
「いっそのこと、独立国を作ったり?」
ポツリと返される言葉は、ベンダーツさんの独り言のように思うがまま綴られます。
しかしながら独立とは──そんな大それた事をそんなに簡単に言われてもと、私は反応に困ってしまいました。
「ほら、俺は優秀だからさ。宰相もこなせると思うんだよね。どう?……ほら、何なら料理長も出来ちゃうし」
今度は爽やか系笑顔のベンダーツさんです。
聞きながらもコトリとお皿を置く音に手元を見ると、いつの間にかたくさんの食事がテーブルの上に並んでいました。
何だか色々と驚きです。そして私の出来た手伝いはパンを運んだだけに終わっていました。
話しながらこれだけの手際の良さ──素晴らしいです、その能力を少しでも分けてほしいです。
0
お気に入りに追加
405
あなたにおすすめの小説
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる