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第七章
7.コレとは何の事だ【2】
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「あ……こん、な……。い…………いやあ、驚きましたよ!ヴォルティ様がこの様なところにいらっしゃるなど……っ」
始めゼブルさんはかなり動揺していましたが、すぐに精神を立て直したようです。両手を擦り合わせ、頭を低くしながらヴォルに歩み寄っていきました。
ですがヴォルが鋭い威圧感と共に彼へ意識を向けた途端、ひきつった表情のまま固まってしまいます。脂汗が吹き出し、顔色が真っ青になっていました。
「あ~あ、本気で怒らしちゃったもんね。俺、知~らないっと」
ベンダーツさんは既に戦線離脱の構えです。腕を頭の後ろに組んだまま、入り口の壁に背を預けてしまっていました。──って言うか、私も自分の身体が動けたらそうしているかもです。
こういう時のヴォルは人の言葉に貸す耳を持ちませんから、下手に口を挟めば自分に矛先が向きかねないのでした。
「あ……、あの……ヴォルティ様?わ、私はですね……」
「煩い。お前の弁解など聞く余地もない。そもそも俺はお前の行動も関与しない」
「そ、それでは……」
「俺はメルに触れた者を排除するだけだ」
言い訳をしようとしたゼブルさんに告げられたヴォルの言葉に、許されると思ったのか少しだけ喜色を浮かべたゼブルさんです。ですが続けられたヴォルの声音は冷たく響きました。
淡々と言い放つヴォルです。顔色が一気に真っ青になったゼブルさんは、立場なしでした。
「は~い、ヴォルに言い訳は通用しないっての」
「な……、ギャッ!!」
からかいを含んだベンダーツさんの言葉に異議を唱えようとしたゼブルさんですが、潰れたような悲鳴を上げて地面に倒れてしまいます。
良く見るとビクビクと小刻みに痙攣しているので、ヴォルが魔法で電気ショックを与えたようでした。
「うわ~、痛そうっ。見てる俺まで痺れる~」
全く心配そうでないベンダーツさんが、そんなゼブルさんの近くに歩み寄って顔を覗き込みます。そして初めから用意していたのか、縄を出して彼を縛り上げていきました。
更に丁寧に猿轡まで噛ませているベンダーツさんです。でもヴォルはそれに構う事なく、再び私に視線を向けたまま私の身体へ歩み寄りました。
やはり霊体的な私の姿が認識出来ているようで、問い掛ける対象は肉体の方ではなく意識体の私へです。
「何があった」
問い掛けられました。
でもその理由は私にも良く分かりません。気付いたら身体から抜けてしまっていましたし、腕輪が淡く光っていました。
──あれ?順番が違いました?えっと……、壁の紋章が光って……。
私はどう説明したら良いのか判断がつかないながらも、ここに至る経緯を思い浮かべます。
「……分かった」
じっと耳を傾けていたヴォルは、静かに告げました。
──んん?聞こえていたのですか?
頷いたヴォルに逆に驚く私です。そして彼は優しく私の髪を撫で──あ、身体の方です──そのまま静かに抱き上げました。
姫抱きされる自分を見るなんて初めてです。──当たり前ですけど。
「マーク。それの処分は任せた。俺は外の結界にメルを連れていく」
「はいは~い。ここじゃ、魔力が反発してメルの回復が出来ないもんね?コイツはウマイ事処理するから任せて~」
ニコニコのベンダーツさんは、既にゼブルさんの肩に足を乗せていました。
あの──意識がないとはいえ、やめてあげてくださいと言いたいです。
「……あぁ、頼む」
返答に僅かな間がありましたが、ヴォルはそのまま背を向けました。
ベンダーツさんの行動に何も言わない辺り、ヴォルは余程ゼブルさんに怒っているようです。
──あ、私はどうすれば良いのですか?
