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第六章
8.……嫌だったのか?【3】
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無事魔物討伐も終わり、漸く町の中に足を踏み入れた私達でした。
「本当に何から何まで、ありがとうございました」
深く頭を下げるのはこの町の町長さんです。
──え?誰にって、ヴォルとベンダーツさんにですよ。
皆さんは町の中央にある防魔壕に避難していたという事でした。大きな町には必ず一つはあるそうです。
普段は憩いの場として使用されているようなのですが、非常時には対魔物避難場所としての役割がありました。
あちらこちらに焚かれた篝火。照らし出された町の中は半分程が瓦礫の山になっていましたが、火災をヴォルが抑えてくれるのが早かったようで復興が比較的容易だとの事です。
更に新しい魔法壁が出来るまでと、これまたヴォルが土魔法で町を覆ってくれました。
「メルも本当にありがとう。皆が町に入ろうとしているのを貴女が止めてくれなかったら、今以上に被害が増していたわ」
「あ……そんな……、私なんか……」
皆さんの注目がヴォルとベンダーツさんに向けられている中で、ユーニキュアさんは私に謝意を告げてくれます。私は驚きと混乱で、とにかく両掌を拒絶の意味で横に振っていました。
私への感謝なんて必要ないです。だって、何もしてませんから。感謝される理由はありませんでした。本当にごめんなさい。
「メル。皆さんが誉めてくださっているんだ。素直に受け止めなさい。それに、私なんかと言う言葉は許されないぞ。メルはヴォルの妻なんだ。もっと自覚を持つように」
私が自分を卑下していると、少しばかり怖い顔をしたベンダーツさんが口を挟んできました。──はい、すみません。
項垂れる私でしたが、その頭に優しく温かい手が置かれます。
「良く頑張った」
その手の主は当たり前ですがヴォルでした。彼のその一言が、とても私の心と身体に染み渡ります。
嬉しいです。怖かったです。不安でした。そんな様々な感情が一気に浮かんできて更に入り乱れ、自然と涙が溢れます。
「あ~、ヴォルがメルを泣かせた?」
「ち、違いますっ。嬉しくて……ヴォルに誉められて本当に嬉しくて」
茶化すベンダーツさんにヴォルがムッとするのを見てしまい、私は泣き笑いの顔で涙を拭いました。
「まぁ、皆さんもお疲れの事と存じます。町がこの様な状態ですので満足なもてなしも出来ませんが、どうぞ私の家へお越しくださいませ」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、お邪魔させて頂きます」
愛想の良いバージョンのベンダーツさんが町長さんの言葉に頷きます。
久し振りの屋根つきの寝床が確保されたと、ベンダーツさんは喜んでいるようでもありました。
辺りは耳が痛くなる程にシンとした町。
夜も更け、漸く落ち着きを取り戻したようだ。
俺の腕の中にはメル。その安らかな寝息に癒されながらも、この柔らかな身体を貪りたいとも思う。
突き上げるこの感情は欲望。俺にもまともな人間としての欲求があったようだ。だがそれも、彼女以外には感じないが。
質素ながらも精一杯のもてなしをしてくれたサガルットの町民。怪我人や避難した者が多くいる中でも俺とメル、ベンダーツにそれぞれ個室をあてがえてくれた。勿論メルを一人では寝かせないが。
久し振りに独占出来る俺のメル。
左腕をベンダーツに直してもらっておいて助かった。もう予備はないとの事だが、彼女の知らぬ間に腕を傷付けたと知られれば確実に泣かれる。
彼女は疲れからか、もてなしの後半は既に半ば夢の中だった。俺に与えられた部屋に連れ帰って来て抱き寄せると、さほど時間を置く事なく寝入ってしまう。その寝顔はとても安らかだった。
俺は眠れそうもない。大型魔物討伐の後とはいえ、やけに感情が高ぶる。──それでいて至極落ち着く。
