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第五章
3.何故お前がここにいる【5】
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徐々にハッキリとしてくる意識が、今の私を見つめ直します。──私、何をしています?
自分からヴォルに抱き着いて、そして自分から唇を重ねて……。
「あ~あ、見せ付けてくれるねぇ」
ペルさんの声で一気に現実に戻りました。ですがヴォルは放してくれません。
──それどころか、し、舌が入ってきてっ。
「……ん……っ……、ふ……っ」
更に深くなるキスに甘い呼気が漏れます。
──み、見られてますって!
何とか理性を総動員して、呼吸困難から霞がかかる意識の中でヴォルの胸を叩きました。
「……仕方ない」
思い切り不満そうな表情で唇を放したヴォルは、ペロリと自らの口端を舐めます。なんて妖艶な──。
私はそれを見てゾクリと背筋が震えました。
「まさか、それ程までに執着しているとはね。彼女は兄さんのアキレス腱であると同時に、引き金でもある訳だ。良いね、ゾクゾクするよ」
先程と同じ位置で宙に停滞していたペルさんは、黒い炎を漂わせながらゆっくりと着地します。
笑顔がこれ程怖いって、どうかと思いますけど。
「お仕置きだ、ペルニギュート。メルを傷付けたその右手は無くなると思え」
感情を削ぎ落としたような声。
驚いて見上げた先にあるヴォルは、ある意味見慣れた無表情でした。
──そう、最近ではあまり見なくなった顔です。って言うか私、傷なんかついてませんって。あ……、もしかしてこのちょびっとの擦り傷ですか?!
私の右手の甲に、爪の大きさくらいの擦り傷を見つけたのですが──良く分かりましたね、ヴォル。
「僕の右手?……冗談でしょ、兄さん。そんな事をしたら可愛そうでしょ、僕が。異母兄弟だからといえ、あんなにも可愛がってくれた僕の手を……落とすって?」
本気なのか冗談なのかが区別がつかないペルさんの笑顔一杯の表情は、この何もない空間にとても違和感がありました。
ここは白い壁と黒い床と砂の山が広がっている、ただ広いだけの地下になってしまったのです。
「メルを傷付けるものは、何であっても許さない」
先程のダメージを全く感じさせない動きで立ち上がると、ヴォルは私を背に庇うようにペルさんに向き直りました。
──ぅわ~、怖いですよヴォル。無表情でそんな事を言ったら、迫力倍増ではないですか。
「Kono kuukan wo kotei suru.Kanojyo no syuui wo kakuri suru.」
「へぇ、この地下自体も守ろうって?余裕だねぇ、兄さん。僕の力を分かってやってるんだよね?」
「闇の魔力。生命の精霊を消滅させて生まれた力」
「……分かってるじゃないの。でもこれ、僕の魂に刻み込まれた魔力なんだよねぇ。身体が魔力対応じゃなかったから使えなかっただけで、魔力を浸透させるのに十年掛かっちゃったよ。だからさぁ……もし今の僕の身体がダメになっても、次の身体で世界を滅ぼすだけなんだけどねぇ」
生まれ変わりを利用するなんて──、私の常識の中では有り得ない事です。
それに、前回の生命の精霊さんを消してしまったのが彼──の前世?だなんて。
とても愉快な事のように笑うペルさんでした。
魂に刻まれる力というものは分かりませんが、彼はこの世界をどうあっても滅ぼすつもりのようです。
確かにおかしな事や府に落ちない事がたくさんある世の中ですが、個人的な一存で壊して良い筈がありません。
自分からヴォルに抱き着いて、そして自分から唇を重ねて……。
「あ~あ、見せ付けてくれるねぇ」
ペルさんの声で一気に現実に戻りました。ですがヴォルは放してくれません。
──それどころか、し、舌が入ってきてっ。
「……ん……っ……、ふ……っ」
更に深くなるキスに甘い呼気が漏れます。
──み、見られてますって!
何とか理性を総動員して、呼吸困難から霞がかかる意識の中でヴォルの胸を叩きました。
「……仕方ない」
思い切り不満そうな表情で唇を放したヴォルは、ペロリと自らの口端を舐めます。なんて妖艶な──。
私はそれを見てゾクリと背筋が震えました。
「まさか、それ程までに執着しているとはね。彼女は兄さんのアキレス腱であると同時に、引き金でもある訳だ。良いね、ゾクゾクするよ」
先程と同じ位置で宙に停滞していたペルさんは、黒い炎を漂わせながらゆっくりと着地します。
笑顔がこれ程怖いって、どうかと思いますけど。
「お仕置きだ、ペルニギュート。メルを傷付けたその右手は無くなると思え」
感情を削ぎ落としたような声。
驚いて見上げた先にあるヴォルは、ある意味見慣れた無表情でした。
──そう、最近ではあまり見なくなった顔です。って言うか私、傷なんかついてませんって。あ……、もしかしてこのちょびっとの擦り傷ですか?!
私の右手の甲に、爪の大きさくらいの擦り傷を見つけたのですが──良く分かりましたね、ヴォル。
「僕の右手?……冗談でしょ、兄さん。そんな事をしたら可愛そうでしょ、僕が。異母兄弟だからといえ、あんなにも可愛がってくれた僕の手を……落とすって?」
本気なのか冗談なのかが区別がつかないペルさんの笑顔一杯の表情は、この何もない空間にとても違和感がありました。
ここは白い壁と黒い床と砂の山が広がっている、ただ広いだけの地下になってしまったのです。
「メルを傷付けるものは、何であっても許さない」
先程のダメージを全く感じさせない動きで立ち上がると、ヴォルは私を背に庇うようにペルさんに向き直りました。
──ぅわ~、怖いですよヴォル。無表情でそんな事を言ったら、迫力倍増ではないですか。
「Kono kuukan wo kotei suru.Kanojyo no syuui wo kakuri suru.」
「へぇ、この地下自体も守ろうって?余裕だねぇ、兄さん。僕の力を分かってやってるんだよね?」
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「……分かってるじゃないの。でもこれ、僕の魂に刻み込まれた魔力なんだよねぇ。身体が魔力対応じゃなかったから使えなかっただけで、魔力を浸透させるのに十年掛かっちゃったよ。だからさぁ……もし今の僕の身体がダメになっても、次の身体で世界を滅ぼすだけなんだけどねぇ」
生まれ変わりを利用するなんて──、私の常識の中では有り得ない事です。
それに、前回の生命の精霊さんを消してしまったのが彼──の前世?だなんて。
とても愉快な事のように笑うペルさんでした。
魂に刻まれる力というものは分かりませんが、彼はこの世界をどうあっても滅ぼすつもりのようです。
確かにおかしな事や府に落ちない事がたくさんある世の中ですが、個人的な一存で壊して良い筈がありません。
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