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第三章──蟹(かに)──

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※ ※ ※

 いつも学校では、この四人でつるんで。行き帰りは臥竜がりゅうと一緒。──って言うか、臥竜とはずっと一緒だ。でも、全然嫌じゃない。
 ぼくは、叔父さんの家から冴木さえき家に移った事で。初めて、生きていて楽しいものだと。人といる事が、こんなにも心地好いものだと知った。気付かないふりをしていたけど、ずっと息苦しかったんだな。

「ほら、潤之介じゅんのすけ。先にのぼれっ」
「あ、ありがとう。んしょ……っと。はい、臥竜も早く」
「おぅ」

 先に浮き島に到着した臥竜とぼく。
 既に疲れきっているぼくは、なかなか浮き島に身体を上げられなくて。お尻を支えて押し上げられるような感じで、臥竜に手伝ってもらった。でもすぐに上から、臥竜に手を伸ばしたけどね。
 田地たじ名渡山などやまは、まだ少し距離がある。何か声を上げているけど、波の音で良く聞こえない。

「ははっ。何言ってるんだ、ペア戦なんだろぉ?!」
「え?何?」
「いや、あいつ等。おれが潤之介を手伝うのが、ズルいってさ」
「ふふっ、それは言い掛かりだよね」
「だよな~」

 ぼくはあまり聞こえなかったけど、臥竜には聞き取れたらしい。その証拠に、田地と名渡山に大声で言い返していた。でもペア戦になったのって、田地が言い出したんだよね。
 けれども実際、ぼくは随分と臥竜に助けてもらった。というか、ほとんど引っ張ってもらったに近い。
 本当に、エンジンがついているのかと思える程だった。あの膂力りょりょくがあるからこそ、化け物あやかしと戦えるのかも。──ってか、一方の手はぼくを引いていた。結果的に片腕、と足。本当に推進力、半端なかったけどね。
 五メートル四方もない小さな浮き島に、臥竜と並んで座る。二人で、田地と名渡山の到着を待っていた。
 ぼくの視線は海面を向いてるけど。泳いだ事で、身体は心地好く疲れていた。

「何だ、潤之介。みぃのか?」
「ん~……。波の音が、心地好いね」
「そうだな」

 臥竜が、小首をかしげて問い掛けてくるけど。海面に上がった身体は良い感じに温まってきて、ぼくの頭がポヤポヤしてきた。本当に、寝そう。
 海の真ん中なのに。臥竜が一緒にいるからか、全然不安がない。
 そう言えば、臥竜の左肩に。一センチ程の大きさの、星型のアザを見つけた。隠していないのか聞いたら。ぼくたちのような、一部の力ある者にしか見えないのだとか。──みんなに見えたら、刺青タトゥーとか言われそうか。

「寝るならこっち来い」
「ん~……」

 臥竜がぼくの肩に手を置いた。けど、ぼくの意識はフワフワ。
 浮き輪がお腹部分にあるから。これも、良い感じに身体を支えてくれていた。ぽかぽか。心地好い。──あぁ。頭を撫でられるの、好きだな。
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