ある日、突然始まったかのように思えたそれ

まひる

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第四章──山椒魚(サンショウウオ)──

さん

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※ ※ ※

「ふぅ。こっち、終わりました」
「おぉ~、ありがとう。少し休んでいて良いよ~」
「はいっ」

 三番担当初日のぼくは、牛の乳頭にカップミルカーをセットし終わったところだ。
 このミルカーという機械は、真空による負圧の力を利用して自動的に搾乳をしてくれる。超絶、便利用品なのである。
 ぼくがやったのは、牛の乳頭を殺菌・消毒・乾燥させてから機械を取り付けた事。牛のおっぱ──乳頭、大きいんだよね。最初だけ、手でしぼらせてもらった。──変にドキドキして怖かったけど、楽しかった。
 機械によって採取された生乳は、ミルカーに付属するタンクに保管される。牛舎に張り巡らされたパイプラインを通じて、牧場内の処理室やタンクに運ばれる流れだ。そしてタンク内の生乳は、劣化や菌の繁殖を防ぐために急速に温度を下げて貯蔵される。
 これが最終的に、ぼくたちが飲んでいる牛乳になるなんて。凄い、牛さん。機械もだけどね。
 何でも、飼育している全ての乳牛。一日二回以上、この作業を繰り返す必要があるらしい。酪農家、大変。
 この作業の前は。牛の寝床となる『寝藁ねわら』を敷く事をした。汚れた寝藁を片付けたりする作業は、毎日おこなうらしいんだけど。牛が寝ている間とかに糞尿などが付着してしまうから、当然のように綺麗ではないわけで。それでも汚れたままで放置していると、牛がストレスをためやすくなる。他にも、細菌による感染症の原因になるんだって。
 干し草用フォークという農具を使って、人力じんりきで寝藁の交換をおこなうんだけど。相当な力仕事だった。本当に本当に、酪農家の人に感謝だね。

「これが終わったら餌やりだぞ~」
「はいっ」

 今日は、田地たじの伯父さんに教えてもらっている。ここは家族と、数人の従業員で経営しているとの事だった。
 それでも、一日二回の搾乳。これ、回数が少ないと病気になってしまうらしい。『乳房炎』という、牛の乳頭から細菌が侵入して死にいたる怖いもの。だから、一日も休むことは出来ないんだって。
 搾乳が終わり、牛の乳頭を綺麗に拭いていく。毎回殺菌が必要なミルカーは、伯父さんがやっていた。それから牛さんの御飯。飼料は、牧草やトウモロコシを混ぜて作るらしい。
 美味しそうにモグモグしてて、ぼくもお腹空いてきた。三番担当は十五時から二十一時までだから、それが終わってからの遅めの夕食になる。その分、翌日は休みだけどね。
 金銭をもらう為のアルバイト。その分、責任もある。お金をもらうんだから、遊び気分ではいられない。そんなバイト初日のぼくは、明日きっと身体中が筋肉痛になってそうだ。
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