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第五章
7.俺の腕を拒否するのか【3】
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「ではとりあえず、グレセシオ大陸内で散策致しますか?ヴォルティ様のリハビリにもなりますし、マグドリア大陸では見つけられなかったのですよね」
ベンダーツさんが地図を広げながらヴォルに問い掛けてきます。
まだここはお城から少し離れただけなので、結界の影響が残っているらしく魔物がいませんでした。
「そうだな。魔物被害の報告が過多な地域が限られている訳ではない。巡ってしらみ潰しに当たるしかないだろう」
今度は長い旅になりそうです。
ヴォルとベンダーツさんが今後の方針を話し合っていましたが、地理に疎い私の出る幕ではありませんでした。──いえ、お城で勉強はしたのですよ?しかし結果は『一応は』、というレベルです。
まぁ私としては、お城の中でおしとやかに過ごすのは苦痛でした。危険が有るとはいえ、ヴォルと共に色々な地域を巡るのは楽しいです。
「しかし、メルシャ様を本当に連れてくるとは思いませんでした」
ベンダーツさんが呟きました。
若干呆れが見えるのは気のせいでしょうか。
「城の外の魔物も中のそれと変わらないだろう」
ヴォルがそれに返し、何故か私の頭を撫でてきます。
──ん?頭を撫でられるのは気持ちが良いので構わないのですが、お城の中には魔物はいませんよ?
些細な嫌がらせをしてくる人達はいましたけど。
「確かに。中の方が知恵が回る分、質が悪いでしょうね」
「だが俺はお前が来るとは思わなかった」
「私はヴォルティ様と主従関係を結んでいますからね。それに前回のご不在の間は、かなり苦痛でしたよ」
苦い顔を見せるベンダーツさんでした。それに対して、ヴォルはフッと楽しそうに笑います。
「あの、どうして苦痛を感じるのですか?」
二人だけで分かっている会話を続けられて、私は首を傾げるばかりでした。
私に分かるように話して下さいよ。まさか寂しいとかではないですよね?
「……主従関係を結んだ者同士は、その性質上長期的に離れる事が出来ないのです。そして一定距離を離れると罰則として魔力的な重圧が掛かります。例えるなら、大人一人を背負っている感じでしょうか。次いで、主従のリングから微量の電流が流れます。こちらは針で刺されている感覚ですね」
苦い顔で説明をしてくれるベンダーツさんです。淡々と語られていますけど、実際にそれらの被害を受けていたのでした。
ぅわ~──何ですか、その拷問的アイテム。確かに主従が離れていては意味がありませんけど、もっと違った方法はなかったものですかね。
「どれも死ぬ事はありませんが、あれは私に対する嫌がらせですよね」
「父上の承認を得たのに、お前がしつこく反対をするからだ。俺は貴族の女は好かんと言った」
そうして二人で睨み合いが始まります。互いに一歩も引けない何かがあるようでした。
──な、何やら色々とあったようです。だからこそ初めてベンダーツさんと会った時、私は物凄く敵視されたのでしょう。
「死ぬ程ではないのだ。問題ないだろう」
「それはヴォルティ様にリングの影響はないですからね。でもだからこそ、今度こそはついていきます。実際に私は魔物と戦う野蛮な趣味はありませんが」
フンと鼻を鳴らす勢いで言い捨てるヴォルです。そして新たな事実が公開されました。
どうやら拷問的な処置が下されるのは、従者側だけのようですね。
「お前なら問題ない。魔力を持っていないだけで、剣術は俺より上だからな」
「飲み込みが早いヴォルティ様に言われても嬉しくありません」
その言葉に振り返れば、小さく口角を上げたヴォルが見えます。ベンダーツさんも口では色々言い返していますが、その表情は何処か穏やかでした。
「ヴォルの剣術も、ベンダーツさんが師匠さんなのですか?」
