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第六章
10.何故だか落ち着かない【3】
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朝──でしょうか。
ま、目蓋が重いです。私は懸命に瞬きをし、腫れているであろう目を見開きました。──はい、ヴォル発見です。
眠っているのか、壁に背をつけたまま動きません。
そして──、いました。ベンダーツさん。
ベッドで横になっていて、そのお腹の辺りが規則的に動いています。寝て……いるのですよね?
ここはヴォルと私に貸し与えられた、町長さんのお屋敷の部屋です。一つのベッドに私、もう一つはベンダーツさん。
──あ、ヴォルの寝ている場所が椅子の上なのは、もしかしなくても私の責任でしょうか。
そもそもちゃんと布団の中に入ってもいなくてベッドの上ですし、なんと着替えすらしていませんでした。あ~……私ってば、何て事をっ!
「メル?」
「は、はいっ」
声を掛けられ、思わず大きな返事をします。──あ、ベンダーツさんは寝ていたのでした。
慌てて口を押さえますが、遅かったです。チラリと見やった先のベンダーツさんは、閉じていた目蓋を開いていました。
煩くてすみません。
「起きたのか、メル」
いつもの優しい声が、項垂れて一人反省中の私に掛けられます。
ヴォルは私が横たわっていたベッドの上に腰掛けました。
「はい……おはようございます、ヴォル。起こしてすみません、ベ……マークさん」
「良いのですよ、メルシャ様。……昨日は申し訳ありませんでした、ヴォルティ様」
私はヴォルに起床の挨拶をした後、ベンダーツさんに謝ります。
でもベンダーツさんは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりと身体を動かしました。──アワアワ、起き上がって大丈夫なのですか?!
慌てる私をよそに、ベンダーツさんがベッド上で正座をされます。そしてヴォルに深く頭を下げました。
「……次はないからな、マーク」
対してヴォルは突き放すように告げます。
そんな事言わなくても──ってヴォルを見たら、いつもの無表情ではありませんでした。
だって、瞳がとても優しいのです。
「とは言え、今日の俺は動けない。お前が食事を作れ」
更なる宣言に私は驚き、ヴォルとベンダーツさんの間を勢い良く視線をさ迷わせました。
ええっ、そうなんですかっ?!ヴォルが動けないってどういう意味です?それにベンダーツさん、昨日凄い怪我をしていなかったですか?
って──今見る限りでは包帯などは見えませんし、薬草の匂いもしませんでした。
「……分かりました。ですが、室内では限度があるかと。申し訳ありませんがヴォルティ様、火と水をご用意頂けると助かります」
戸惑う私をよそに、ヴォルとベンダーツさんの会話は続けられます。──って、本当に作るのですかっ?!
しかも魔法を使ってとの事でした。いつもなら料理に魔力を使う事を酷く嫌がるのにですよ。
「それくらいなら出してやる」
ヴォルも簡単に答えます。──もう良いです。
何だか二人が仲良くやっているようなので、私は私で身支度をする事にしました。とはいえ、さすがにベンダーツさんがいるここで着替えは出来ないですけど。
周囲を見回した私は──今更のように気付きました。この部屋、結界が張ってあります。
何だかいつもの柔らかな虹色シャボン玉的結界とは違うようですが、空気も穏やかですしヴォルの結界に間違いはないと確信しました。
そしてこれなら、室内で魔法の火と水を使っても大丈夫そうです。──なんて安易な考えの私。
でも嫌な感じはしないですし、ベンダーツさんは見たところ傷を負ってはいなさそうですから良いのだと思う事にしました。
ま、目蓋が重いです。私は懸命に瞬きをし、腫れているであろう目を見開きました。──はい、ヴォル発見です。
眠っているのか、壁に背をつけたまま動きません。
そして──、いました。ベンダーツさん。
ベッドで横になっていて、そのお腹の辺りが規則的に動いています。寝て……いるのですよね?
ここはヴォルと私に貸し与えられた、町長さんのお屋敷の部屋です。一つのベッドに私、もう一つはベンダーツさん。
──あ、ヴォルの寝ている場所が椅子の上なのは、もしかしなくても私の責任でしょうか。
そもそもちゃんと布団の中に入ってもいなくてベッドの上ですし、なんと着替えすらしていませんでした。あ~……私ってば、何て事をっ!
「メル?」
「は、はいっ」
声を掛けられ、思わず大きな返事をします。──あ、ベンダーツさんは寝ていたのでした。
慌てて口を押さえますが、遅かったです。チラリと見やった先のベンダーツさんは、閉じていた目蓋を開いていました。
煩くてすみません。
「起きたのか、メル」
いつもの優しい声が、項垂れて一人反省中の私に掛けられます。
ヴォルは私が横たわっていたベッドの上に腰掛けました。
「はい……おはようございます、ヴォル。起こしてすみません、ベ……マークさん」
「良いのですよ、メルシャ様。……昨日は申し訳ありませんでした、ヴォルティ様」
私はヴォルに起床の挨拶をした後、ベンダーツさんに謝ります。
でもベンダーツさんは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりと身体を動かしました。──アワアワ、起き上がって大丈夫なのですか?!
慌てる私をよそに、ベンダーツさんがベッド上で正座をされます。そしてヴォルに深く頭を下げました。
「……次はないからな、マーク」
対してヴォルは突き放すように告げます。
そんな事言わなくても──ってヴォルを見たら、いつもの無表情ではありませんでした。
だって、瞳がとても優しいのです。
「とは言え、今日の俺は動けない。お前が食事を作れ」
更なる宣言に私は驚き、ヴォルとベンダーツさんの間を勢い良く視線をさ迷わせました。
ええっ、そうなんですかっ?!ヴォルが動けないってどういう意味です?それにベンダーツさん、昨日凄い怪我をしていなかったですか?
って──今見る限りでは包帯などは見えませんし、薬草の匂いもしませんでした。
「……分かりました。ですが、室内では限度があるかと。申し訳ありませんがヴォルティ様、火と水をご用意頂けると助かります」
戸惑う私をよそに、ヴォルとベンダーツさんの会話は続けられます。──って、本当に作るのですかっ?!
しかも魔法を使ってとの事でした。いつもなら料理に魔力を使う事を酷く嫌がるのにですよ。
「それくらいなら出してやる」
ヴォルも簡単に答えます。──もう良いです。
何だか二人が仲良くやっているようなので、私は私で身支度をする事にしました。とはいえ、さすがにベンダーツさんがいるここで着替えは出来ないですけど。
周囲を見回した私は──今更のように気付きました。この部屋、結界が張ってあります。
何だかいつもの柔らかな虹色シャボン玉的結界とは違うようですが、空気も穏やかですしヴォルの結界に間違いはないと確信しました。
そしてこれなら、室内で魔法の火と水を使っても大丈夫そうです。──なんて安易な考えの私。
でも嫌な感じはしないですし、ベンダーツさんは見たところ傷を負ってはいなさそうですから良いのだと思う事にしました。
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