「結婚しよう」

まひる

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第四章

≪Ⅵ≫知りたい【1】

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「あぁ、メルは初めてだったな。「キャーッ!!」もだが」

 私は恥ずかしさのあまり、思い切り叫んでしまいました。──なので、後半のヴォルの言葉は聞こえませんでしたよ。耳を塞いで、目も閉じていましたから。

「何だ。また恥ずかしいのか?別に良いだろう、夫婦なのだし」

「そ、そん、な、事……っ!」

 動揺してブチブチと途切れた言葉は、既に意味のない音の羅列となっています。
 ──恥ずかしすぎます!それに何だか、そう言う時だけヴォルのキャラが変わるのですけどっ。
 妖艶な笑みを浮かべながらズイッと近寄られると、思わず後退あとずさりしてしまいたくなりますよ。

「メル……」

 急に真面目な顔で瞳を覗かれても……、余計に困るではないですか。
 顔を両手で覆いながら、私は俯いていました。

「魔力持ちでも良いか……?」

「……って、そんなに心配だったのですか?」

 けれども続けられた言葉は酷く自信がなさけで、私は顔を隠していた手を退けてヴォルを見上げます。
 生命の精霊が誕生して、それによって自らの子孫の事を連想した訳ですね?そして自分と同じように魔力を持っていたら──と不安になった訳ですか。

「ヴォルの子供なら、男の子でも女の子でも素敵ですね。魔力を持っていたら、ヴォルが魔法を教えてあげてくださいね?そして二人して私に見せてください。こんな魔法が出来るようになったんだよって」

 ニッコリと私は答えます。
 だって、そうなったら素晴らしいです。魔力は遺伝する訳ではないでしょうけど、父親から教えてもらえるなら素敵じゃないですか。
 ──それに絶対に美しいお子様が生まれますよ!

「……そうか。俺が、か」

「はいっ」

 ポツリと呟いたヴォルですが、その瞳はとても柔らかな光を宿してしました。
 身近に自分を分かってくれる人がいる程、心強いものはありませんから。──って言うか私、凄い先の夢みたいな話をしていません?
 そもそもヴォルの子供って……、私の子供?

 不意に、ペシペシと頬を叩く小さな感触がありました。
 あ、先程の小さな精霊さんです。

「何ですか、精霊さん?」

 私はその可愛さに微笑みながら問い掛けてみます。──あ、でも私にはこの子達の言葉は聞こえないのですけど。
 一生懸命身振り手振りで何かを訴えていますが、ごめんなさい……分からないです。

「ヴォル?」

 何を言っているのか教えてほしくて、隣に立つヴォルを見上げました。──って言うか、何故そんなにも顔が赤いのですか?
 視線を向けたヴォルがとても動揺していて、赤くなった顔をそのままに片手で口元を覆っていました。

 いったい、精霊さんは何を言っているのでしょう。ヴォルがこれ程動揺するなんて、絶対何かあるに決まっています。

「ヴォル?何を言っているのか教えて下さいませんか?」

「な……、何をっ?…………悪い。答える事は……出来ない」

 動揺はそのままに、ヴォルは私の問い掛けを拒否しました。そして追求を避ける為にか、視線をらされてしまいます。
 ん~、無言で通されるよりは良いのですけど……気になるではないですかっ。
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