ある日、突然始まったかのように思えたそれ

まひる

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第五章──栗鼠(リス)──

ろく

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 そんな感じで。ぼくと臥竜がりゅうが、頻繁に化け物あやかしに襲われる理由を意図せず知った。
 知りたくなかった、とも言いたいけど。ぼくはもう、一人じゃないから。臥竜と一緒に。もう本当に、何度も何度もアレと対峙している。──不本意ながら。無関係で、いられなくなってた。

「うん、分かった。つまり臥竜と一緒にいないと、ぼくは。二十歳はたちまで生き残れない、って事だね」
「おれもな。潤之介じゅんのすけといねぇと、戦えねぇんだ」
「ふふっ。お互いに助け合う関係、だもんね」
つい、だからな。頼むぜ、相棒」
「こちらこそ。宜しくお願いしますっ」

 改めてな感じで、握手する。
 今はまだ、化け物あやかしと対峙してないから。少しだけ、気持ちにゆとりがあるのかも。
 そうであれど。こんな風にずっと、のんびりはしていられない。ぼくと臥竜は、田地たじ名渡山などやまから行方不明扱いされたくないのだ。

「で。これから、どうするの?」
「そうだなぁ。おれたちを『しろ』に引き入れたのは、あやかしだから。普通なら向こうから、出迎えてくれるんだけどなぁ?」

 周囲を見回しながら、臥竜が答えてくれる。
 確かにいつもなら。こちらが気付いたタイミングで、何らかのアクションがあった。けれど、今は。
 ぼくも周囲へ視線を向ける。違和感や、嫌悪感を感じる部分を探すのだ。
 現状、目に写る景色としては。森と大地、空。色は何だかおかしいけど。
 蛍光色の水色の葉をした木々。その幹は光沢のある白。大地は明るい黄色で、空は派手な桃色ってどういう意味だろう。常識を訴えてくる頭が、少し混乱しそう。

「何か、酔いそう」
「んぁ?大丈夫か、潤之介」
「臥竜は平気?気持ち悪くない?」
「あ~、色彩感覚は狂わされるわなぁ」

 思わず口元を押さえたぼくに。臥竜が伺うように、そっとぼくの頬にれた。
 何故かそれだけで頭がスッとして、それまでのもやもやした感覚が消える。

「何だかすっきりした」
「くくくっ。そりゃあ、良かった」
「え?臥竜、何かした?」
「何か、か。まぁ、さわったな」
「それだけ?」
「そ。……おれが潤之介にれる理由、分かった?」

 少しだけ苦い表情をする臥竜。でもぼくは、それが悪い事に思えなかった。
 ついであるからゆえなのか。本当に互いが支え合う存在であるようだ。

「ほら、潤之介。ようやくの登場だぜ」
「ぅわ~……。ちょっ、おっきすぎない?」

 臥竜に促されて視線を向ければ。周囲の木々より、頭一つ分は大きいソレ。
 形は栗鼠リスなんだけど。本当に形だけで。色は赤。しかも。薔薇のような、鮮やかな赤色だった。
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