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第六章
2.説明が面倒だ【2】
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「ネパル、何の冗談だ」
鋭い視線を背後に返すヴォルでした。はい、会議とやらをしていたはずのネパルさんが後ろにいたのです。
しかも前方を塞ぐ人達同様に、何やら不穏な空気を纏っているのでした。
「いやぁ、俺も冗談とかに出来たら良いんだけどな。アンタ等から聞いた話をしたら、どうも集落の雰囲気が悪くなっちまってさぁ」
──どういう事でしょうか。
そんな私の内心の疑問に答えるように、ネパルさんの後ろからもたくさんの人が現れます。
これって、囲まれているなんて優しいものではないですよね。
「結果的にはさ、結界を解除しなくてもいるじゃないかって話になったんだな」
あっけらかんと答えるネパルさんからは、深刻な話ではないような気がしました。
しかしながら、『いる』とは?──何がですか?
「もしかして、精霊?」
ベンダーツさんが訝しげに問い返します。──ぅわ~、周囲の人達から怖い笑みを返されました。
「さっすが、マークは読みが鋭いよな。そう、そう。俺等の結論を言うとさ、ちょっとばかしそれをもらえないかなって事なんだ」
ガハハと大きな口を開けて笑うネパルさんです。──けれども、言っている意味が分かりません。
「アンタもさぁ?そんなにもいるなら、半分くらいくれたって良いだろ?」
今度はヴォルに視線を向け、僅かに歩み寄りました。
何なのでしょうか。この『クッキー分けて』的な会話は。
「精霊の泉にはさ、やっぱり精霊がいてほしいじゃねぇかって事になってよぉ」
「それなら、アンタからちょっとばかし頂こうって事になったのさ」
「これも何かの縁だろ?アンタは俺達に精霊を連れてきてくれたんだよな」
口々に告げられる思いです。私達はこうして一方的にクスカムの方々の意見を聞かされました。
しかも皆さんの笑顔は何処か怖くて、必死さだけは伝わってくるのですが対話にならないのです。
「……何言ってるんだ、この馬鹿共は。好き勝手な事をグダグダと、ふざけてるのか?」
それまで静かに周囲を観察していたベンダーツさんですが、ポツリと溜め息と共に口を開きました。
──ワ、ワッ!?今度はベンダーツさんが黒くなりましたよっ。いえいえ、見た目の色がではないですよ?
「何を?お前、考えてからものを言えや」
「それはこっちの台詞だな。頭数がいれば良いなどと、今時子供でも考えんだろうが」
「うるせぇ!冒険者だか何だか知らねぇが、俺達はこの小さな集落で死に物狂いで生きているんだっ。強い魔力持ちが生まれてもセントラルにとられちまうし、ここはただでさえ魔物が多い土地なんだ。結界を張り直す度、何人も犠牲になるんだぞ!」
ネパルさんの言い分は、少し分からなくもないです。
セントラルのように大きな結界を張っている訳ではない町では、魔物避けの結界の修復にはとても大きな痛手を負うのでした。
更には結界を張り直すには何日も掛かるそうなのです。
「あぁ……アンタを土地に捧げれば、魔力を補充出来てかつ精霊もつくだろ?なぁ魔剣士さんよぉ、この集落の人柱になってくれよぉ」
ネパルさんの後ろから表れた年配の男性が告げました。人々の視線は全てがヴォルに向けられています。
こ──、こんなのってないです。何故皆、ヴォルを道具のように扱おうとするのです?これじゃあ、セントラルと何も変わらないではないですか。
「そうすればその女の命は助けるって」
別の男性から発せられた、とどめの一言でした。途端にピシッと何かが割れた様な音がします。
ザワリと空気が波打ったような気がしました。
鋭い視線を背後に返すヴォルでした。はい、会議とやらをしていたはずのネパルさんが後ろにいたのです。
しかも前方を塞ぐ人達同様に、何やら不穏な空気を纏っているのでした。
「いやぁ、俺も冗談とかに出来たら良いんだけどな。アンタ等から聞いた話をしたら、どうも集落の雰囲気が悪くなっちまってさぁ」
──どういう事でしょうか。
そんな私の内心の疑問に答えるように、ネパルさんの後ろからもたくさんの人が現れます。
これって、囲まれているなんて優しいものではないですよね。
「結果的にはさ、結界を解除しなくてもいるじゃないかって話になったんだな」
あっけらかんと答えるネパルさんからは、深刻な話ではないような気がしました。
しかしながら、『いる』とは?──何がですか?
「もしかして、精霊?」
ベンダーツさんが訝しげに問い返します。──ぅわ~、周囲の人達から怖い笑みを返されました。
「さっすが、マークは読みが鋭いよな。そう、そう。俺等の結論を言うとさ、ちょっとばかしそれをもらえないかなって事なんだ」
ガハハと大きな口を開けて笑うネパルさんです。──けれども、言っている意味が分かりません。
「アンタもさぁ?そんなにもいるなら、半分くらいくれたって良いだろ?」
今度はヴォルに視線を向け、僅かに歩み寄りました。
何なのでしょうか。この『クッキー分けて』的な会話は。
「精霊の泉にはさ、やっぱり精霊がいてほしいじゃねぇかって事になってよぉ」
「それなら、アンタからちょっとばかし頂こうって事になったのさ」
「これも何かの縁だろ?アンタは俺達に精霊を連れてきてくれたんだよな」
口々に告げられる思いです。私達はこうして一方的にクスカムの方々の意見を聞かされました。
しかも皆さんの笑顔は何処か怖くて、必死さだけは伝わってくるのですが対話にならないのです。
「……何言ってるんだ、この馬鹿共は。好き勝手な事をグダグダと、ふざけてるのか?」
それまで静かに周囲を観察していたベンダーツさんですが、ポツリと溜め息と共に口を開きました。
──ワ、ワッ!?今度はベンダーツさんが黒くなりましたよっ。いえいえ、見た目の色がではないですよ?
「何を?お前、考えてからものを言えや」
「それはこっちの台詞だな。頭数がいれば良いなどと、今時子供でも考えんだろうが」
「うるせぇ!冒険者だか何だか知らねぇが、俺達はこの小さな集落で死に物狂いで生きているんだっ。強い魔力持ちが生まれてもセントラルにとられちまうし、ここはただでさえ魔物が多い土地なんだ。結界を張り直す度、何人も犠牲になるんだぞ!」
ネパルさんの言い分は、少し分からなくもないです。
セントラルのように大きな結界を張っている訳ではない町では、魔物避けの結界の修復にはとても大きな痛手を負うのでした。
更には結界を張り直すには何日も掛かるそうなのです。
「あぁ……アンタを土地に捧げれば、魔力を補充出来てかつ精霊もつくだろ?なぁ魔剣士さんよぉ、この集落の人柱になってくれよぉ」
ネパルさんの後ろから表れた年配の男性が告げました。人々の視線は全てがヴォルに向けられています。
こ──、こんなのってないです。何故皆、ヴォルを道具のように扱おうとするのです?これじゃあ、セントラルと何も変わらないではないですか。
「そうすればその女の命は助けるって」
別の男性から発せられた、とどめの一言でした。途端にピシッと何かが割れた様な音がします。
ザワリと空気が波打ったような気がしました。
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