連れていかれる身体を見送りつつ迷いましたが、とりあえずヴォルについていく事にしました。
先程、回復とか結界とか言われていましたからね。
始めゼブルさんはかなり動揺していましたが、すぐに精神を立て直したようです。両手を擦り合わせ、頭を低くしながらヴォルに歩み寄っていきました。
ですがヴォルが鋭い威圧感と共に彼へ意識を向けた途端、ひきつった表情のまま固まってしまいます。脂汗が吹き出し、顔色が真っ青になっていました。
「あ~あ、本気で怒らしちゃったもんね。俺、知~らないっと」
ベンダーツさんは既に戦線離脱の構えです。腕を頭の後ろに組んだまま、入り口の壁に背を預けてしまっていました。──って言うか、私も自分の身体が動けたらそうしているかもです。
こういう時のヴォルは人の言葉に貸す耳を持ちませんから、下手に口を挟めば自分に矛先が向きかねないのでした。
「あ……、あの……ヴォルティ様?わ、私はですね……」
「煩い。お前の弁解など聞く余地もない。そもそも俺はお前の行動も関与しない」
「そ、それでは……」
「俺はメルに触れた者を排除するだけだ」
言い訳をしようとしたゼブルさんに告げられたヴォルの言葉に、許されると思ったのか少しだけ喜色を浮かべたゼブルさんです。ですが続けられたヴォルの声音は冷たく響きました。
淡々と言い放つヴォルです。顔色が一気に真っ青になったゼブルさんは、立場なしでした。
「は~い、ヴォルに言い訳は通用しないっての」
「な……、ギャッ!!」
からかいを含んだベンダーツさんの言葉に異議を唱えようとしたゼブルさんですが、潰れたような悲鳴を上げて地面に倒れてしまいます。
良く見るとビクビクと小刻みに痙攣しているので、ヴォルが魔法で電気ショックを与えたようでした。
「うわ~、痛そうっ。見てる俺まで痺れる~」
全く心配そうでないベンダーツさんが、そんなゼブルさんの近くに歩み寄って顔を覗き込みます。そして初めから用意していたのか、縄を出して彼を縛り上げていきました。
更に丁寧に猿轡まで噛ませているベンダーツさんです。でもヴォルはそれに構う事なく、再び私に視線を向けたまま私の身体へ歩み寄りました。
やはり霊体的な私の姿が認識出来ているようで、問い掛ける対象は肉体の方ではなく意識体の私へです。
「何があった」
問い掛けられました。
でもその理由は私にも良く分かりません。気付いたら身体から抜けてしまっていましたし、腕輪が淡く光っていました。
──あれ?順番が違いました?えっと……、壁の紋章が光って……。
私はどう説明したら良いのか判断がつかないながらも、ここに至る経緯を思い浮かべます。
「……分かった」
じっと耳を傾けていたヴォルは、静かに告げました。
──んん?聞こえていたのですか?
頷いたヴォルに逆に驚く私です。そして彼は優しく私の髪を撫で──あ、身体の方です──そのまま静かに抱き上げました。
姫抱きされる自分を見るなんて初めてです。──当たり前ですけど。
「マーク。それの処分は任せた。俺は外の結界にメルを連れていく」
「はいは~い。ここじゃ、魔力が反発してメルの回復が出来ないもんね?コイツはウマイ事処理するから任せて~」
ニコニコのベンダーツさんは、既にゼブルさんの肩に足を乗せていました。
あの──意識がないとはいえ、やめてあげてくださいと言いたいです。
「……あぁ、頼む」
返答に僅かな間がありましたが、ヴォルはそのまま背を向けました。
ベンダーツさんの行動に何も言わない辺り、ヴォルは余程ゼブルさんに怒っているようです。
──あ、私はどうすれば良いのですか?
連れていかれる身体を見送りつつ迷いましたが、とりあえずヴォルについていく事にしました。
先程、回復とか結界とか言われていましたからね。
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