不思議なものだ。彼女がここにいるだけで俺の力が増していく気がする。魔力すら満たされるようだ。
俺の──俺だけのメル。
「本当に何から何まで、ありがとうございました」
深く頭を下げるのはこの町の町長さんです。
──え?誰にって、ヴォルとベンダーツさんにですよ。
皆さんは町の中央にある防魔壕に避難していたという事でした。大きな町には必ず一つはあるそうです。
普段は憩いの場として使用されているようなのですが、非常時には対魔物避難場所としての役割がありました。
あちらこちらに焚かれた篝火。照らし出された町の中は半分程が瓦礫の山になっていましたが、火災をヴォルが抑えてくれるのが早かったようで復興が比較的容易だとの事です。
更に新しい魔法壁が出来るまでと、これまたヴォルが土魔法で町を覆ってくれました。
「メルも本当にありがとう。皆が町に入ろうとしているのを貴女が止めてくれなかったら、今以上に被害が増していたわ」
「あ……そんな……、私なんか……」
皆さんの注目がヴォルとベンダーツさんに向けられている中で、ユーニキュアさんは私に謝意を告げてくれます。私は驚きと混乱で、とにかく両掌を拒絶の意味で横に振っていました。
私への感謝なんて必要ないです。だって、何もしてませんから。感謝される理由はありませんでした。本当にごめんなさい。
「メル。皆さんが誉めてくださっているんだ。素直に受け止めなさい。それに、私なんかと言う言葉は許されないぞ。メルはヴォルの妻なんだ。もっと自覚を持つように」
私が自分を卑下していると、少しばかり怖い顔をしたベンダーツさんが口を挟んできました。──はい、すみません。
項垂れる私でしたが、その頭に優しく温かい手が置かれます。
「良く頑張った」
その手の主は当たり前ですがヴォルでした。彼のその一言が、とても私の心と身体に染み渡ります。
嬉しいです。怖かったです。不安でした。そんな様々な感情が一気に浮かんできて更に入り乱れ、自然と涙が溢れます。
「あ~、ヴォルがメルを泣かせた?」
「ち、違いますっ。嬉しくて……ヴォルに誉められて本当に嬉しくて」
茶化すベンダーツさんにヴォルがムッとするのを見てしまい、私は泣き笑いの顔で涙を拭いました。
「まぁ、皆さんもお疲れの事と存じます。町がこの様な状態ですので満足なもてなしも出来ませんが、どうぞ私の家へお越しくださいませ」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、お邪魔させて頂きます」
愛想の良いバージョンのベンダーツさんが町長さんの言葉に頷きます。
久し振りの屋根つきの寝床が確保されたと、ベンダーツさんは喜んでいるようでもありました。
辺りは耳が痛くなる程にシンとした町。
夜も更け、漸く落ち着きを取り戻したようだ。
俺の腕の中にはメル。その安らかな寝息に癒されながらも、この柔らかな身体を貪りたいとも思う。
突き上げるこの感情は欲望。俺にもまともな人間としての欲求があったようだ。だがそれも、彼女以外には感じないが。
質素ながらも精一杯のもてなしをしてくれたサガルットの町民。怪我人や避難した者が多くいる中でも俺とメル、ベンダーツにそれぞれ個室をあてがえてくれた。勿論メルを一人では寝かせないが。
久し振りに独占出来る俺のメル。
左腕をベンダーツに直してもらっておいて助かった。もう予備はないとの事だが、彼女の知らぬ間に腕を傷付けたと知られれば確実に泣かれる。
彼女は疲れからか、もてなしの後半は既に半ば夢の中だった。俺に与えられた部屋に連れ帰って来て抱き寄せると、さほど時間を置く事なく寝入ってしまう。その寝顔はとても安らかだった。
俺は眠れそうもない。大型魔物討伐の後とはいえ、やけに感情が高ぶる。──それでいて至極落ち着く。
不思議なものだ。彼女がここにいるだけで俺の力が増していく気がする。魔力すら満たされるようだ。
俺の──俺だけのメル。
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