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第四章
4.我が儘ではない【2】
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「あ、ありがとう……ございます?」
尖った視線を向けられているので少し自信がないですが、ベンダーツさんが悪い人ではないと今の私には分かります。
ここに来るまでは、それはそれは攻撃的で怖かったのですけどね。
「おいおい、俺の言った事を聞いていたのか?一人は危険だ。アイツと一緒にいろ。一人なら外に出るな」
けれどもベンダーツさんは、私の謝意を一刀両断です。
それに『アイツ』とは。
「あの……、ヴォルの事……ですよね?」
「当たり前だ、お前は馬鹿か。他に誰がいるっ!?……頭の悪い奴だな。いっそ犯してやろうか」
「そんな事をしてみろ。お前の首が飛ぶだけで済むと思うなよ」
「っ?!」
びっ……ビックリ二回目です。
ベンダーツさんの背後から、冷たい鋭い声が静かに響いてきました。──ヴォル、登場なのです。
えぇ、とても怖い顔をしていますよ。あ、ヴォルの場合は凍った様な感情のない顔なんですけどね。無表情とはまた違うのです。
「……何だ、自分から来たのか。てっきり研究室で拗ねてるから、また朝まで放置かと思ったんだが」
ベンダーツさんは、私の手首を掴んだままヴォルに向き直ります。
本当にこの人、ヴォルに慣れていると言うか怖がらない人ですね。怒っているのが分からない訳ではない筈なのですが。
「手を離せ」
「嫌だと言ったら?」
「……お前の手首ごと切り落とす」
ベンダーツさんの言葉に僅かに眉を動かしましたが、視線を落としてすぐに射貫くような鋭さに変わりました。
──ぅわ~、やめてくださいよっ!それ、冗談ではないですよね?
ですがベンダーツさんは、それくらいでは表情を崩さないのです。私は二人のやり取りで、もう既に心臓が悲鳴をあげていますが。
「ったく……、しっかりとお前が掴まえとけ。今度フラフラしてるとこを見たら、俺が食ってやるからな」
暫く互いに睨み合っていましたが、先にベンダーツさんが溜め息と共に視線を外しました。
──はいっ?!私を食べても美味しくないですよっ?!
「……お前、考えてる事が違うから」
青くなった私に向き直ったベンダーツさんは、一言それだけを告げて手を離してくれました。
って言うか、人の考えてる事が読めるのですか?そんな事を思っていた私をよそに、さっさと立ち去るベンダーツさんです。勿論ヴォルは、彼の姿が見えなくなるまで鋭い視線を投げ付けていましたが。
「はぁ……」
大きくヴォルが溜め息を吐きました。
最近溜め息が多くないですか?もしかして、疲れています?
「あの……、大丈夫ですか?」
私の言葉に、ヴォルが恨めしそうな瞳で見てきます。
ん?何でしょうか。あ、私が原因だったりします?……もしかして、また精霊さんがヴォルを呼んだのですかね?
「帰るぞ」
「えっ?」
「部屋にだ」
当たり前のように手を掴まれ、声を掛けられました。でも私は今自室前にいる訳でして、ヴォルの言っている事がすぐには理解出来ません。
だいたい、私はガルシアさんを待っているのですから。
「はぁ……あ、あの……っ」
「ガルシアには言っておいた」
「あ……、そうですか」
ヴォルの言葉に、私は小首を傾げつつも了承します。
まぁ、ガルシアさんが知っていれば問題ないですから。それに部屋って言うのは、ヴォルの部屋の事ですよね。行き先が分かっていれば不安はないです。
──ん?何でしょうか。ヴォルが私を見ています。
「メルはガルシアの心配をするのだな」
「はい?」
「俺はどうでも良いのか?」
──な……、何ですと?
