ある日、突然始まったかのように思えたそれ

まひる

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第四章──山椒魚(サンショウウオ)──

よん

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※ ※ ※

「う……」
「大丈夫か?潤之介じゅんのすけ
「あ、はは……」

 翌朝。予想通りの筋肉痛になったぼく。臥竜がりゅうが心配して、足やら腕をマッサージしてくれていた。
 ぼくは情けない事に、苦笑いしか出来ない。

「普段、こんな風に力仕事しないからねぇ」
「そうだなぁ。寺でも、昔は井戸から水をんで~とかあったけど。今じゃ、蛇口ひねれば水もお湯も出る。おれが小さい頃は、風呂も薪だったんだぜ?」
「え~、そうなのっ?五右衛門風呂ごえもんぶろ、とかいうやつ?」
「そうそう、それ」
「ふふっ。それも楽しそうだね」

 今日の臥竜は三番担当だから、仕事始めまで時間があるんだ。
 朝食後のまったりタイム。だけど、いつまでも臥竜にマッサージさせていられない。ぼくたちは学生で、しっかりと課題が出ている。

「ありがとう、もう良いよ。課題やらなきゃ、んっ」
「……あぁ~、くすぐったか?」
「もぅ~。臥竜、脇はダメでしょ~」
「ははっ、わりぃな。じゃあ、宿題すっか」
「うんっ」

 腕のマッサージをしてもらっていて。不意に脇を触られて、思わず息を飲んでしまう。身体がビクッ、てした。普段なら自分で触っても、特に何も感じない場所。
 臥竜が擽ったかったかと聞いてきて、そうだったのかもと思う。人に触られる事なんてあまりないから、そんなところが擽ったいなんて知らなかった。

※ ※ ※

 一人だけ休日って、とか思っていたけど。臥竜が一緒にいてくれて。二人で課題をやっていたから、お昼まであっという間だった。
 十二時から十五時までは休憩時間だから、宿題もやらない。田地たじ名渡山などやまとも合流。一緒に昼食を取り、四人でのんびりと過ごす。

鹿毛かげ、何処まで課題進んだ?」
「うん、まだ少しだよ。臥竜とやったから、一人でより進みが良かったくらい」
「あ~、冴木さえきな。成績上位だから、分からないところがあったらバンバン聞くと良いぞ」
「田地ぃ。俺も課題、見せて~」
「自分でやれ、名渡山。分からないところを聞くのは良いが、写す事はダメだと言ってるだろう」

 名渡山が、ピシャリと田地に怒られていた。昨日の休みを、一人でどう過ごしていたのだろうか。──というか。名渡山は頭が良いのだから、課題が出来ない訳ではない。単に、面倒なのかな。
 休憩後から仕事の臥竜は、ぼくの足を枕に仮眠中。男の膝枕なんて、固いだけではないだろうか。本人が良いなら、別にぼくは構わないのだけど。

「え~っ。……あ、それなら。田地ぃ。俺も午後仕事あるから、膝枕ぁ」
「嫌だ。自分でしとけって」
「どうやって自分ですんの??」
「知らない」

 ワイワイと楽しそうな田地と名渡山だ。ぼくはそれを、臥竜の髪を撫でながら見ている。
 いつもはぼくが臥竜に頭を撫でられるから。でもこれ。やってみたら、何だか心地好い。臥竜の髪の毛、サラサラツヤツヤだからかな。
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