351 / 515
第七章
10.契約を破棄している【3】
しおりを挟む
「そうだよ、俺はブルーべ家の雇われ人の息子さ。でもだからといって、キュアの幼馴染みである事は変わらないだろ?」
「そんなの、言い訳にしかならないわよっ」
「じゃあ、結婚を申し込んだ一人とでも言えば良いかい?」
離れた距離をものともせず、ユーニキュアさんと幼馴染みというドガさん(?)が言い合っています。グイグイ攻めていくドガさんに対し、ユーニキュアさんが押され気味のように感じました。後ろにも町の人達がいるのですが、求婚の件を公表してしまって良いのでしょうか。
しかしながら音の精霊さんの伝達力が凄いとしか言えませんでした。──勿論、使用されている魔力はヴォルのものです。
「そ、そんなのっ……そんな男性はいっぱいいるわよっ!」
「でもキュアは誰の求婚も、一度だって受けてはいないだろ?」
「あ、当たり前よっ。お父様がお認めにならないわっ。地位も権力も、全てブルーべ家の礎にならなくてはダメなんですもの!」
「そんなの、俺が認めさせるから。い、いや……何年かかるか分からないけどっ。でもだから、俺と結婚してくれっ」
「ば……、バカ……。こんな風になった私へ、まだ求婚をするなんて……本当にドガはバカなんだから……」
泣き崩れたユーニキュアさんは、先程までの攻撃的な感情も苦しそうな感情も見えませんでした。
そして何だか、嬉しそうに涙しているのです。もしかしなくても、ユーニキュアさんの好きな人ってドガさんの事かもしれませんでした。
しかしながら、この町中の人達を巻き込んだ公開プロポーズです。これが私なら羞恥のあまり死ねそう──いえ、私も同じでした。
「何、結局父親に逆らえなかった娘の末路?しかもそこの男と恋仲とか、俺達が完全ピエロじゃん。って言うか、まだ魔物も残ってるしさ。どうすんのよ、アレ」
ベンダーツさんが呟きます。
確かに足を固定された町の人に混じるように、小型の魔物の群れがいました。
そういえば、人の皮を被った魔物がいるとベンダーツさんが言っていたような気がします。あれがどういった意味を含んでいるのか不明のままだした。
「消せば良い」
「えっ?!」
思わず驚いて振り向いてしまいましたが、何だか簡単に答えたヴォルです。
「そりゃまぁ、元々俺達は魔物を討伐に来てるんだけどな。だけどまた戦うのぉ?」
「問題ない。マークは見ていろ。俺の魔法を使う」
「ん~……、その方が手っ取り早いけど。でも本当に大丈夫なのか?紛れてるけど……」
「……人か魔物かは精霊が教えてくれる。問題ない」
心配そうなベンダーツさんに、僅かに言い淀んだヴォルが答えました。
「……そっか。でも力を残しておいてくれよ?まだ事態の終息には早いんだからさぁ」
「承知した」
ヴォルとベンダーツさんの話が終了したようです。
──って言うかですね、私には頭をポンポン撫でるだけですか?
