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第一章──百足(ムカデ)──
よん
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※ ※ ※
それぞれの食事を選び。やっとの事で食べ始めた昼食。
今日のぼくは『親子うどん』。名前の通り、親子丼のうどんバージョンだ。鳥モモ肉が玉ねぎとコラボし、卵でとじられてうどんの上に鎮座している。
冴木は本日のおすすめランチ、『唐揚げ定食』。田地は『海老フライ定食』で、名渡山は『ホットサンド』と『コロッケ定食』。名渡山はぼくたちの中で、一番たくさん食べる。
「なぁ。冴木って、名前なに?」
「あぁ、下の名前な。ってか、そんな事言ったら、俺等誰も詳しく自己紹介してなくね?」
「あ、マジ?俺、名渡山儀輔」
「俺は田地洪ね」
「……ぼくは鹿毛潤之介」
「じゅんのすけ……」
「ん?」
「いや。おれは冴木臥竜」
「がりゅう、カッケェなおい。ほら、これでみんな友達。ズッ友~」
「何だよ、まだ分かんねぇだろ?」
「いや、なれよ」
「強制かよ……、ったく」
こうして、一通り自己紹介が終わった。
それからは昨日観たテレビの話だとか、それに出ていた芸能人の誰が可愛いだとか。そんな、いつもの会話の流れになる。
田地と名渡山は口数が多いから、ぼくがあまり会話に参加してないとちゃんと話を振ってくれるのだ。聞き役なぼくは。そうやって水を向けてくれると、スムーズに口を開ける。
冴木も率先して会話に参加する方ではないみたいだけど、話はちゃんと聞いているようで。何なら、ぼくよりスムーズに二人の会話に入れていた。
※ ※ ※
食事を済ませ、片付けをする。他にもまだ食堂に残っている生徒は多いけど。天気の良い時のぼくたちは大抵、中庭で残りの休み時間を過ごす。
私立高校だからか。ここは、中庭も綺麗に整えてあるのだ。
「……でよぉ」
「……あぁ、そうだよなぁ~」
取り留めもない、いつもの休み時間なのだが。ぼくは何故か、ある一点が気になって仕方がない。
あそこの角が。いつもより暗く見える気がする。靄が掛かっているような。変な違和感。
「どうしたんだ、鹿毛?」
「あ……いや。何でもないよ。それより、あの時の……」
「あぁ、そうそうっ」
中庭の角に視線を向けていたぼくは、名渡山の声に平生を装って会話を続けた。
でも、本当は違う。何だろう。心が──ざわざわする感じ?昨日までは普通に、何ともなかったのに。どうしたんだろう、ぼく。
こうして、僅かに小首を傾げているぼくの事を。冴木が静かに見つめていたなんて、全く気が付かなかった。
それぞれの食事を選び。やっとの事で食べ始めた昼食。
今日のぼくは『親子うどん』。名前の通り、親子丼のうどんバージョンだ。鳥モモ肉が玉ねぎとコラボし、卵でとじられてうどんの上に鎮座している。
冴木は本日のおすすめランチ、『唐揚げ定食』。田地は『海老フライ定食』で、名渡山は『ホットサンド』と『コロッケ定食』。名渡山はぼくたちの中で、一番たくさん食べる。
「なぁ。冴木って、名前なに?」
「あぁ、下の名前な。ってか、そんな事言ったら、俺等誰も詳しく自己紹介してなくね?」
「あ、マジ?俺、名渡山儀輔」
「俺は田地洪ね」
「……ぼくは鹿毛潤之介」
「じゅんのすけ……」
「ん?」
「いや。おれは冴木臥竜」
「がりゅう、カッケェなおい。ほら、これでみんな友達。ズッ友~」
「何だよ、まだ分かんねぇだろ?」
「いや、なれよ」
「強制かよ……、ったく」
こうして、一通り自己紹介が終わった。
それからは昨日観たテレビの話だとか、それに出ていた芸能人の誰が可愛いだとか。そんな、いつもの会話の流れになる。
田地と名渡山は口数が多いから、ぼくがあまり会話に参加してないとちゃんと話を振ってくれるのだ。聞き役なぼくは。そうやって水を向けてくれると、スムーズに口を開ける。
冴木も率先して会話に参加する方ではないみたいだけど、話はちゃんと聞いているようで。何なら、ぼくよりスムーズに二人の会話に入れていた。
※ ※ ※
食事を済ませ、片付けをする。他にもまだ食堂に残っている生徒は多いけど。天気の良い時のぼくたちは大抵、中庭で残りの休み時間を過ごす。
私立高校だからか。ここは、中庭も綺麗に整えてあるのだ。
「……でよぉ」
「……あぁ、そうだよなぁ~」
取り留めもない、いつもの休み時間なのだが。ぼくは何故か、ある一点が気になって仕方がない。
あそこの角が。いつもより暗く見える気がする。靄が掛かっているような。変な違和感。
「どうしたんだ、鹿毛?」
「あ……いや。何でもないよ。それより、あの時の……」
「あぁ、そうそうっ」
中庭の角に視線を向けていたぼくは、名渡山の声に平生を装って会話を続けた。
でも、本当は違う。何だろう。心が──ざわざわする感じ?昨日までは普通に、何ともなかったのに。どうしたんだろう、ぼく。
こうして、僅かに小首を傾げているぼくの事を。冴木が静かに見つめていたなんて、全く気が付かなかった。
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