「そうだ」
本当にベンダーツさんは色々と物知りのようです。
結局、ヴォルを育てたのがベンダーツさんと言っても過言ではなさそうですね。
ベンダーツさんが地図を広げながらヴォルに問い掛けてきます。
まだここはお城から少し離れただけなので、結界の影響が残っているらしく魔物がいませんでした。
「そうだな。魔物被害の報告が過多な地域が限られている訳ではない。巡ってしらみ潰しに当たるしかないだろう」
今度は長い旅になりそうです。
ヴォルとベンダーツさんが今後の方針を話し合っていましたが、地理に疎い私の出る幕ではありませんでした。──いえ、お城で勉強はしたのですよ?しかし結果は『一応は』、というレベルです。
まぁ私としては、お城の中でおしとやかに過ごすのは苦痛でした。危険が有るとはいえ、ヴォルと共に色々な地域を巡るのは楽しいです。
「しかし、メルシャ様を本当に連れてくるとは思いませんでした」
ベンダーツさんが呟きました。
若干呆れが見えるのは気のせいでしょうか。
「城の外の魔物も中のそれと変わらないだろう」
ヴォルがそれに返し、何故か私の頭を撫でてきます。
──ん?頭を撫でられるのは気持ちが良いので構わないのですが、お城の中には魔物はいませんよ?
些細な嫌がらせをしてくる人達はいましたけど。
「確かに。中の方が知恵が回る分、質が悪いでしょうね」
「だが俺はお前が来るとは思わなかった」
「私はヴォルティ様と主従関係を結んでいますからね。それに前回のご不在の間は、かなり苦痛でしたよ」
苦い顔を見せるベンダーツさんでした。それに対して、ヴォルはフッと楽しそうに笑います。
「あの、どうして苦痛を感じるのですか?」
二人だけで分かっている会話を続けられて、私は首を傾げるばかりでした。
私に分かるように話して下さいよ。まさか寂しいとかではないですよね?
「……主従関係を結んだ者同士は、その性質上長期的に離れる事が出来ないのです。そして一定距離を離れると罰則として魔力的な重圧が掛かります。例えるなら、大人一人を背負っている感じでしょうか。次いで、主従のリングから微量の電流が流れます。こちらは針で刺されている感覚ですね」
苦い顔で説明をしてくれるベンダーツさんです。淡々と語られていますけど、実際にそれらの被害を受けていたのでした。
ぅわ~──何ですか、その拷問的アイテム。確かに主従が離れていては意味がありませんけど、もっと違った方法はなかったものですかね。
「どれも死ぬ事はありませんが、あれは私に対する嫌がらせですよね」
「父上の承認を得たのに、お前がしつこく反対をするからだ。俺は貴族の女は好かんと言った」
そうして二人で睨み合いが始まります。互いに一歩も引けない何かがあるようでした。
──な、何やら色々とあったようです。だからこそ初めてベンダーツさんと会った時、私は物凄く敵視されたのでしょう。
「死ぬ程ではないのだ。問題ないだろう」
「それはヴォルティ様にリングの影響はないですからね。でもだからこそ、今度こそはついていきます。実際に私は魔物と戦う野蛮な趣味はありませんが」
フンと鼻を鳴らす勢いで言い捨てるヴォルです。そして新たな事実が公開されました。
どうやら拷問的な処置が下されるのは、従者側だけのようですね。
「お前なら問題ない。魔力を持っていないだけで、剣術は俺より上だからな」
「飲み込みが早いヴォルティ様に言われても嬉しくありません」
その言葉に振り返れば、小さく口角を上げたヴォルが見えます。ベンダーツさんも口では色々言い返していますが、その表情は何処か穏やかでした。
「ヴォルの剣術も、ベンダーツさんが師匠さんなのですか?」
「そうだ」
本当にベンダーツさんは色々と物知りのようです。
結局、ヴォルを育てたのがベンダーツさんと言っても過言ではなさそうですね。
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