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第五章──栗鼠(リス)──

さん

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※ ※ ※

潤之介じゅんのすけ?どうした、腕が痛いのか?」
「違うよ、臥竜がりゅう。ぼく、筋肉付いたんじゃない?」
「あ~……、うん。前よりしっかりしたよな」
冴木さえきが言い渋ってるよ、田地たじぃ」
名渡山などやま。あれは、マイルドに言ってるだけだ。鹿毛かげはガリガリだからな。本当の事を言ったら、傷付くだろ」
「え?ぼく、ガリガリ?」
「潤之介はスリムなだけだ。外野がいやは気にするな。しっかり飯食って、しっかり寝てる潤之介はお利口さんだ」
「子供扱い、ぱないな。そうだ、田地。俺も褒めてぇ?」
「何でだよ、名渡山。自分で褒めとけ」
「ひどっ?!」

※ ※ ※

 今日は北海道、滞在最終日。
 長くも短い酪農家アルバイトで。ぼくの腕にも、結構な筋肉が付いたのではないだろうか。
 今では宗颯そうりゅう寺──冴木家でしっかり御飯を食べてるし、臥竜の給餌もあって。逆に気を付けないと、丸々と肥えて。最悪の場合、化け物あやかしに美味しく頂かれてしまうかもなのだ。──怖っ。ぶるぶる。

「潤之介。これ旨いぞ」
「はむ……んぐんぐんぐ。うわ~っ。本当だ、臥竜っ。噛めば噛む程、蟹の旨味が出てくるっ」
「北海道と言えば、蟹だよなぁ~。うま~っ」
「確かに。旬でなくとも、蟹は美味しいよな。よし、次は羊だ」

 明日、帰路に付くぼくたちは。今日は全員休みの日で、北海道観光の一日である。
 朝早くから街へとやって来たぼくたち。
 レトロな鐘が時間を刻む、シンボル的な時計台。赤レンガ造りの建物。など。
 そして今、来ている場所は。歴史ある、新鮮な食材が集まる市場だ。海鮮丼やウニいくら丼、五目御飯。ラーメン、パフェ。
 たくさん食べ過ぎて、もうお腹が苦しい。
 食べては移動して。また食べる。名渡山に合わせると、ぼくのお腹はパンクしてしまうから。毎回、臥竜と分けて食べている。
 田地は名渡山のお皿からつまんでいるから、実質二人分のオーダーで。けちってる訳じゃないの。お店の人、ごめんなさい。

「おぉ~、羊だなぁ」
「北海道と言えば、ジンギスカンだよなぁ」
「名渡山。さっきは蟹だったよね、臥竜」
「その前はイクラだったぞ、潤之介」
「まぁ……何でも、食べ物が美味しいって事だな」
「北海道、最高~」

 ここのジンギスカンは臭みがなくて、美味しかった。仔羊ラムだからかな。
 生後二年以上は、マトンと呼ばれるらしい。羊特有のにおいがあり、脂がのって濃厚な旨味があるようだが。初心者向けではないようだ。
 酪農を通じて。最終的に食べられる生き物の世話をし、れ合ったが。動物性のお肉が食べられない──とかには、ぼくはならなかった。ほっ。一安心ひとあんしん
 でも屠殺とさつ場とか。それは遠慮したいかな。
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