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第七章
5.何の権限が【5】
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それからすぐに始まった結界の外で繰り広げられる戦闘に、私はいつの間にか自分の手を握り締めていました。
サガルットの町の人達へは、動きを止める為にヴォルが足元を凍り付けています。同時に、襲い掛かる大型の魔物に風や火といった攻撃魔法を繰り出していました。
ベンダーツさんも剣を振るい、中型や小型の魔物の殲滅を行っています。こちらは一切加減のない攻撃でした。
それにしても、この戦いの発端であるゼブルさんは何処へ行ってしまったのでしょうか。
これだけ町が荒れているのに、彼だけ全く姿が見えないのです。
「……もしかして」
私は一つの考えに突き動かされました。そしてその衝動のまま、ヴォルの結界壁に触れてその外に出ます。
勿論目の前では人と魔物の混成部隊がヴォルとベンダーツさんとの戦闘中でした。私はそれを避けるように大きく右に迂回しながら、町へ足を向けます。
「この町の中心って……」
半ば崩壊している町の中は記憶と少し違いました。それでもヴォルと見て回った町を思い浮かべながら、私はただひたすら走ります。
何故あの時結界から出られたのかとか、何故自ら戦いの場に入っていっているのかとかは考えていませんでした。
大きな町長さんのお屋敷前や、賑やかな商店が建ち並ぶ界隈を抜けます。そして一つの建物の前に立ちました。
「あの時何処からでも見えたのは……、教会です」
私は目の前の建物を見上げます。
そうなのです。それ程高い建物でもなく目立つ訳でもないのに、何故だかこの教会は何処からでも見えたのでした。
旅をしてきて気付いたのですが、どの町でも教会はありましたが必ず北側にありました。そういうものなのだと思っていましたが、ここサガルットでは違いました。
「……でもまさか、扉が開いていたりはしませんよね?」
建物の前に立っていても何も始まりません。私はとりあえず、正面入口と思われる閉ざされた扉の前で考えました。
当たり前ですが、周囲に誰もいません。ここまで走って来ておいて何ですが、少しだけ怖くなってきました。
「何で……開いているのでしょうか」
女は度胸──という事でソッと扉を押してみると、音もなく軽々と動く扉に驚きます。逆に、教会っていうのはこういうものなのかもと思ってしまいました。
それでも恐怖心を簡単には打ち消す事が出来ず、僅かな隙間を開いて中を覗いてみます。
「誰も……いませんか?」
「誰ですか?」
恐る恐る掛けた私の声に対し、当然のように返ってきた返答にビクッと肩が跳ねました。
来ないだろうと思って声を掛けたので、その返答自体が非常に驚くべきものだったのです。──お、落ち着きましょう私。
暴れる鼓動に胸を押さえつつ、大きく深呼吸をしました。
「あ、あの……この教会の方ですか?」
少しどもってしまいましたが、私は姿の見えない声の主に更に問い掛けます。
バカげた質問かも知れませんが、今の私にはその問いしか頭に浮かびませんでした。
「いいえ、違いますよ?」
その穏やかな声と共に、薄暗い教会の中から誰かが歩み寄って来ます。
声は男性、しかもかなり年配の方のようでした。でも私は姿の見えないその方に恐怖を覚える事もなく、ただ出てくるのその場で待っていたのです。
サガルットの町の人達へは、動きを止める為にヴォルが足元を凍り付けています。同時に、襲い掛かる大型の魔物に風や火といった攻撃魔法を繰り出していました。
ベンダーツさんも剣を振るい、中型や小型の魔物の殲滅を行っています。こちらは一切加減のない攻撃でした。
それにしても、この戦いの発端であるゼブルさんは何処へ行ってしまったのでしょうか。
これだけ町が荒れているのに、彼だけ全く姿が見えないのです。
「……もしかして」
私は一つの考えに突き動かされました。そしてその衝動のまま、ヴォルの結界壁に触れてその外に出ます。
勿論目の前では人と魔物の混成部隊がヴォルとベンダーツさんとの戦闘中でした。私はそれを避けるように大きく右に迂回しながら、町へ足を向けます。
「この町の中心って……」
半ば崩壊している町の中は記憶と少し違いました。それでもヴォルと見て回った町を思い浮かべながら、私はただひたすら走ります。
何故あの時結界から出られたのかとか、何故自ら戦いの場に入っていっているのかとかは考えていませんでした。
大きな町長さんのお屋敷前や、賑やかな商店が建ち並ぶ界隈を抜けます。そして一つの建物の前に立ちました。
「あの時何処からでも見えたのは……、教会です」
私は目の前の建物を見上げます。
そうなのです。それ程高い建物でもなく目立つ訳でもないのに、何故だかこの教会は何処からでも見えたのでした。
旅をしてきて気付いたのですが、どの町でも教会はありましたが必ず北側にありました。そういうものなのだと思っていましたが、ここサガルットでは違いました。
「……でもまさか、扉が開いていたりはしませんよね?」
建物の前に立っていても何も始まりません。私はとりあえず、正面入口と思われる閉ざされた扉の前で考えました。
当たり前ですが、周囲に誰もいません。ここまで走って来ておいて何ですが、少しだけ怖くなってきました。
「何で……開いているのでしょうか」
女は度胸──という事でソッと扉を押してみると、音もなく軽々と動く扉に驚きます。逆に、教会っていうのはこういうものなのかもと思ってしまいました。
それでも恐怖心を簡単には打ち消す事が出来ず、僅かな隙間を開いて中を覗いてみます。
「誰も……いませんか?」
「誰ですか?」
恐る恐る掛けた私の声に対し、当然のように返ってきた返答にビクッと肩が跳ねました。
来ないだろうと思って声を掛けたので、その返答自体が非常に驚くべきものだったのです。──お、落ち着きましょう私。
暴れる鼓動に胸を押さえつつ、大きく深呼吸をしました。
「あ、あの……この教会の方ですか?」
少しどもってしまいましたが、私は姿の見えない声の主に更に問い掛けます。
バカげた質問かも知れませんが、今の私にはその問いしか頭に浮かびませんでした。
「いいえ、違いますよ?」
その穏やかな声と共に、薄暗い教会の中から誰かが歩み寄って来ます。
声は男性、しかもかなり年配の方のようでした。でも私は姿の見えないその方に恐怖を覚える事もなく、ただ出てくるのその場で待っていたのです。
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