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第八章
2.魔力の流れ【2】
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「あの、それで……お二人共大丈夫なのですか?」
「ん~、まぁね。とりあえずそこはブルーべ伯爵を説得中らしいけど、心情はどうであれそっちは娘が町長に収まった事で納得せざるを得ないでしょ。あ、ブルーべ伯爵は本当に疲労で倒れていたらしいし。んで今回の魔物進行も黒幕はゼブル卿って事に流れ的になってて、民衆を味方にした彼女の勝ちかな。そんな感じで漸くだけど、俺達は次の目的に向かえそうだよ。あ、この南にも大きめの町があるけど、行ってみる?」
私の問い掛けに、ベンダーツさんは詳しく教えてくれました。
ユーニキュアさんと幼馴染さん、身分違い以外にも障害がありそうですが頑張ってほしいです。そして音の精霊さんがいなくても彼女の言葉が軽んじられる事はもうなさそうなので安心しました。
「そうか。……この南だとケストニアだな。魔力協会の支部がある筈だが」
「ご名答~。少しばかり面倒だとは思うけど、ヴォルにはヴォルティ様に戻ってもらわないとね。さすがに彼処は俺等の顔が割れてるから」
二人の苦い表情に、魔力協会という組織との力関係を見た気がします。
皇帝様の息子であっても、四元素魔力を持っている限り監視下からは逃れられないという事が伝わってきました。
「あ、メルもメルシャ様で宜しく。俺もケストニア滞在中はキチンと執事ベンダーツをするからさ。俺の顔までバレてるのはそこくらいだけど、ヴォルの王都脱出は噂になってるだろうし。何だかんだでサガルットでも目立っちゃったからねぇ」
「問題ない。俺は魔力の坩堝を探すだけだ」
首を竦めながら告げたベンダーツさんですが、ヴォルはいつものぶれない対応です。
こんなにも色々あると、普通は心が折れてしまってもおかしくはないと思いました。けれどもそうではないところが彼の強さでもあるのでしょう。
「他人事のように思っているかもだけど、メルも重要登場人物だからね?言ったでしょ、メルシャ様で宜しくって。つまりはヴォルティ様の妻として公の場に立つって事だからね?」
他人事のように二人のやり取りを聞いていた私に、ベンダーツさんが一歩足を踏み出します。
何でそんな事になるのか分からず、驚きのあまりパチパチと瞬きをするだけの私でした。
「ほら、話を聞いてなかった。事前に面会の約束を取っていないけど、皇太子と皇太子妃の訪問だぜ?……しっかし、そうなるとウマウマに騎乗して乗り込む訳にも行かないなぁ。道中で馬車用意しなきゃ。ってか面倒だから、ここでお礼としてもらってくるよ。ちょっと待っててね~」
そう言うが早いか、すぐさまベンダーツさんは踵を返して結界の外へ出ていきます。
忙しそうでいて、その実楽しそうなのが伝わってきました。
それらを見ていると、ベンダーツさんのお城でのお堅い補佐役の方が演技であったかのように思えてきます。
「出発の準備をするか」
「はい」
状況がいまいち把握出来ていませんが、ヴォルに声を掛けられて私はすぐに頷きました。どうであれ、私がやれる事は限られているのです。
スキップでもしそうな勢いでサガルットへ戻って行ったベンダーツさんを見送ったヴォルと私は、想ったより長くいた部屋の荷物を片付け始めたのでした。
──ですがここ、このままで良いのでしょうか。
今更ながらに、町長さんのお屋敷をくり貫いてしまった事を思い出します。緊急事態だったとはいえ、町の外に部屋一つを移動させてしまっているのですからこのまま放置は出来ませんでした。
「ん~、まぁね。とりあえずそこはブルーべ伯爵を説得中らしいけど、心情はどうであれそっちは娘が町長に収まった事で納得せざるを得ないでしょ。あ、ブルーべ伯爵は本当に疲労で倒れていたらしいし。んで今回の魔物進行も黒幕はゼブル卿って事に流れ的になってて、民衆を味方にした彼女の勝ちかな。そんな感じで漸くだけど、俺達は次の目的に向かえそうだよ。あ、この南にも大きめの町があるけど、行ってみる?」
私の問い掛けに、ベンダーツさんは詳しく教えてくれました。
ユーニキュアさんと幼馴染さん、身分違い以外にも障害がありそうですが頑張ってほしいです。そして音の精霊さんがいなくても彼女の言葉が軽んじられる事はもうなさそうなので安心しました。
「そうか。……この南だとケストニアだな。魔力協会の支部がある筈だが」
「ご名答~。少しばかり面倒だとは思うけど、ヴォルにはヴォルティ様に戻ってもらわないとね。さすがに彼処は俺等の顔が割れてるから」
二人の苦い表情に、魔力協会という組織との力関係を見た気がします。
皇帝様の息子であっても、四元素魔力を持っている限り監視下からは逃れられないという事が伝わってきました。
「あ、メルもメルシャ様で宜しく。俺もケストニア滞在中はキチンと執事ベンダーツをするからさ。俺の顔までバレてるのはそこくらいだけど、ヴォルの王都脱出は噂になってるだろうし。何だかんだでサガルットでも目立っちゃったからねぇ」
「問題ない。俺は魔力の坩堝を探すだけだ」
首を竦めながら告げたベンダーツさんですが、ヴォルはいつものぶれない対応です。
こんなにも色々あると、普通は心が折れてしまってもおかしくはないと思いました。けれどもそうではないところが彼の強さでもあるのでしょう。
「他人事のように思っているかもだけど、メルも重要登場人物だからね?言ったでしょ、メルシャ様で宜しくって。つまりはヴォルティ様の妻として公の場に立つって事だからね?」
他人事のように二人のやり取りを聞いていた私に、ベンダーツさんが一歩足を踏み出します。
何でそんな事になるのか分からず、驚きのあまりパチパチと瞬きをするだけの私でした。
「ほら、話を聞いてなかった。事前に面会の約束を取っていないけど、皇太子と皇太子妃の訪問だぜ?……しっかし、そうなるとウマウマに騎乗して乗り込む訳にも行かないなぁ。道中で馬車用意しなきゃ。ってか面倒だから、ここでお礼としてもらってくるよ。ちょっと待っててね~」
そう言うが早いか、すぐさまベンダーツさんは踵を返して結界の外へ出ていきます。
忙しそうでいて、その実楽しそうなのが伝わってきました。
それらを見ていると、ベンダーツさんのお城でのお堅い補佐役の方が演技であったかのように思えてきます。
「出発の準備をするか」
「はい」
状況がいまいち把握出来ていませんが、ヴォルに声を掛けられて私はすぐに頷きました。どうであれ、私がやれる事は限られているのです。
スキップでもしそうな勢いでサガルットへ戻って行ったベンダーツさんを見送ったヴォルと私は、想ったより長くいた部屋の荷物を片付け始めたのでした。
──ですがここ、このままで良いのでしょうか。
今更ながらに、町長さんのお屋敷をくり貫いてしまった事を思い出します。緊急事態だったとはいえ、町の外に部屋一つを移動させてしまっているのですからこのまま放置は出来ませんでした。
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