ある日、突然始まったかのように思えたそれ

まひる

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第五章──栗鼠(リス)──

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※ ※ ※

「なぁ、田地たじぃ。俺等って、距離近いのか?」
「……いや、普通だろ。名渡山などやまは学力方面は強いのに、性格が子供だからな。俺がコントロールしてやらないと、危なっかしいんだよ」
「そうなのか?まぁ田地が嫌じゃなければ、俺は助かるんだけどさぁ。それよりも俺等より、冴木さえき鹿毛かげの距離の方が近くないか?」
「その意見には俺も賛成だ」
「俺もお口あ~んとか、膝枕とか。してもらいたいなぁ?」
「……自分でしておけ」
「だからどうやって?田地、いつも俺にそういうけど……。おいっ、笑ってんなよ?」
「…………」

※ ※ ※

 田地と名渡山を待っていたぼくと臥竜がりゅう
 でも、二人は何処まで行ったのか。結構待っている筈なのに、いまだに戻ってこない。

「ねぇ、臥竜。何かおかしくない?」
「そうだな。いくら何でも、時間が掛かりすぎだよなぁ。……ってか、潤之介じゅんのすけ。人、いなくねぇか」
「……まさか、ねぇ?」

 不意に気付いてしまった。
 今、ぼくと臥竜がいる場所は。動物園近くの、原始林と接する公園内。でも、人どころか。生き物の気配が全く感じられなくなっていた。

「チッ。また『しろ』かぁ?大人気だなぁ、潤之介ぇ」
「えぇ~、ぼくぅ?」
「おれが子供の頃に。潤之介に与えた加護、あんだろ?あれ、潤之介をあやかしから隠してたって言ったよな」

 またまた、化け物あやかしの亜空間に隔離されたようである。
 三度目の正直、とかに。してもらいたいなぁ、なんて思っても良いよね。──あ、四回目か。
 それより。今、臥竜の言った言葉。確かに、宗颯そうりゅう寺にぼくが行った初日。天照てんしょうさんから、説明を受けた。

「潤之介やおれの、アザ。他の人には見えないのと同じで。潤之介の右手のしるしも、他の人には見えないだろ?」
「うん。だからぼく、隠す事なく生活出来る」
「でもな。普通、あやかしからは潤之介が見えるんだ。何処にいても」
「えっ」
「だからあの時は、そうした。ってか、それしか出来なかった。会っちゃならねぇ事になってたし、おれもあの当時。こっそりと忍び込んだ側だったからな。で、今は拠点に。常に結界を張っている」
「結界……。ぼく、何度か耳にした事がある。天照さんと臥竜の会話、とか。宗颯寺のお坊さん、とか」
「ん、それ。ちなみにおれも、やつらに丸見え側な。簡単に、あやかし視点を言えば。美味しく見える潤之介と、見てるだけでムカつくおれ?」

 カラカラと笑いながら話してくれた臥竜だけど。
 つまり、襲われる事に関して。ぼくも臥竜も同じという事実。──何、それぇ。
 十五歳までお互いを会わさないのは、それが理由だったんだ。一人でも襲われるのに。二人揃うとか、超絶危険しかないから。自分の身を護れない幼子を、みすみす化け物あやかしに奪われる訳にいかないのだろう。
 あ、ぼくの場合。アレの力を増強してしまう側だった。余計にダメじゃん。
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