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第七章
6.胸の辺りが重い【3】
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するとどうでしょうか。
先程まで神父さん(仮)と私の間に見えない壁があったようでしたが、難なく私に触れる事が出来ました。
あれ?触れないと思ったのは私の気のせいですか?
先程の言葉の意味もよく分かりませんでしたが、目の前で起きた現象に疑問符が湧き出るばかりです。
──って言うか、私はいつまで自分をこんな離れたところから見ているのでしょうか。でも意識が肉体を見ているのって、何だか不思議な感じです。
幽体離脱とか言うのでしょうか──なんて、現実逃避的な思考が浮かびました。
そうこうしている間に、私が連れていかれてしまいます。
待ってください、それは私なんですから。
いつの間に表れたのか隠し通路があって、教会の紋章があった筈の壁に出来ていた道の奥へと神父さん(仮)が足を進めていました。
そしてその連れられていく私を、少し離れたところから私が追いかけます。しかしながら今更気付きましたが、私はまさかの空中浮遊して移動していました。
何だかもうそんな程度の事は怖くない感じです。それよりも連れられていく自分の行方が心配でした。勿論、抵抗は出来ないのですけれども。
「さすがにここまですぐには来ないだろうが、念の為だ」
呟いた後、神父さん(仮)は器用に私を片腕で支えつつ内側の壁に手を触れます。
本当に男の人って力持ちですよねなんて、感心してしまいました。けれども悠長に見ている場合ではありません。なんと、先程の神父さん(仮)の行為で壁が塞がってしまいました。──私、取り残されてしまいましたけど?
突然閉ざされた壁に、私は茫然と瞬きを繰り返します。そして姿の見えなくなった私自身と神父さん(仮)を追うように、慌てて私は壁に手を伸ばしました。──っ?!
心臓が縮まった気がします。
でも今の私って、心臓があるのでしょうか。まぁ、それは置いておきましょう。と言うか、ある事にします。怖いですから。
結論として、私が驚いたのは自分の手が壁をすり抜けたからでした。
これは驚きます。固い筈の壁ですもの。でも痛くありません。それどころか、ゆっくりとそのまま進んでいくと──はい、壁の向こう側に出ました。えぇ、勿論引き返して元の場所を見ましたから確かです。
私、壁をすり抜けました。やっぱり幽体になってまっていたようです。
アワアワ、どうしましょう。って言うか、私の身体っ?!
何故だか胸の辺りが重い。何だ、この違和感は。
先程一瞬メルの腕輪から警戒が飛んできたがすぐに静まった。精霊からも声がかからない。
「どうした、のっ……!注意力が……散漫だよっ?!」
中型の、それでも己より大きな体躯を持った魔物の討伐をしながらベンダーツが声を掛けてきた。
周囲は人と魔物に取り囲まれ、全てがこちらへ攻撃の手を向けてきている。敵意や殺意といった感情は感じられないのだが、鬱陶しい事に代わりはなかった。
「……何でもない」
そう答えつつも、消えない胸部の違和感に眉根を寄せる。だが魔物は待ってはくれない。
サガルットの民は凍り付いた足元目掛け、互いが騒ぎ立てながら無駄な攻撃を繰り返していた。人間ごときの攻撃力で俺の氷魔法が砕ける筈ないだろ。
「ヴォル、……本当に……何でもない?」
煩い奴だ。
魔物討伐に忙しいなら、わざわざ俺に息を切らしながら問い掛けてくる必要もないだろ。剣を振りながら俺を気にするベンダーツ。
何だ、俺がどうしたという。
「ただ……胸の辺りが重いだけだ」
煩わしくて投げやりに答える。魔物もひっきりなしに襲い掛かってくる。
あぁ、煩い。早くメルに触れたい。
先程まで神父さん(仮)と私の間に見えない壁があったようでしたが、難なく私に触れる事が出来ました。
あれ?触れないと思ったのは私の気のせいですか?
先程の言葉の意味もよく分かりませんでしたが、目の前で起きた現象に疑問符が湧き出るばかりです。
──って言うか、私はいつまで自分をこんな離れたところから見ているのでしょうか。でも意識が肉体を見ているのって、何だか不思議な感じです。
幽体離脱とか言うのでしょうか──なんて、現実逃避的な思考が浮かびました。
そうこうしている間に、私が連れていかれてしまいます。
待ってください、それは私なんですから。
いつの間に表れたのか隠し通路があって、教会の紋章があった筈の壁に出来ていた道の奥へと神父さん(仮)が足を進めていました。
そしてその連れられていく私を、少し離れたところから私が追いかけます。しかしながら今更気付きましたが、私はまさかの空中浮遊して移動していました。
何だかもうそんな程度の事は怖くない感じです。それよりも連れられていく自分の行方が心配でした。勿論、抵抗は出来ないのですけれども。
「さすがにここまですぐには来ないだろうが、念の為だ」
呟いた後、神父さん(仮)は器用に私を片腕で支えつつ内側の壁に手を触れます。
本当に男の人って力持ちですよねなんて、感心してしまいました。けれども悠長に見ている場合ではありません。なんと、先程の神父さん(仮)の行為で壁が塞がってしまいました。──私、取り残されてしまいましたけど?
突然閉ざされた壁に、私は茫然と瞬きを繰り返します。そして姿の見えなくなった私自身と神父さん(仮)を追うように、慌てて私は壁に手を伸ばしました。──っ?!
心臓が縮まった気がします。
でも今の私って、心臓があるのでしょうか。まぁ、それは置いておきましょう。と言うか、ある事にします。怖いですから。
結論として、私が驚いたのは自分の手が壁をすり抜けたからでした。
これは驚きます。固い筈の壁ですもの。でも痛くありません。それどころか、ゆっくりとそのまま進んでいくと──はい、壁の向こう側に出ました。えぇ、勿論引き返して元の場所を見ましたから確かです。
私、壁をすり抜けました。やっぱり幽体になってまっていたようです。
アワアワ、どうしましょう。って言うか、私の身体っ?!
何故だか胸の辺りが重い。何だ、この違和感は。
先程一瞬メルの腕輪から警戒が飛んできたがすぐに静まった。精霊からも声がかからない。
「どうした、のっ……!注意力が……散漫だよっ?!」
中型の、それでも己より大きな体躯を持った魔物の討伐をしながらベンダーツが声を掛けてきた。
周囲は人と魔物に取り囲まれ、全てがこちらへ攻撃の手を向けてきている。敵意や殺意といった感情は感じられないのだが、鬱陶しい事に代わりはなかった。
「……何でもない」
そう答えつつも、消えない胸部の違和感に眉根を寄せる。だが魔物は待ってはくれない。
サガルットの民は凍り付いた足元目掛け、互いが騒ぎ立てながら無駄な攻撃を繰り返していた。人間ごときの攻撃力で俺の氷魔法が砕ける筈ないだろ。
「ヴォル、……本当に……何でもない?」
煩い奴だ。
魔物討伐に忙しいなら、わざわざ俺に息を切らしながら問い掛けてくる必要もないだろ。剣を振りながら俺を気にするベンダーツ。
何だ、俺がどうしたという。
「ただ……胸の辺りが重いだけだ」
煩わしくて投げやりに答える。魔物もひっきりなしに襲い掛かってくる。
あぁ、煩い。早くメルに触れたい。
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