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第六章
7.もう使えんな【5】
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真っ暗な視界の中、突然前方で光が弾けました。
「な、何だ?」
「どうしたんだ?」
皆さんが不安に口を開きます。──あ、また光りました。
「あれは……、魔法の光……でしょうか」
誰に告げるとでもなく私は呟きます。光ったのは町の方角ですが、詳しい場所は分かりませんでした。
そして次の瞬間に激しい閃光が走り、一瞬だけ闇が晴れます。町が──見えました。瞬間だけですけど、 町を取り囲む防御壁の奥──町並みが一部分完全に崩れていたのです。
日中は霞がかったようであった為、こんなにもハッキリと見えませんでした。でも先程の町の内部から発せられた閃光で、確かに不格好に削られた町が見えたのです。
明らかに魔物避けの結界が何らかの手段によって崩壊し、町自体の安全が崩れさっていたのでした。
「……あぁ、あれは……っ」
一人の声に皆が振り向きました。
先程閃光が放たれた場所の辺りに炎が立ち上ぼり、大きな影が幾つも見えたのです。幾つもの大きな影、それは明らかに魔物でした。
「魔物が……いる……っ」
愕然としたような声が酷く遠くに聞こえます。
炎に照らし出された魔物は、長い首と山のような身体を持っていました。今まで眠っていて小さく丸まっていたかのように、突然ニョキリと町の中に現れたのです。
立ち上った炎に照らされ、魔物特有の赤い瞳がギラリと光りました。
「ユーニキュアさんがっ」
「あぁっ!」
それぞれが動き出す空気と叫び声に視線をさ迷わせ、茫然としていた私も声をあげます。
事もあろうに、魔物の足元にユーニキュアさんらしき人影がありました。町から抜け出したのか必死に走っているようで、何人かの人々とこちらへ向かっています。──でも魔物は巨大で、ゆっくりと首を伸ばして逃げ惑う人々を見物しているかのようでした。
「ぁ……、ヴォル……」
思わず心の声が溢れます。
お願いです──ヴォル、助けてくださいっ!
心で叫びました。
そんな内心なんて彼に届かないのは分かっていますが、恐怖に竦む私の身体も心もどうにもなりません。彼がいないと──彼でなければ、今のこの状況を引っくり返す事が出来ないのだと本能的に縋ってしまいました。
その時です。不意に結界の一部の空間が歪み、そこを基点にもう一つの真っ黒な結界が形成されていきました。
あ──、これって見た事があります。そう、クスカム脱出後のウマウマさんの時だと思い出しました。
そんな事を思っていると、ゆらりと黒い水面に見えるものの中からベンダーツさんが現れます。続いて、ヴォルも──。
「ヴォ……」
名前を呼ぶ前に、現れたと共に視線を私に移したヴォルに抱き締められました。
きつく胸の内に閉じ込められ、それでも私は苦しみより安堵を覚えたのです。
「待たせた、メル」
「い……え……、ご無事で……良かったです……っ」
溢れる感情に声を詰めながら、それだけ喋るのが精一杯でした。
悲しい訳でもないのに、涙が湧き水のように止めどなく流れます。
「メル……」
掠れた声で名を呼ばれ、目元に彼の顔が寄せられました。
涙を拭うヴォルの唇が心地好いです──って、大勢の人の前でしたっ!私は慌ててヴォルの胸に腕を突き伸ばします。虚を衝かれたのか、思った以上に彼との間に空間が出来ました。
「時と場所をわきまえろって。そんなだからメルに突き飛ばされるんだぞ、ヴォル」
面白そうに告げるベンダーツさんですが、私はそんな余裕がありません。
──突き飛ばしてしまいましたよ、ヴォルを。
「ご、ごめんなさい……っ」
勢い良く頭を下げた私でした。本当にすみません。
「な、何だ?」
「どうしたんだ?」
皆さんが不安に口を開きます。──あ、また光りました。
「あれは……、魔法の光……でしょうか」
誰に告げるとでもなく私は呟きます。光ったのは町の方角ですが、詳しい場所は分かりませんでした。
そして次の瞬間に激しい閃光が走り、一瞬だけ闇が晴れます。町が──見えました。瞬間だけですけど、 町を取り囲む防御壁の奥──町並みが一部分完全に崩れていたのです。
日中は霞がかったようであった為、こんなにもハッキリと見えませんでした。でも先程の町の内部から発せられた閃光で、確かに不格好に削られた町が見えたのです。
明らかに魔物避けの結界が何らかの手段によって崩壊し、町自体の安全が崩れさっていたのでした。
「……あぁ、あれは……っ」
一人の声に皆が振り向きました。
先程閃光が放たれた場所の辺りに炎が立ち上ぼり、大きな影が幾つも見えたのです。幾つもの大きな影、それは明らかに魔物でした。
「魔物が……いる……っ」
愕然としたような声が酷く遠くに聞こえます。
炎に照らし出された魔物は、長い首と山のような身体を持っていました。今まで眠っていて小さく丸まっていたかのように、突然ニョキリと町の中に現れたのです。
立ち上った炎に照らされ、魔物特有の赤い瞳がギラリと光りました。
「ユーニキュアさんがっ」
「あぁっ!」
それぞれが動き出す空気と叫び声に視線をさ迷わせ、茫然としていた私も声をあげます。
事もあろうに、魔物の足元にユーニキュアさんらしき人影がありました。町から抜け出したのか必死に走っているようで、何人かの人々とこちらへ向かっています。──でも魔物は巨大で、ゆっくりと首を伸ばして逃げ惑う人々を見物しているかのようでした。
「ぁ……、ヴォル……」
思わず心の声が溢れます。
お願いです──ヴォル、助けてくださいっ!
心で叫びました。
そんな内心なんて彼に届かないのは分かっていますが、恐怖に竦む私の身体も心もどうにもなりません。彼がいないと──彼でなければ、今のこの状況を引っくり返す事が出来ないのだと本能的に縋ってしまいました。
その時です。不意に結界の一部の空間が歪み、そこを基点にもう一つの真っ黒な結界が形成されていきました。
あ──、これって見た事があります。そう、クスカム脱出後のウマウマさんの時だと思い出しました。
そんな事を思っていると、ゆらりと黒い水面に見えるものの中からベンダーツさんが現れます。続いて、ヴォルも──。
「ヴォ……」
名前を呼ぶ前に、現れたと共に視線を私に移したヴォルに抱き締められました。
きつく胸の内に閉じ込められ、それでも私は苦しみより安堵を覚えたのです。
「待たせた、メル」
「い……え……、ご無事で……良かったです……っ」
溢れる感情に声を詰めながら、それだけ喋るのが精一杯でした。
悲しい訳でもないのに、涙が湧き水のように止めどなく流れます。
「メル……」
掠れた声で名を呼ばれ、目元に彼の顔が寄せられました。
涙を拭うヴォルの唇が心地好いです──って、大勢の人の前でしたっ!私は慌ててヴォルの胸に腕を突き伸ばします。虚を衝かれたのか、思った以上に彼との間に空間が出来ました。
「時と場所をわきまえろって。そんなだからメルに突き飛ばされるんだぞ、ヴォル」
面白そうに告げるベンダーツさんですが、私はそんな余裕がありません。
──突き飛ばしてしまいましたよ、ヴォルを。
「ご、ごめんなさい……っ」
勢い良く頭を下げた私でした。本当にすみません。
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