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第四章──山椒魚(サンショウウオ)──
なな
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※ ※ ※
たこ焼きやら、フライドポテトやら。色々と、テイクアウトの食べ物を購入して。やって来ました、誰もいない片隅のベンチ。
日陰で静か、落ち着く。少しだけジメッとした感じの岩肌が傍にある。水の流れる音が聞こえるから、近くに小川でもあるのかもしれない。
ぼくは人に酔ってしまった感があり。こういった寂れた場所のほうが、今は気分が落ち着くようだ。臥竜は何故か、先程の女の子たちのような人を警戒しているみたいだけど。
「よし。ここなら、他に近付いて来る奴等はいねぇな?」
「ふふっ、臥竜ってば。そんなに気を張ってると、疲れちゃうよ?」
「潤之介の安全の為だ」
「そうなの?はい、たこ焼き。あ~ん」
「お、おぅ……ん、旨いな」
周囲へ視線を配る臥竜に。ぼくは、普段から臥竜にされているので。全く特別な意識なく、お口あ~んをする。
冴木家に転がり込んだ──連れ込まれた初日から、臥竜の雛鳥になっていたぼく。今でも何故かそれは継続されていて。自分で食事をしていても、何かと臥竜は給餌してきた。もう、一人で食べられるのに。
いわく、美味しいから。甘いぞ。食べてみろ。などなど。確かに本当にどれも美味しいんだけど。そのせいか。ぼくの感覚は、たぶん少しおかしい。
初めの頃にあった、羞恥心とか男としての矜持とか。臥竜に対しては、そういうのを感じなくなっていた。何か、何でも受け入れてしまえる感じ。
「お、潤之介。これ、甘くて旨いぞ。ほら」
「はむ……んぐんぐんぐ。うわ~、美味しっ」
これが通常モードなのだ。
ちなみに。宗颯寺では、ぼくたちのこれは定番化している。誰も追求しないし、言及しない。──あ、田地と名渡山もか。
※ ※ ※
そんな感じで、和気あいあい。二人で食事を終えた。
もうお腹一杯である。
「……人影がなくて安心していたが」
「そうだねぇ。まさか、こっち側だったなんて」
片付けを終え、周囲へ視線を巡らせた。
一言で言えば、違和感。
「まぁ、静かに飯が食えたからな。感謝の気持ちは、多少はある」
「この『城』って。あやかしは、何の意図があって作るのかな」
「さぁな。……まぁ。食事の邪魔をされたくない、とか。獲物を逃がさないように、とか?」
いつでも移動が出来るように、周囲を片付けた臥竜。ぼくも自分のリュックを背負い、準備万端だ。
そうして二人で警戒していると。湿った岩の向こうから、黒い靄が漂って来る。どうやらその奥にいるようだった。──こっちにいるよって。お知らせしてる?
たこ焼きやら、フライドポテトやら。色々と、テイクアウトの食べ物を購入して。やって来ました、誰もいない片隅のベンチ。
日陰で静か、落ち着く。少しだけジメッとした感じの岩肌が傍にある。水の流れる音が聞こえるから、近くに小川でもあるのかもしれない。
ぼくは人に酔ってしまった感があり。こういった寂れた場所のほうが、今は気分が落ち着くようだ。臥竜は何故か、先程の女の子たちのような人を警戒しているみたいだけど。
「よし。ここなら、他に近付いて来る奴等はいねぇな?」
「ふふっ、臥竜ってば。そんなに気を張ってると、疲れちゃうよ?」
「潤之介の安全の為だ」
「そうなの?はい、たこ焼き。あ~ん」
「お、おぅ……ん、旨いな」
周囲へ視線を配る臥竜に。ぼくは、普段から臥竜にされているので。全く特別な意識なく、お口あ~んをする。
冴木家に転がり込んだ──連れ込まれた初日から、臥竜の雛鳥になっていたぼく。今でも何故かそれは継続されていて。自分で食事をしていても、何かと臥竜は給餌してきた。もう、一人で食べられるのに。
いわく、美味しいから。甘いぞ。食べてみろ。などなど。確かに本当にどれも美味しいんだけど。そのせいか。ぼくの感覚は、たぶん少しおかしい。
初めの頃にあった、羞恥心とか男としての矜持とか。臥竜に対しては、そういうのを感じなくなっていた。何か、何でも受け入れてしまえる感じ。
「お、潤之介。これ、甘くて旨いぞ。ほら」
「はむ……んぐんぐんぐ。うわ~、美味しっ」
これが通常モードなのだ。
ちなみに。宗颯寺では、ぼくたちのこれは定番化している。誰も追求しないし、言及しない。──あ、田地と名渡山もか。
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そんな感じで、和気あいあい。二人で食事を終えた。
もうお腹一杯である。
「……人影がなくて安心していたが」
「そうだねぇ。まさか、こっち側だったなんて」
片付けを終え、周囲へ視線を巡らせた。
一言で言えば、違和感。
「まぁ、静かに飯が食えたからな。感謝の気持ちは、多少はある」
「この『城』って。あやかしは、何の意図があって作るのかな」
「さぁな。……まぁ。食事の邪魔をされたくない、とか。獲物を逃がさないように、とか?」
いつでも移動が出来るように、周囲を片付けた臥竜。ぼくも自分のリュックを背負い、準備万端だ。
そうして二人で警戒していると。湿った岩の向こうから、黒い靄が漂って来る。どうやらその奥にいるようだった。──こっちにいるよって。お知らせしてる?
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