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第七章
3.異質な気配を纏う男がいた【5】
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「でもあの魔力、使い方によっては最強だぜ。ただ逆に言えば言葉に魔力を乗せているから、自分の言葉を違える事は出来ないだろうな。裏の裏を読まないと……って事は、やりようによっては自滅に追い込めるか」
私に説明してくれながらも、ベンダーツさんは打開策を考えているようでした。
でも何だか、ベンダーツさんなら本当に口で負かしてしまいそうです。
「ゼブルさんは他の魔法を使えないのですかね?」
「さぁ、そこまではな。言葉の魔力を司るのは智の精霊か?それとも音かなぁ、俺は詳しくは知らないけど。でも、攻撃魔法って言うのは大概大きな魔力を必要とするらしいぜ?だから魔力値が高くないと魔法で戦闘なんか出来ない訳。セントラルに登録されている魔力所持者も、実は戦闘要員だって教えたよなぁ?」
「あ、はい」
予め相手の使える魔力が分かっていれば対処出来そうなものですが、そう簡単にはいかないのでした。
ベンダーツさんの問い掛けに関しては、以前クスカムの村に行った時に聞いたので私も知っています。
「だから魔力計測器も、主にヴォルの言った四元素を持つ精霊の力に反応するように出来てるんだよな」
「それって……」
「そ。セグレスト・ゼブル卿の魔力を計測出来なかったって理由にもなるんだよねぇ。魔力値自体の計測も出来るんだけど、貴族は権力を傘に拒否する輩が少なくないんだ。実際に元素魔力を持っていなければ咎められる事がないから、案外魔法省の方では知っていたかもしれないけどな」
何気に明かされるベンダーツさんからの情報でした。こういった内容って、王城秘とかではないのですか。
そして魔法省というのは、魔力所持者を管理している部署のようでした。
「とにかく、そんな感じだな。ただの魔力所持者の情報は俺のところに来ないから、実際のところは分からねぇけど良い読みなんじゃね?」
「そうなんですか……。色々と貴重な情報をありがとうございます」
話を区切ってニッと笑顔を浮かべたベンダーツさんに、私は深く頭を下げて感謝の意を表します。
でも話から、どうやら元素魔力を持っている人の情報は公にされているようでした。──とは言っても一種の危険人物扱いのようで、国の重要機密事項に代わりはないのでしょうけど。
「ヴォルはどうするつもりなのでしょうか」
「さぁな。でも一応相手はそれなりに国の重鎮だし、命を奪う事は不味いよなぁ。そうなると捕縛かって話だけど、これも今の俺達の立場じゃ厳しいんだよ。世知辛い世の中だぜ」
私の問い掛けに、ベンダーツさんは大きく溜め息を吐いて上を見上げました。
そのゼブルさんが本当に犯人だとしても捕まえる事も出来ないとなると、一体どの様な手段が残っているのでしょうか。
しかしながら今の私達は、この結界の中から出る事すら出来ません。出たところで、外はゾンビのようなサガルットの町民の群れ──八方塞がりとは、この様な状態の事かと途方にくれました。
「まぁ、ヴォルなら何とかするでしょう」
「……それ、ヴォルもマークさんに言われていましたよ?お互い信頼されているのですね。羨ましいです」
「な、何それ。俺を誉めても何も出ないよ?そ、そりゃね?主従関係を何年してると思ってんの。これで少しの信頼もないとなったら、俺はマジで泣いちゃうよ」
呟いたベンダーツさんの言葉に羨望の視線を向ければ、思った以上に動揺してくれます。
──ウフフ、照れています?
わざとツンとして見せていますが、ベンダーツさんはいつもより少し頬が赤くなっていました。
本当に、二人の仲が羨ましいです。
私に説明してくれながらも、ベンダーツさんは打開策を考えているようでした。
でも何だか、ベンダーツさんなら本当に口で負かしてしまいそうです。
「ゼブルさんは他の魔法を使えないのですかね?」
「さぁ、そこまではな。言葉の魔力を司るのは智の精霊か?それとも音かなぁ、俺は詳しくは知らないけど。でも、攻撃魔法って言うのは大概大きな魔力を必要とするらしいぜ?だから魔力値が高くないと魔法で戦闘なんか出来ない訳。セントラルに登録されている魔力所持者も、実は戦闘要員だって教えたよなぁ?」
「あ、はい」
予め相手の使える魔力が分かっていれば対処出来そうなものですが、そう簡単にはいかないのでした。
ベンダーツさんの問い掛けに関しては、以前クスカムの村に行った時に聞いたので私も知っています。
「だから魔力計測器も、主にヴォルの言った四元素を持つ精霊の力に反応するように出来てるんだよな」
「それって……」
「そ。セグレスト・ゼブル卿の魔力を計測出来なかったって理由にもなるんだよねぇ。魔力値自体の計測も出来るんだけど、貴族は権力を傘に拒否する輩が少なくないんだ。実際に元素魔力を持っていなければ咎められる事がないから、案外魔法省の方では知っていたかもしれないけどな」
何気に明かされるベンダーツさんからの情報でした。こういった内容って、王城秘とかではないのですか。
そして魔法省というのは、魔力所持者を管理している部署のようでした。
「とにかく、そんな感じだな。ただの魔力所持者の情報は俺のところに来ないから、実際のところは分からねぇけど良い読みなんじゃね?」
「そうなんですか……。色々と貴重な情報をありがとうございます」
話を区切ってニッと笑顔を浮かべたベンダーツさんに、私は深く頭を下げて感謝の意を表します。
でも話から、どうやら元素魔力を持っている人の情報は公にされているようでした。──とは言っても一種の危険人物扱いのようで、国の重要機密事項に代わりはないのでしょうけど。
「ヴォルはどうするつもりなのでしょうか」
「さぁな。でも一応相手はそれなりに国の重鎮だし、命を奪う事は不味いよなぁ。そうなると捕縛かって話だけど、これも今の俺達の立場じゃ厳しいんだよ。世知辛い世の中だぜ」
私の問い掛けに、ベンダーツさんは大きく溜め息を吐いて上を見上げました。
そのゼブルさんが本当に犯人だとしても捕まえる事も出来ないとなると、一体どの様な手段が残っているのでしょうか。
しかしながら今の私達は、この結界の中から出る事すら出来ません。出たところで、外はゾンビのようなサガルットの町民の群れ──八方塞がりとは、この様な状態の事かと途方にくれました。
「まぁ、ヴォルなら何とかするでしょう」
「……それ、ヴォルもマークさんに言われていましたよ?お互い信頼されているのですね。羨ましいです」
「な、何それ。俺を誉めても何も出ないよ?そ、そりゃね?主従関係を何年してると思ってんの。これで少しの信頼もないとなったら、俺はマジで泣いちゃうよ」
呟いたベンダーツさんの言葉に羨望の視線を向ければ、思った以上に動揺してくれます。
──ウフフ、照れています?
わざとツンとして見せていますが、ベンダーツさんはいつもより少し頬が赤くなっていました。
本当に、二人の仲が羨ましいです。
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