「い、行ってらっしゃい……ですっ」
「……行ってくる」
何だか二人に交ざりたくて、既に背を向きかけたヴォルに声を掛けました。
不安でしたが、すぐにヴォルが振り返って応えてくれたのでとても嬉しかったです。私は自然と笑みが浮かびました。
「ぅわ~、笑顔で見送りとかって……。本当にヴォルの心を鷲掴みするのが上手だねぇ。そりゃ、サッサと帰って来たくなるわなぁ」
呆れる様な口振りのベンダーツさんです。
しかしながらが私にはそれくらいしかやれる事がないのでした。戦闘は参加しようものなら秒殺されるでしょうし、こうしてヴォルの結界の中でいつも待つだけなのです。
ヴォルの表情はいつもあまり変わらないですが、僅かに眉を寄せたりだとか気にしていると分かるようになってきました。でも内緒ですけど、一番瞳が感情を浮かべるのです。
「そんなの、言い訳にしかならないわよっ」
「じゃあ、結婚を申し込んだ一人とでも言えば良いかい?」
離れた距離をものともせず、ユーニキュアさんと幼馴染みというドガさん(?)が言い合っています。グイグイ攻めていくドガさんに対し、ユーニキュアさんが押され気味のように感じました。後ろにも町の人達がいるのですが、求婚の件を公表してしまって良いのでしょうか。
しかしながら音の精霊さんの伝達力が凄いとしか言えませんでした。──勿論、使用されている魔力はヴォルのものです。
「そ、そんなのっ……そんな男性はいっぱいいるわよっ!」
「でもキュアは誰の求婚も、一度だって受けてはいないだろ?」
「あ、当たり前よっ。お父様がお認めにならないわっ。地位も権力も、全てブルーべ家の礎にならなくてはダメなんですもの!」
「そんなの、俺が認めさせるから。い、いや……何年かかるか分からないけどっ。でもだから、俺と結婚してくれっ」
「ば……、バカ……。こんな風になった私へ、まだ求婚をするなんて……本当にドガはバカなんだから……」
泣き崩れたユーニキュアさんは、先程までの攻撃的な感情も苦しそうな感情も見えませんでした。
そして何だか、嬉しそうに涙しているのです。もしかしなくても、ユーニキュアさんの好きな人ってドガさんの事かもしれませんでした。
しかしながら、この町中の人達を巻き込んだ公開プロポーズです。これが私なら羞恥のあまり死ねそう──いえ、私も同じでした。
「何、結局父親に逆らえなかった娘の末路?しかもそこの男と恋仲とか、俺達が完全ピエロじゃん。って言うか、まだ魔物も残ってるしさ。どうすんのよ、アレ」
ベンダーツさんが呟きます。
確かに足を固定された町の人に混じるように、小型の魔物の群れがいました。
そういえば、人の皮を被った魔物がいるとベンダーツさんが言っていたような気がします。あれがどういった意味を含んでいるのか不明のままだした。
「消せば良い」
「えっ?!」
思わず驚いて振り向いてしまいましたが、何だか簡単に答えたヴォルです。
「そりゃまぁ、元々俺達は魔物を討伐に来てるんだけどな。だけどまた戦うのぉ?」
「問題ない。マークは見ていろ。俺の魔法を使う」
「ん~……、その方が手っ取り早いけど。でも本当に大丈夫なのか?紛れてるけど……」
「……人か魔物かは精霊が教えてくれる。問題ない」
心配そうなベンダーツさんに、僅かに言い淀んだヴォルが答えました。
「……そっか。でも力を残しておいてくれよ?まだ事態の終息には早いんだからさぁ」
「承知した」
ヴォルとベンダーツさんの話が終了したようです。
──って言うかですね、私には頭をポンポン撫でるだけですか?
「い、行ってらっしゃい……ですっ」
「……行ってくる」
何だか二人に交ざりたくて、既に背を向きかけたヴォルに声を掛けました。
不安でしたが、すぐにヴォルが振り返って応えてくれたのでとても嬉しかったです。私は自然と笑みが浮かびました。
「ぅわ~、笑顔で見送りとかって……。本当にヴォルの心を鷲掴みするのが上手だねぇ。そりゃ、サッサと帰って来たくなるわなぁ」
呆れる様な口振りのベンダーツさんです。
しかしながらが私にはそれくらいしかやれる事がないのでした。戦闘は参加しようものなら秒殺されるでしょうし、こうしてヴォルの結界の中でいつも待つだけなのです。
ヴォルの表情はいつもあまり変わらないですが、僅かに眉を寄せたりだとか気にしていると分かるようになってきました。でも内緒ですけど、一番瞳が感情を浮かべるのです。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
405
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる