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第五章──栗鼠(リス)──

いち

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※ ※ ※

 続く北海道、酪農アルバイト。
 今日のぼくは二番担当。その中での、粗飼料そしりょう作りだ。
 機械で牧草を刈り取り。刈り取った草を、地面に敷き詰めて乾燥。そして何回かひっくり返す。ある程度乾燥したら、一列に並べて。機械でロール状に巻く。巻いたら麻縄で縛り。機械でビニル巻き巻き、包み込む。これは牧草サイレージ──ラップサイレージと言うらしい。
 こうして牧草を発酵させる事で、乳酸や酢酸といった物質が発生。腐敗菌やタンパク分解菌の活動を抑える為、飼料の長期にわたる貯蔵が可能になるらしい。また発酵で生じた有機酸は、牛にとって重要な栄養源。食欲をそそる香りをたてる為、牛の食欲を増進させる効果もある優れものだとか。ともあれ。一ヶ月後から半年程度の保存が可能らしい。青草が少ない冬場などは当然だけど、重宝されるのだ。
 あ、ちなみに。『畜産』は肉や皮革、乳などを得る目的で動物を飼育・生産することをし。畜産のうち、とくに乳や乳製品を得る目的で動物を飼育する産業を『酪農』というんだって。知らなかった。
 こんな感じで酪農のバイトをしてきて。かなり機械化されてはいるけれど、やはり人手は必要で。更に収益を求めるならば、色々な事に気を回す必要も出てくる。
 牛の毛のブラッシングも、ほぼ毎日行う作業。牛のストレス解消になるほか。毛に絡みつく飼料や藁、糞尿などを落として搾乳時に異物が混入する事故を防ぐ効果もある。
 飼料──牛さんの御飯──を与える作業も、多くの牧場では人力でおこなわれる。朝と夜の2回に分けて与える事が一般的。一部の大規模牧場では、自動的に給餌する設備を持つ場合もあるそうだけど。
 牛は通常。妊娠・出産した年でないと、ミルクを出せない。だから、効率よく搾乳する為。毎年、牛を妊娠・出産させる必要がある。牛は1年中繁殖可能ではあるそうだけど、気温の高い夏以外に出産させることが普通らしい。
 自然交配や、人工授精で計画的に出産させるそうで。人工授精の作業自体は酪農家ではなく『家畜人工授精師』という専門家が担当するらしい。
 生まれた子牛がメスの場合。酪農家は母乳から人工乳への切り替え作業や、牧草に慣らすための作業。角を取り除く『除角』をおこない、妊娠・出産と搾乳が可能な段階まで育成する。一時的に、育成専門の牧場に預けることもあるそうだ。生まれた子牛がオスだった場合は、一部を除き生後数週間で肉用として売却。
 五・六年ほど連続で出産した乳牛は乳の分泌量が低下する為。『廃用牛』とし、肉用として家畜商などに売却。買い手がついた廃用牛は肥育牧場──肉用の牛を育てる専門牧場──で数ヶ月肥育されたのち。屠殺されて食用の牛肉として店頭に並ぶことになる。
 廃用牛やオスの子牛の売却は、酪農家にとって大切な収入源だそうだ。牛さんの事を詳しく知るだけでなく、経営の事をきちんと学ばないとならない。──酪農家、深いな。
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