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第七章
9.偽(イツワ)りを告げるのか【4】
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「子供だな。己の感情のみで行動を起こす前に自身を変える事だ。出来なければ諦めるのみ」
ヴォルが真っ直ぐユーニキュアさんへ視線を向けました。
彼の場合、精霊さんをどうこう出来る訳がないので諦めたという事でしょうか。今は自暴自棄な部分は見せないですけど、ユーニキュアさんの件では思うところがあるようでした。
「わ、私は一生懸命にやってきたのです。それでも周囲の対応は変わりませんでした。このまま自分を殺して生きていくのなら、こんな環境は壊れてしまえば良いのですっ。私に音をくれた精霊も、私が好きに振る舞えば良いと言ってくれました!」
必死に叫ぶユーニキュアさんは、もうこれしか方法はないと言わんばかりです。
ヴォルにもベンダーツさんにも怒られ、自棄になってしまったかのようでした。
と言うか──今の話、どういう意味なのでしょうか。彼女の言う通りだとすると、切っ掛けは精霊さんという事になるのではと思いました。
「あの、ユーニキュアさん?音をくれた精霊さんってどういう意味ですか?」
「あら、貴女は何も知らないのですね」
私の質問に、キッと怒ったままの視線を向けるユーニキュアさんです。
でも彼女の話に対して問い掛けた事が良かったのか、表情は怒っていましたが答えてくれるようで安心しました。
「人は元々魔力を持って生まれる事もありますが、精霊がつく事によって魔力を生じる場合もありますの。私は後者。そう言った場合の魔力は魔法石に反応しないのですよ。実際に魔力を持っているのは精霊ですから」
「マジか?非能力者に精霊がつくだって?!」
驚いた声をあげたのはベンダーツさんです。
「えぇ、私がそうなのだから嘘ではないですわ。現に、子供の頃にキチンと魔法省の診断を受けてます」
胸を張る勢いでユーニキュアさんが告げました。
ベンダーツさんが驚くと言う事は、ヴォルも知らなかったのでしょうか。そう思って見上げましたが──、彼の表情の変化は未熟な私には判断出来ませんでした。
「理由は分かりません。始まりはただの精霊の気紛れかもしれませんが、私はそれで力を得たのです。私が私の力で私の世界を壊して、何が悪いのですか?」
そう言いきって、ユーニキュアさんは顔を背けてしまいます。
これ以上の説得を聞く気がないのか、逆に開き直ったようでした。先程は見えた恐れや悲哀さも消えています。
私にはユーニキュアさんの精霊さんは見えませんし、最終的に精霊さんが何を求めているのか分かりませんでした。でも己の世界を壊すと言う人に力を与え続けて、結局どうしたいのでしょうか。
「私の力は些細な物かもしれません。音に魔力を乗せ、聞いた物を操るだけです。しかも、人のように複雑な意思を持った生命体には利きません。今回は運良く言葉で洗脳するタイプの魔力所持者がいましたからね。その隙をつけば簡単でした。本来私の音に反応してくれるのは、精々動物や魔物くらいです。それでもこれは私の剣なのです」
彼女の言葉からゼブルさんとの共闘だった訳ではなく、ユーニキュアさんが都合良く利用した形のようでした。
剣──ですか。ユーニキュアさんがここまで思い詰める前に誰かが話を聞いてくれれば、こんな事にはならなかったかもしれませんでした。──もう遅いですが。
でも本当に彼女の心の悲鳴は、誰も気付かなかったのでしょうか。
ヴォルが真っ直ぐユーニキュアさんへ視線を向けました。
彼の場合、精霊さんをどうこう出来る訳がないので諦めたという事でしょうか。今は自暴自棄な部分は見せないですけど、ユーニキュアさんの件では思うところがあるようでした。
「わ、私は一生懸命にやってきたのです。それでも周囲の対応は変わりませんでした。このまま自分を殺して生きていくのなら、こんな環境は壊れてしまえば良いのですっ。私に音をくれた精霊も、私が好きに振る舞えば良いと言ってくれました!」
必死に叫ぶユーニキュアさんは、もうこれしか方法はないと言わんばかりです。
ヴォルにもベンダーツさんにも怒られ、自棄になってしまったかのようでした。
と言うか──今の話、どういう意味なのでしょうか。彼女の言う通りだとすると、切っ掛けは精霊さんという事になるのではと思いました。
「あの、ユーニキュアさん?音をくれた精霊さんってどういう意味ですか?」
「あら、貴女は何も知らないのですね」
私の質問に、キッと怒ったままの視線を向けるユーニキュアさんです。
でも彼女の話に対して問い掛けた事が良かったのか、表情は怒っていましたが答えてくれるようで安心しました。
「人は元々魔力を持って生まれる事もありますが、精霊がつく事によって魔力を生じる場合もありますの。私は後者。そう言った場合の魔力は魔法石に反応しないのですよ。実際に魔力を持っているのは精霊ですから」
「マジか?非能力者に精霊がつくだって?!」
驚いた声をあげたのはベンダーツさんです。
「えぇ、私がそうなのだから嘘ではないですわ。現に、子供の頃にキチンと魔法省の診断を受けてます」
胸を張る勢いでユーニキュアさんが告げました。
ベンダーツさんが驚くと言う事は、ヴォルも知らなかったのでしょうか。そう思って見上げましたが──、彼の表情の変化は未熟な私には判断出来ませんでした。
「理由は分かりません。始まりはただの精霊の気紛れかもしれませんが、私はそれで力を得たのです。私が私の力で私の世界を壊して、何が悪いのですか?」
そう言いきって、ユーニキュアさんは顔を背けてしまいます。
これ以上の説得を聞く気がないのか、逆に開き直ったようでした。先程は見えた恐れや悲哀さも消えています。
私にはユーニキュアさんの精霊さんは見えませんし、最終的に精霊さんが何を求めているのか分かりませんでした。でも己の世界を壊すと言う人に力を与え続けて、結局どうしたいのでしょうか。
「私の力は些細な物かもしれません。音に魔力を乗せ、聞いた物を操るだけです。しかも、人のように複雑な意思を持った生命体には利きません。今回は運良く言葉で洗脳するタイプの魔力所持者がいましたからね。その隙をつけば簡単でした。本来私の音に反応してくれるのは、精々動物や魔物くらいです。それでもこれは私の剣なのです」
彼女の言葉からゼブルさんとの共闘だった訳ではなく、ユーニキュアさんが都合良く利用した形のようでした。
剣──ですか。ユーニキュアさんがここまで思い詰める前に誰かが話を聞いてくれれば、こんな事にはならなかったかもしれませんでした。──もう遅いですが。
でも本当に彼女の心の悲鳴は、誰も気付かなかったのでしょうか。
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