上 下
49 / 52
第五章──栗鼠(リス)──

なな

しおりを挟む
 ぼくたちの目の前の化け物あやかし、赤色の栗鼠リスは。咽喉から胸部、腹部にかけては水色の毛色をしていた。
 耳の先には明るい黄色の長めの毛。確か、冬毛の時は。耳介に長さ四センチから五センチ程の毛が、上に向って伸びる。──あくまで普通サイズの栗鼠ならば、だけど。
 そも、今は夏なのよ。季節感おかしいのか、冬毛仕様が好きなのか。まぁ後者だとは思うけど。何にせよ、色彩感覚が特殊だ。蛍光色多めで、自己主張が強い。

「しっかし、色が派手だなぁ。目がチカチカするぜぇ」
「ふふっ、確かに。掌サイズのおもちゃならまだ良いけど、アレは大き過ぎだもんね」
「んとに、自己顕示欲強すぎ。承認欲求の塊かよ、うざっ」

 罵詈雑言が激しい臥竜がりゅう
 せっかくの北海道最終日の休日を潰され、激おこぷんぷんのようだ。

「ま、はらうしかねぇんだけど」
化け物あやかしの言い分って、聞く必要もないの?」
「んあ?あるかよ、んなの。おれと潤之介じゅんのすけの邪魔をするんだ。きっちり責任をとってもらわねぇとな。それに。力があるから『しろ』を創れるんだ。邪気をはらってやれば、通常の生き物に戻れっからな。こっちとしては、理由はとにかく。これも仕事のうちって事だ」

 口は悪いが、根は優しい臥竜である。
 化け物あやかしにも慈悲を向ける彼の心根は、ぼくもとても好ましく思う。物言いは別として。本当に。
 人間社会が大きく膨らんだ今の世界では、『悪意』が多くあふれているのだと。そう、天照てんしょうさんが言っていた。人は感情の生き物だから。
 そしてたぶん。化け物あやかしをとりまく、黒いもや。ぼくにはそう見えるアレが、悪意なのだろう。ちなみに、臥竜も見えるらしい。

「んじゃあ、まぁ。やるか」
「うん」

 そうして臥竜から不動明王の真言を渡され、大咒だいじゅを読み上げる。
 当然、その前には二人して手を繋いでいた。今回のぼくは倒れてしまわないように、初めから体操座りをして挑む。それでもどうしたって。力の譲渡がおこなわれると、ふらりと身体が揺らいだ。
 それを臥竜は、自然な流れでぼくの頭を引き寄せる。自分の身体に寄り掛からせるようにしてから、ついでのように頭部を撫でてくれた。
 続けて臥竜は、右手と左手の人差し指と中指をそれぞれ立てていんを結び。不動明王の真言で、中咒ちゅうじゅを三回繰り返す。それから九字を切った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。 幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。 逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。 見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。 何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。 しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。 お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。 主人公楓目線の、片思いBL。 プラトニックラブ。 いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。 2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。 最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。 (この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。) 番外編は、2人の高校時代のお話。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

まだ、言えない

怜虎
BL
学生×芸能系、ストーリーメインのソフトBL XXXXXXXXX あらすじ 高校3年、クラスでもグループが固まりつつある梅雨の時期。まだクラスに馴染みきれない人見知りの吉澤蛍(よしざわけい)と、クラスメイトの雨野秋良(あまのあきら)。 “TRAP” というアーティストがきっかけで仲良くなった彼の狙いは別にあった。 吉澤蛍を中心に、恋が、才能が動き出す。 「まだ、言えない」気持ちが交差する。 “全てを打ち明けられるのは、いつになるだろうか” 注1:本作品はBLに分類される作品です。苦手な方はご遠慮くださいm(_ _)m 注2:ソフトな表現、ストーリーメインです。苦手な方は⋯ (省略)

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

処理中です...