目を見開いた私に、ヴォルが一歩近付きます。
「俺はメルじゃないと駄目だと言っているのに……、それでも俺を放っておくのか」
──ち、近すぎますよっ。
顎を指先で取られ、アワアワしているだけの私でした。本当にこういった時の対処法が分かりません。
いえ、慣れるもなにもないですよね。心臓バクバクですよっ。
尖った視線を向けられているので少し自信がないですが、ベンダーツさんが悪い人ではないと今の私には分かります。
ここに来るまでは、それはそれは攻撃的で怖かったのですけどね。
「おいおい、俺の言った事を聞いていたのか?一人は危険だ。アイツと一緒にいろ。一人なら外に出るな」
けれどもベンダーツさんは、私の謝意を一刀両断です。
それに『アイツ』とは。
「あの……、ヴォルの事……ですよね?」
「当たり前だ、お前は馬鹿か。他に誰がいるっ!?……頭の悪い奴だな。いっそ犯してやろうか」
「そんな事をしてみろ。お前の首が飛ぶだけで済むと思うなよ」
「っ?!」
びっ……ビックリ二回目です。
ベンダーツさんの背後から、冷たい鋭い声が静かに響いてきました。──ヴォル、登場なのです。
えぇ、とても怖い顔をしていますよ。あ、ヴォルの場合は凍った様な感情のない顔なんですけどね。無表情とはまた違うのです。
「……何だ、自分から来たのか。てっきり研究室で拗ねてるから、また朝まで放置かと思ったんだが」
ベンダーツさんは、私の手首を掴んだままヴォルに向き直ります。
本当にこの人、ヴォルに慣れていると言うか怖がらない人ですね。怒っているのが分からない訳ではない筈なのですが。
「手を離せ」
「嫌だと言ったら?」
「……お前の手首ごと切り落とす」
ベンダーツさんの言葉に僅かに眉を動かしましたが、視線を落としてすぐに射貫くような鋭さに変わりました。
──ぅわ~、やめてくださいよっ!それ、冗談ではないですよね?
ですがベンダーツさんは、それくらいでは表情を崩さないのです。私は二人のやり取りで、もう既に心臓が悲鳴をあげていますが。
「ったく……、しっかりとお前が掴まえとけ。今度フラフラしてるとこを見たら、俺が食ってやるからな」
暫く互いに睨み合っていましたが、先にベンダーツさんが溜め息と共に視線を外しました。
──はいっ?!私を食べても美味しくないですよっ?!
「……お前、考えてる事が違うから」
青くなった私に向き直ったベンダーツさんは、一言それだけを告げて手を離してくれました。
って言うか、人の考えてる事が読めるのですか?そんな事を思っていた私をよそに、さっさと立ち去るベンダーツさんです。勿論ヴォルは、彼の姿が見えなくなるまで鋭い視線を投げ付けていましたが。
「はぁ……」
大きくヴォルが溜め息を吐きました。
最近溜め息が多くないですか?もしかして、疲れています?
「あの……、大丈夫ですか?」
私の言葉に、ヴォルが恨めしそうな瞳で見てきます。
ん?何でしょうか。あ、私が原因だったりします?……もしかして、また精霊さんがヴォルを呼んだのですかね?
「帰るぞ」
「えっ?」
「部屋にだ」
当たり前のように手を掴まれ、声を掛けられました。でも私は今自室前にいる訳でして、ヴォルの言っている事がすぐには理解出来ません。
だいたい、私はガルシアさんを待っているのですから。
「はぁ……あ、あの……っ」
「ガルシアには言っておいた」
「あ……、そうですか」
ヴォルの言葉に、私は小首を傾げつつも了承します。
まぁ、ガルシアさんが知っていれば問題ないですから。それに部屋って言うのは、ヴォルの部屋の事ですよね。行き先が分かっていれば不安はないです。
──ん?何でしょうか。ヴォルが私を見ています。
「メルはガルシアの心配をするのだな」
「はい?」
「俺はどうでも良いのか?」
──な……、何ですと?
目を見開いた私に、ヴォルが一歩近付きます。
「俺はメルじゃないと駄目だと言っているのに……、それでも俺を放っておくのか」
──ち、近すぎますよっ。
顎を指先で取られ、アワアワしているだけの私でした。本当にこういった時の対処法が分かりません。
いえ、慣れるもなにもないですよね。心臓バクバクですよっ。
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