ある日、突然始まったかのように思えたそれ

まひる

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第二章──解放者──

なな

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※ ※ ※

 物凄く、疲れた。
 ぼくはふかふかの布団の中。台風のような一日を思い返す。
 朝、通学中。電柱サイズの巨大百足ムカデに出会った。その時助けてくれたのは、臥竜がりゅうで。
 登校したら、転校生って事で臥竜が来て。ぼくの隣の席になった。
 いつメンの田地たじ名渡山などやまと合わせて、昼は四人で過ごす。
 授業後、二人は部活で。ぼくは臥竜と帰宅しようとなった。で、そこで再登場の巨大百足。──心底、いらない。
 ぼくは臥竜と手を合わせて、お願いされた紙面を読み上げたんだけど。そこからブラックアウト。気付いたら、何と臥竜の家。しかも、お寺。
 臥竜父である天照てんしょうさんに、諸々の説明をザクッと聞いた。まだ、細部は色々と分からないけど。
 天照さんと、就寝の挨拶を交わしたまでは良い。でも。その後、臥竜からのカミングアウト。
 意識を失って、倒れたぼくを連れてきた臥竜。怪我と土汚れが酷くて、ふたりしてまずお風呂となる。だがそこで、ぼくが臥竜以外の人の手を拒絶したらしい。断じて。ぼくの意思ではない。ここ、重要。
 仕方なく──なんだよな?臥竜がぼくとお風呂に。裸にして、色々なところを綺麗に洗ったと。楽しそうに告げられたぼく。ヒットポイントはゴリゴリ削られた。
 傷の治療も。擦り傷や小さな切り傷だったみたいで。それに消毒と塗り薬。ついでにぼくの守護者ナータとしてのアザを探した、と。右耳の後ろだったから、服を剥かなくても良かったとか。カラカラと笑いながら言われたさ。
 臥竜からの給餌きゅうじ、お口『あ~ん』の。食事だけでも、結構なダメージだったのに。
 最後にはトイレに連れていかされて。いや、必要なんだけども。自力で座っていられない、ぼくの。ぼくの排尿まで見られるなんて。結果、尿瓶しびんと替わらなくない?
 今日一日で。ぼくの高校生としての自尊心は、完全に砕け落ちた。どうしてくれる。
 小さな頃から、あまり良い人生じゃなかったのに。なけなしのプライドだったのに。
 記憶がよみがえったから、今なら分かる。五歳以降、だ。ぼくは、叔父おじさんの家で養われている。お父さんもお母さんも。その後、一度も会った事はない。正直、もう顔も覚えていない。
 理由は、今まで知らなかったけど。知らない筈、だったけど。お父さんとお母さんは。ぼくの代わりに、鹿毛かげ一族の最深部に捕らえられた。あやかしにれたぼくは、けがれたからと。村から追い出して、ね。
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