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第五章
4.お前が一番【4】
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「でも、この城の魔法は解けないからね」
「何故だ」
「いくら前世の記憶を持っている僕でも、これだけ広範囲の魔法には条件付きでないと無理だよ。兄さんみたいに精霊つきでもないんだから」
自信満々に言い放つペルさんに、ヴォルの眉根が寄せられます。
──というか、条件?魔法に一定の決まりがあるのは何となく分かりますが、それを使用者が決められるのでしょうか。
「まさか……」
ヴォルはそれが何か分かったのか、無表情の仮面が取れて驚きに目を見開いていました。
これは確実に良い事ではないですよね。
「そ」
「魔力を賭けたのか」
ヴォルが気付いた事に気を良くしたペルさんは、再びニッコリ笑顔です。
ん~?私でも魔法に魔力が必要なのは分かります。何故そんなにもヴォルが驚く事があるのですかね。
「彼女さん、分かってないでしょ。兄さんの言っている事は僕の魔力……、つまりは命って意味ね」
「えっ?!どうして魔力と命が同一視されているのですか?」
話を振られついでに、思わず口を挟んで──睨まれました。
「兄さん、彼女への教育がなっていないよ。兄さんの彼女なら、もっと魔法に関する知識を深めてもらわなきゃ」
ペルさんは呆れたように溜め息を吐きます。
私の存在は忘れられていたと思っていましたが、知識不足に対する不満故の睨みだったのですね。す、すみません。
「メルは今のままで良い」
ですがヴォルはフワリと私の方を向いて微笑み、その手を伸ばしました。同時に結界のシャボン玉が軽い音と共に弾けます。
そうでした。すっかり忘れていましたが、まだヴォルの結界に包まれていたのでした。
「全く、兄さんは。のめり込むのも大概にしておかないと、本当に付け込まれるよ?」
「煩い」
今度はヴォルに対してのダメ出しです。
ヴォルはチラリとペルさんへ視線をやりますが、すぐ私に向き直って歩み寄って来ました。ただ見上げるだけの私でしたが、自然と彼の胸に抱き止められます。
「ヴォル?」
すぐ近くにあるヴォルの表情は先程までの冷たい彼とは違い、いつもの温かさを感じました。
言葉がなくとも安心します。
「はぁ…………。メルシャさん、良いかい?魔力と命は一続きなの。魔力の枯渇は命を削るんだよ」
「命を?魔物ではないのに……?」
ペルさんに大きな溜め息つきで説明されて驚きましたが、話の内容が深すぎてついていけません。
私は薬草学はベンダーツさんから教わっていますが、魔力がない事もあって魔法に関してはさっぱりなのでした。
「魔物は生命の核自体が魔力で形成されているからね。人間は魔物とは違うけど、自然界から補給するのとは別に命が魔力を生み出してるんだ。だから肉体へ溜めた魔力が枯れて来れば、自然と命からそれを作ろうとする。……するとどうなると思う?」
「命が……減る?」
「そう、そう。命から魔力を生み出すのは意識的じゃないから止める事は出来ない。体力が無くなるれば休みたいと思うのと同じで、魔力が尽きて来れば命を……命の力を使って回復させようとするんだ。勿論魔法を使うのをやめれば、その時点で通常貯蓄に回るんだけどね」
親切にもペルさんが魔法学の基礎を教えてくれます。
ヴォルの研究室で少しだけお手伝いした事はありますが、彼は元々口数が多い方ではないので説明は簡潔でした。
それでペルさんの説明を聞いて思いましたが、魔力を使う事自体が危険なのではないですか?そうでなくてもヴォルは、魔力が溢れて出ているというのに。
「何故だ」
「いくら前世の記憶を持っている僕でも、これだけ広範囲の魔法には条件付きでないと無理だよ。兄さんみたいに精霊つきでもないんだから」
自信満々に言い放つペルさんに、ヴォルの眉根が寄せられます。
──というか、条件?魔法に一定の決まりがあるのは何となく分かりますが、それを使用者が決められるのでしょうか。
「まさか……」
ヴォルはそれが何か分かったのか、無表情の仮面が取れて驚きに目を見開いていました。
これは確実に良い事ではないですよね。
「そ」
「魔力を賭けたのか」
ヴォルが気付いた事に気を良くしたペルさんは、再びニッコリ笑顔です。
ん~?私でも魔法に魔力が必要なのは分かります。何故そんなにもヴォルが驚く事があるのですかね。
「彼女さん、分かってないでしょ。兄さんの言っている事は僕の魔力……、つまりは命って意味ね」
「えっ?!どうして魔力と命が同一視されているのですか?」
話を振られついでに、思わず口を挟んで──睨まれました。
「兄さん、彼女への教育がなっていないよ。兄さんの彼女なら、もっと魔法に関する知識を深めてもらわなきゃ」
ペルさんは呆れたように溜め息を吐きます。
私の存在は忘れられていたと思っていましたが、知識不足に対する不満故の睨みだったのですね。す、すみません。
「メルは今のままで良い」
ですがヴォルはフワリと私の方を向いて微笑み、その手を伸ばしました。同時に結界のシャボン玉が軽い音と共に弾けます。
そうでした。すっかり忘れていましたが、まだヴォルの結界に包まれていたのでした。
「全く、兄さんは。のめり込むのも大概にしておかないと、本当に付け込まれるよ?」
「煩い」
今度はヴォルに対してのダメ出しです。
ヴォルはチラリとペルさんへ視線をやりますが、すぐ私に向き直って歩み寄って来ました。ただ見上げるだけの私でしたが、自然と彼の胸に抱き止められます。
「ヴォル?」
すぐ近くにあるヴォルの表情は先程までの冷たい彼とは違い、いつもの温かさを感じました。
言葉がなくとも安心します。
「はぁ…………。メルシャさん、良いかい?魔力と命は一続きなの。魔力の枯渇は命を削るんだよ」
「命を?魔物ではないのに……?」
ペルさんに大きな溜め息つきで説明されて驚きましたが、話の内容が深すぎてついていけません。
私は薬草学はベンダーツさんから教わっていますが、魔力がない事もあって魔法に関してはさっぱりなのでした。
「魔物は生命の核自体が魔力で形成されているからね。人間は魔物とは違うけど、自然界から補給するのとは別に命が魔力を生み出してるんだ。だから肉体へ溜めた魔力が枯れて来れば、自然と命からそれを作ろうとする。……するとどうなると思う?」
「命が……減る?」
「そう、そう。命から魔力を生み出すのは意識的じゃないから止める事は出来ない。体力が無くなるれば休みたいと思うのと同じで、魔力が尽きて来れば命を……命の力を使って回復させようとするんだ。勿論魔法を使うのをやめれば、その時点で通常貯蓄に回るんだけどね」
親切にもペルさんが魔法学の基礎を教えてくれます。
ヴォルの研究室で少しだけお手伝いした事はありますが、彼は元々口数が多い方ではないので説明は簡潔でした。
それでペルさんの説明を聞いて思いましたが、魔力を使う事自体が危険なのではないですか?そうでなくてもヴォルは、魔力が溢れて出ているというのに。
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