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第五章
1.俺だけの【5】
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その次に目覚めたのは夜でした。完全に昼夜逆転してますね。
私は布団の中でモゾモゾと動きます。──あれ?
振り向いて確認してみましたが、やっぱりまだヴォルは寝ていました。
いつも私が目覚めた時に起きているヴォルなのです。少し動くだけで『おはよう』と挨拶が返ってくる筈なのに、今の彼は目を開きもしませんでした。
だんだんと闇に慣れてきた私の目に、ヴォルの綺麗な顔が映ります。でも少しだけ眉にシワを寄せ、冷たい汗を浮かべていました。──そして顔色が悪いです。
それもそうですよね。頭を切って、あんなに血が出て……。
私は無意識のうちに包帯を巻いているヴォルの頭を抱くように包み込んでいました。あ、勿論加減はしてますよ。──たぶん。それに痛かったら起きますよね?
精霊さん──ヴォルの痛みが少しでも和らぐように、貴方の力を貸してください。
気付けば一心にお願いしていました。
私は魔法なんて使えません。そう言えば、この世界に回復魔法すらないのでしたよね。
でも──、これはどういう事でしょう。仄かに瞼に感じた光に目を開けると、何故か蒼白く光っています。──え?何がって、ヴォルがですよ。
どちらかと言うと、頭を中心に──ですかね。
私は良く分からないながらも、これが良い現象なのだと感じました。だって嫌な感じはしないですし、そもそも光が温かいですから。
どれくらいそれが続いていたのか、暫くすると光が徐々に消えていきました。
終わり──なのでしょうか。元々日が暮れている事もあり、光が消えた後の今は殆ど周りが見えませんでした。
「……メル?」
「は、はいっ?!」
突然呼び掛けられ、慌ててヴォルから離れます。だって私、ヴォルの頭を胸に抱いていましたから。
「だ、大丈夫ですか?」
「あぁ……。何だか凄く気分が良い」
「良かった……」
ヴォルの返答にホッとしました。──と同時に、空気の読めない私のお腹が鳴きます。
本当にいつもいつもすみません。
「……ごめんなさい」
恥ずかしくなって顔を伏せました。
ヴォルはククッと笑っています。
「何故謝罪する。問題ない。俺も空腹だ。何かないか見に行くか」
「……はい」
笑みを浮かべたヴォルに私も微笑み返し、二人してベッドから降りました。
どうやらヴォルは本当に調子が良いようで、ふらつく事なく足取りは確かなようです。
「…………」
ですが部屋の扉の前で、突然進む足が止められました。
どうかしましたか?と見上げれば、ヴォルは空中に視線を向けて立ち止まっています。──これ、精霊さんとお話ししているのですかね?
「メル、ありがとう」
「はい?」
視線を私に移したヴォルは、ふわりと微笑みます。
そして続けられた突然のお礼に、私は意味が分からないで首を傾げました。
「精霊に願い事をしてくれただろう」
「え……はい。えっと……、それがどうかしましたか?」
そんな事まで分かるのかと不思議に思いましたが、フワリと頭を撫でられるその態度と表情からヴォルが喜んでいるのは分かります。
でも何故、それが私へのお礼に繋がるのでしょうか。
私は布団の中でモゾモゾと動きます。──あれ?
振り向いて確認してみましたが、やっぱりまだヴォルは寝ていました。
いつも私が目覚めた時に起きているヴォルなのです。少し動くだけで『おはよう』と挨拶が返ってくる筈なのに、今の彼は目を開きもしませんでした。
だんだんと闇に慣れてきた私の目に、ヴォルの綺麗な顔が映ります。でも少しだけ眉にシワを寄せ、冷たい汗を浮かべていました。──そして顔色が悪いです。
それもそうですよね。頭を切って、あんなに血が出て……。
私は無意識のうちに包帯を巻いているヴォルの頭を抱くように包み込んでいました。あ、勿論加減はしてますよ。──たぶん。それに痛かったら起きますよね?
精霊さん──ヴォルの痛みが少しでも和らぐように、貴方の力を貸してください。
気付けば一心にお願いしていました。
私は魔法なんて使えません。そう言えば、この世界に回復魔法すらないのでしたよね。
でも──、これはどういう事でしょう。仄かに瞼に感じた光に目を開けると、何故か蒼白く光っています。──え?何がって、ヴォルがですよ。
どちらかと言うと、頭を中心に──ですかね。
私は良く分からないながらも、これが良い現象なのだと感じました。だって嫌な感じはしないですし、そもそも光が温かいですから。
どれくらいそれが続いていたのか、暫くすると光が徐々に消えていきました。
終わり──なのでしょうか。元々日が暮れている事もあり、光が消えた後の今は殆ど周りが見えませんでした。
「……メル?」
「は、はいっ?!」
突然呼び掛けられ、慌ててヴォルから離れます。だって私、ヴォルの頭を胸に抱いていましたから。
「だ、大丈夫ですか?」
「あぁ……。何だか凄く気分が良い」
「良かった……」
ヴォルの返答にホッとしました。──と同時に、空気の読めない私のお腹が鳴きます。
本当にいつもいつもすみません。
「……ごめんなさい」
恥ずかしくなって顔を伏せました。
ヴォルはククッと笑っています。
「何故謝罪する。問題ない。俺も空腹だ。何かないか見に行くか」
「……はい」
笑みを浮かべたヴォルに私も微笑み返し、二人してベッドから降りました。
どうやらヴォルは本当に調子が良いようで、ふらつく事なく足取りは確かなようです。
「…………」
ですが部屋の扉の前で、突然進む足が止められました。
どうかしましたか?と見上げれば、ヴォルは空中に視線を向けて立ち止まっています。──これ、精霊さんとお話ししているのですかね?
「メル、ありがとう」
「はい?」
視線を私に移したヴォルは、ふわりと微笑みます。
そして続けられた突然のお礼に、私は意味が分からないで首を傾げました。
「精霊に願い事をしてくれただろう」
「え……はい。えっと……、それがどうかしましたか?」
そんな事まで分かるのかと不思議に思いましたが、フワリと頭を撫でられるその態度と表情からヴォルが喜んでいるのは分かります。
でも何故、それが私へのお礼に繋がるのでしょうか。
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