「結婚しよう」

まひる

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第六章

1.精霊の泉だろ【2】

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「セントラルから来る徴集兵は、潜在魔力計測装置を所持しているのか」

「あぁ、そう……そんな名前の大仰おおぎょうなやつだったさ。何処から見つけたんだってくらい大きな魔法石がついている箱だったな。で、ここは所持者が多いからボーダーラインを作ってるんだとさ」

 ヴォルの質問に答えたネパルさんは、自嘲的な笑みで振り返りました。
 区切りの値がどれくらいなのかは分かりませんが、本人のやる気は必要ないのでしょうか。──というか、集められた魔力所持者達をいきなり魔法石にしたりしませんよね?

「……初めて聞いたね。ボーダーライン?何それ、ふざけてる」

「魔力持ちは片っ端から集められていると思っていたが」

「あ~……一応のように魔力持ちとして登録はされるけどさ。ただそれだけさ。使えない奴に食わす飯はないんだろ?」

 ベンダーツさんは不快げに眉根を寄せ、ヴォルは考えるように顎に手を当てています。苦笑を返しているネパルさんは、そのまま首をすくめるだけでした。
 しかしながら登録されるのですか。──普通の人よりも強い力を持っているには変わらないから、ですかね?

 私はこの話、全くセントラルの方々の意向が納得出来ません。ヴォルのような精霊さんが共にあると言うだけで将来を決められてしまう人もいるのです。──選別なんて、卑怯ですよ。同じ人なのですよ?

「いざ有事が起きた場合の戦闘員にでもする気か。魔法省は考える事がいちいちかんに障る」

 ヴォルは良い思いを受けていないようので、こういった待遇に反感を覚えるようでした。
 いえ、私も同感です。

「仕方がないだろ?非能力者は対魔物戦に不向きなんだから。まれに俺みたいな、結構強い剣の使い手もいるけどさ」

「マーク煩い。自分で言うな」

「本当の事だろ?俺、剣だけならヴォルより強いし」

 自信に満ちたベンダーツさんの独白。──そう言えば以前に剣の師匠だと聞きました。
 ここに来るまでにベンダーツさんが見せてくれた戦闘では、身体の線が細いのに剣の腕は素晴らしいものがあると素人の私でも分かります。何処からあれ程に剣を振るう力が出てくるのでしょうか。

「問題ない。俺は魔法を使う。戦うか?」

「良いよ、メルが怒らなければね」

「や、やめて下さいねっ。仲良くして下さいよ、二人共」

 今にも掴み掛かりそうな視線を合わす二人を止める私は、心の中で半分泣いていました。──本当にこうなるとすぐ喧嘩を始めるのですから。

「ヴォル、だっけ?アンタはかなりの魔力を持っているようだけど、良く魔法省が自由にさせてくれてるよな。精霊も浮遊しているし。それって稀少だろ?」

 突然、ネパルさんの問い掛けにドキリとします。なかなか鋭い指摘でした。

「あ~……そりゃ戦闘主体の冒険者も必要だからでしょ、たぶん。魔力持ちが全てセントラルに囲われたら、誰が世界を魔物の手から守るって言うのさ?まぁ、国自体は自国が良ければ問題ないんだろうけど」

「あぁ、それもそうか。ただ、精霊つき自体が珍しいからさ。このクスカムでももう何年も出てないって聞いてるし」

 ネパルさんに納得して頂いたようでホッとします。
 色々と追求されると、私なら確実にボロが出ますね。ここでは私は貝になって、ベンダーツさんに全てを任せましょう。

「ところで、精霊の泉はまだ?」

「あぁ、もうすぐだ。何せよ、集落から離れているからこその綺麗さだからな。一度は泉のそばに集落を移そうか、なんて言う案も出たくらいだけどさ」

「移動させなかったのか」

「あぁ、環境破壊だって騒ぐ奴等がいてさ」

 ネパルさんは少し残念そうでしたが、私はそれで良かったのだと思いました。
 いくら綺麗にと心掛けても、少なからず心無い人はいるのですから。身近すぎる裕福は見えなくなるものです。
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