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第七章
8.お前の教育方針には従わない【5】
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「魔法石……」
「そ。知ってると思うけど、魔力に反応する石だよ。これはさっきセグレスト・ゼブル伯爵にも使ったんだけど、君にもない筈だよね?……何がって、言わないと分からない?勿論、魔力所持者の印だよ」
青い石を見つめてポツリと呟いたユーニキュアさんに、ベンダーツさんが更なる攻撃をしました。
以前にも聞きましたけど、魔力所持者には印がつけられるのです。見た事はないですが、ヴォルにもでしょうか。
私は思わず真後ろのヴォルを見上げてしまいました。
「ある」
端的に答えてくれるヴォルです。
何処に──とばかりに首を傾げた私でした。するとヴォルは自分の首筋を指し示します。──ありました。恐らくこれ、です。
ヴォルの首の後ろ──普段は髪で隠れているのですが、そこに指先で押さえてしまえば見えなくなってしまう程の青黒い印がありました。痣とかでは誤魔化しきれない、あの教会の奥で見た紋章と同じ物です。
「メルは詳しく知らないよね。ついでだから説明すると、これは魔法省が魔力所持者を見つけるとやる行為の一つなんだ。印は魔法石を粉にして植え付けられた刺青だから、万が一途中でその者に魔力がなくなってしまえば消えるって便利なものさ」
ベンダーツさんがにっこり笑顔付きでレクチャーしてくれました。
知らなかったです。第一、普通は背の高いヴォルの首筋を髪掻き上げてまで見ませんよね。
「その分確実な魔力所持者である証になるんだ。貴族の間ではそれが忌諱させるらしく、自分の子供達に印をつけたがらないという。まぁ、魔法省も貴族を敵にしたくはないだろうからね。四元素の魔力所持者でない限り、寄付金と称して金を受け取る事で見逃されるんだ。これ、金と権力に物をいわせたやり口ね」
「魔力所持者全てが攻撃に特化した四元素魔力を持つ訳ではないからだ」
続けられた講義に耳を傾けていると、不足事項をヴォルが補いました。
でもヴォルがそう呟きながら顔を埋めた先──、そこは何故か私の胸です。
現在の私の格好は、ベッドに腰掛けていたヴォルの首筋を見ようと膝立ちに向き合っているのでした。
「ちょ……、ヴォル?!」
慌てる私に構う事なく、ヴォルの腰に回された腕に力が込められます。
ユーニキュアさんも見ているというのに何をしているのかと、私は混乱と羞恥でパニックでした。
「おいおい、ヴォル。それ以上は周囲に目の毒だぞ」
相変わらず冷静なのがベンダーツさんです。
思わず振り返って助けを求めたのですが、ユーニキュアさんは先程から青い顔をしたり赤い顔をしたりとても忙しそうでした。
私は何度も後ろを気にしつつ、ヴォルに抗議している最中です。
腕を突っ張るようにして身体を離そうと試みていますが、彼の腕の力は緩む気配がありませんでした。
──いったい、何故こうなったのですか?
そんなに柔らかさがないのは自覚しているので、このような衆目の下で過度なスキンシップは遠慮してほしいです。
「メルがそんな風に膝立ちなんかするからでしょ、全く。ヴォルの首筋を見ようとしたのは分からなくないけど、あまりにも無防備すぎるよ。飢えた狼の目の前に、肉をぶら下げてどうすんのさ」
溜め息と共にベンダーツさんから非難が飛びました。
飢えた狼って、ヴォルはお腹が空いている──訳ではない筈です。と言う事は、もっと違う意味で。
ベンダーツさんの言葉の意味に思い至った私は、途端に真っ赤になってしまいました。すみません、ベンダーツさん。ストレートな言動で現せず、揶揄しただけなのようです。
「そ。知ってると思うけど、魔力に反応する石だよ。これはさっきセグレスト・ゼブル伯爵にも使ったんだけど、君にもない筈だよね?……何がって、言わないと分からない?勿論、魔力所持者の印だよ」
青い石を見つめてポツリと呟いたユーニキュアさんに、ベンダーツさんが更なる攻撃をしました。
以前にも聞きましたけど、魔力所持者には印がつけられるのです。見た事はないですが、ヴォルにもでしょうか。
私は思わず真後ろのヴォルを見上げてしまいました。
「ある」
端的に答えてくれるヴォルです。
何処に──とばかりに首を傾げた私でした。するとヴォルは自分の首筋を指し示します。──ありました。恐らくこれ、です。
ヴォルの首の後ろ──普段は髪で隠れているのですが、そこに指先で押さえてしまえば見えなくなってしまう程の青黒い印がありました。痣とかでは誤魔化しきれない、あの教会の奥で見た紋章と同じ物です。
「メルは詳しく知らないよね。ついでだから説明すると、これは魔法省が魔力所持者を見つけるとやる行為の一つなんだ。印は魔法石を粉にして植え付けられた刺青だから、万が一途中でその者に魔力がなくなってしまえば消えるって便利なものさ」
ベンダーツさんがにっこり笑顔付きでレクチャーしてくれました。
知らなかったです。第一、普通は背の高いヴォルの首筋を髪掻き上げてまで見ませんよね。
「その分確実な魔力所持者である証になるんだ。貴族の間ではそれが忌諱させるらしく、自分の子供達に印をつけたがらないという。まぁ、魔法省も貴族を敵にしたくはないだろうからね。四元素の魔力所持者でない限り、寄付金と称して金を受け取る事で見逃されるんだ。これ、金と権力に物をいわせたやり口ね」
「魔力所持者全てが攻撃に特化した四元素魔力を持つ訳ではないからだ」
続けられた講義に耳を傾けていると、不足事項をヴォルが補いました。
でもヴォルがそう呟きながら顔を埋めた先──、そこは何故か私の胸です。
現在の私の格好は、ベッドに腰掛けていたヴォルの首筋を見ようと膝立ちに向き合っているのでした。
「ちょ……、ヴォル?!」
慌てる私に構う事なく、ヴォルの腰に回された腕に力が込められます。
ユーニキュアさんも見ているというのに何をしているのかと、私は混乱と羞恥でパニックでした。
「おいおい、ヴォル。それ以上は周囲に目の毒だぞ」
相変わらず冷静なのがベンダーツさんです。
思わず振り返って助けを求めたのですが、ユーニキュアさんは先程から青い顔をしたり赤い顔をしたりとても忙しそうでした。
私は何度も後ろを気にしつつ、ヴォルに抗議している最中です。
腕を突っ張るようにして身体を離そうと試みていますが、彼の腕の力は緩む気配がありませんでした。
──いったい、何故こうなったのですか?
そんなに柔らかさがないのは自覚しているので、このような衆目の下で過度なスキンシップは遠慮してほしいです。
「メルがそんな風に膝立ちなんかするからでしょ、全く。ヴォルの首筋を見ようとしたのは分からなくないけど、あまりにも無防備すぎるよ。飢えた狼の目の前に、肉をぶら下げてどうすんのさ」
溜め息と共にベンダーツさんから非難が飛びました。
飢えた狼って、ヴォルはお腹が空いている──訳ではない筈です。と言う事は、もっと違う意味で。
ベンダーツさんの言葉の意味に思い至った私は、途端に真っ赤になってしまいました。すみません、ベンダーツさん。ストレートな言動で現せず、揶揄しただけなのようです。
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