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第一章──百足(ムカデ)──
さん
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それにしても、先程の事は何だったのか。
あの時あの場所には、ぼくと彼しかいなかった。つまりは、状況的に他の誰かに聞く訳にもいかない。明らかにおかしな人認定されてしまう。
一年三組の自分の席に着席したぼくは、鬱々と先程の出来事に思考を走らせていた。
「おはようございます。はい、今日は転校生の紹介です」
担任の教師、久留厚二。四十歳を越えている筈だが、噂によると未だ独身らしい。
まぁ、ぼくが思うに。嫁探しよりも。百キロありそうな体型から、どうにかした方が良い。健康でいなければ。独身なら尚更だが、将来の妻子の為にもだ。
「冴木です」
そうして次に口を開いた人物を見て、ぼくは叫びそうになった。
冴木と名乗った男子生徒は、ペコリと会釈をしただけで突っ立っている。その彼こそ、先程の彼なのだ。
「……え?それだけ?……ま、まぁ良いけど。んじゃあ、席は鹿毛の隣ね。近い内に席替えするかもだけど、後ろでも良いかな?」
「はい、大丈夫です」
そんなやり取りの後、彼──冴木がぼくの方へ近付いてくる。
正確にはぼくじゃなくて。ぼくの隣に指定された自分の座席に、なんだけど。
「またあったね」
「……どうも」
小声でぼくに話し掛けた冴木は。どう応対したら良いのか分からないぼくの、そんな曖昧な返答に。あの時と同じ、口元だけの笑みを作る。
そしてそれっきり、教壇へ視線を向けてしまった。──え、今のぼくは間違っていた?でもどう答えたら良いのかなんて、頭動かないし!
※ ※ ※
そんな自問自答の中、気付いたらぼくの午前中は終わっていた。
チャイムで我に返れば、もう昼食時間である。
この高校はお金に困っていないのか、食堂があった。全校生徒が食べても座席に困る事のない、大きな食堂完備である。最高。
「鹿毛、飯行かねぇのか?」
「あ、モチ行く……って、お前は?」
「……食堂があるんだね。おれも一緒に行かせてもらっても良いかな」
「あぁ、別に良いぜ。俺は、たじ」
「よろしく」
ぼくに声を掛けてくれたのは、田地洪。この高校に入ってから出来た友達で、一緒にいても疲れない奴。
愛想の良い田地は、笑顔で冴木を迎えた。
「おおっ、何か増えてねぇ?俺、などやま~」
「よろしく」
食堂につくと、いつメンの名渡山儀輔が声を掛けてくる。雰囲気からして、一足先にトイレに行っていたようだ。
名渡山は見た目が少しチャラいが、実は一番学力が高い。テスト前はいつも教えてもらっている。大抵ぼくは、いつもこの三人でいた。
あの時あの場所には、ぼくと彼しかいなかった。つまりは、状況的に他の誰かに聞く訳にもいかない。明らかにおかしな人認定されてしまう。
一年三組の自分の席に着席したぼくは、鬱々と先程の出来事に思考を走らせていた。
「おはようございます。はい、今日は転校生の紹介です」
担任の教師、久留厚二。四十歳を越えている筈だが、噂によると未だ独身らしい。
まぁ、ぼくが思うに。嫁探しよりも。百キロありそうな体型から、どうにかした方が良い。健康でいなければ。独身なら尚更だが、将来の妻子の為にもだ。
「冴木です」
そうして次に口を開いた人物を見て、ぼくは叫びそうになった。
冴木と名乗った男子生徒は、ペコリと会釈をしただけで突っ立っている。その彼こそ、先程の彼なのだ。
「……え?それだけ?……ま、まぁ良いけど。んじゃあ、席は鹿毛の隣ね。近い内に席替えするかもだけど、後ろでも良いかな?」
「はい、大丈夫です」
そんなやり取りの後、彼──冴木がぼくの方へ近付いてくる。
正確にはぼくじゃなくて。ぼくの隣に指定された自分の座席に、なんだけど。
「またあったね」
「……どうも」
小声でぼくに話し掛けた冴木は。どう応対したら良いのか分からないぼくの、そんな曖昧な返答に。あの時と同じ、口元だけの笑みを作る。
そしてそれっきり、教壇へ視線を向けてしまった。──え、今のぼくは間違っていた?でもどう答えたら良いのかなんて、頭動かないし!
※ ※ ※
そんな自問自答の中、気付いたらぼくの午前中は終わっていた。
チャイムで我に返れば、もう昼食時間である。
この高校はお金に困っていないのか、食堂があった。全校生徒が食べても座席に困る事のない、大きな食堂完備である。最高。
「鹿毛、飯行かねぇのか?」
「あ、モチ行く……って、お前は?」
「……食堂があるんだね。おれも一緒に行かせてもらっても良いかな」
「あぁ、別に良いぜ。俺は、たじ」
「よろしく」
ぼくに声を掛けてくれたのは、田地洪。この高校に入ってから出来た友達で、一緒にいても疲れない奴。
愛想の良い田地は、笑顔で冴木を迎えた。
「おおっ、何か増えてねぇ?俺、などやま~」
「よろしく」
食堂につくと、いつメンの名渡山儀輔が声を掛けてくる。雰囲気からして、一足先にトイレに行っていたようだ。
名渡山は見た目が少しチャラいが、実は一番学力が高い。テスト前はいつも教えてもらっている。大抵ぼくは、いつもこの三人でいた。
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