89 / 92
旅行編──第十一章『弾けて光って花開く』──
その89。至福の時間
しおりを挟む
※ ※ ※ ※ ※
チャプッと、お湯が跳ねる。
露天風呂付きの部屋を選択して、本当に良かったと脩一は非常に満足だった。
──まぁ……満ち足りた気持ちの大部分が今、俺の腕の中にいる美鈴の存在なんだけどな。……つまりは美鈴がいれば何処でも良いわけで、そうなると……いやでも混浴は良い、最高だ。
完全に脱力している美鈴を胸に抱きながら、脩一は二人での初入浴中である。
そも二回戦を承諾されて、大人しく脩一が引き下がる筈もなかった。
当然ながら美鈴の反応を見ながら、激しく穿つ事はしない。そんな自分本意の性欲をぶつけなくとも、美鈴と二人で高め合う情交は想像を絶する快楽だった。
「んぅ……」
「美鈴……?」
「しゅ、ち、さ……」
「お風呂、気持ち良いね。ここの泉質は美人の湯って程、肌がすべすべになるんだってな」
「……んふ……っ、あ……まだ……感覚っが、おかし……」
「あちこち敏感になってる美鈴、エロかぁわぃ」
「も……ダメ、だから……っ」
「分かってる。明日の旅程を潰すようじゃ、美鈴に嫌われそうだから」
身体を温める為にお湯で肌を撫でるだけで、美鈴はびくびくと小刻みに震える。
素直に快楽を拾ってくれる彼女を、脩一は愛おしく感じた。
そもこの混浴も、初めは美鈴からかなり反対されたのだ。
一番の理由は羞恥からであろうが、それでも二戦後の体力尽きた彼女に、自力で入浴出来るまで体力の回復を待つ時間は残されていなかった。──部屋付きの露天風呂の使用は二十四時までであり、二人で交互に入る時間がなかったのである。
「ほら、もうあがろうか。首に腕を回せる?」
「んぅ……、何かもう介護されてる感じ」
「ふはっ。俺はそれでも良いよ。四六時中、美鈴に触れられる」
「むぅ~……、私も体力つけなきゃ」
「ムキムキになる?」
「そ、それはさすがに嫌だけど……」
互いに裸体ではあるものの、脩一が情事を意識させる触れ合いをしない為、美鈴は比較的平生の対応を返してくれていた。
脩一がそうする理由としてはただ一つ、美鈴に嫌われたくないからである。
彼女を気遣いながらバスローブを着せ、クリップで纏めていた美鈴の髪を解す。
癖毛だから嫌だと美鈴は言うけれど、脩一はこの緩やかに曲線を描く柔らかな髪が好ましいと思っていた。
──まぁ、美鈴ならストレートだろうがショートだろうが、結局のところ何でも良いと思えるんだろうけどな。
「どうしたの?脩一さん」
「ん?……いや、美鈴が好きだなぁと」
「えっ……、今?」
「今っていうか、いつも思ってるけど」
「も、もぅ……っ。そんな事言ったって、何も出ないんだからねっ」
「くくくっ。良いよ、それでも。俺は美鈴に求めてるんじゃなくて、与えたいんだから」
「っ~~~、物凄く恥ずかしいっ」
照れて顔を両手で隠す美鈴を姫抱きで布団に誘い、同じ布団へ脩一も潜り込む。
一方の布団は先程情交で使用してしまった為、美鈴も文句を言う事なく大人しく脩一の腕に収まっていた。
「……でも、与えたいっての……今なら私も少し分かるかも」
「ん?……美鈴?」
「えっと……好きってのはなんか、自分に向かってのかなって。愛してる……っての、相手に向けられている感じで……っ。脩一さん、おやすみっ」
話の途中だった感があるものの、美鈴は慌ただしく顔を布団に押し込む。
ストン──と落ちる音が聞こえた気がした。
「………………美鈴、愛してる。俺もその考え、凄く良く分かる。そ、か……。そうなんだ……」
「も、おやすみって言ったもん」
「うん、おやすみ、美鈴。俺の最愛の人」
美鈴の言葉に、脩一は初めて真理を会得した感覚を受ける。
そうして改めて優しく美鈴を腕の中に包み込み、その存在を感じ──心から満ち足りた感情を覚えた。
『恋』と『愛』の違いなのだと美鈴は言う。
『見返り』を求めない、己の感情の在り方。──これまで誰にも『愛』を告げた事のなかった脩一が、美鈴へ抱くものと確かに同義だった。
始まりは対応の最低だった脩一が、徐々に美鈴へ向ける心が変化していった。
そして少しずつ彼女を欲しい気持ちが強くなったが、決して奪いたい訳ではないのだと気付く。
過去の苦い経験から女性恐怖症気味の脩一だったが、美鈴は知っている『女性』という分類から少し外れていた。否──そういうタイプを知らなかっただけ。
異性に対して冷えきっていた脩一を、温かい心にさせてくれた美鈴。心だけでなく、肉体的にも彼は救われた。
──本当に、男として終わったかと思ってたし。………………有弘には爆笑されたけどな。マジであの時は、本気で絞めてやろうかと思ったぞ。
『俺、EDかもしれん。マジで……』
『ギャハハハハッ!そんなら、俺がやってやろうか?』
『くそ……。お前のチョン切ってやろうか』
『ブハッ!脩一が壊れちまった。ギャハハハハ……』
過去のやり取りを思い出し、内心で溜め息を吐く。
美鈴を知らなかった──女性に故意に近付こうと思わなかった頃の脩一には、考えられない程の現状の変化だった。
チャプッと、お湯が跳ねる。
露天風呂付きの部屋を選択して、本当に良かったと脩一は非常に満足だった。
──まぁ……満ち足りた気持ちの大部分が今、俺の腕の中にいる美鈴の存在なんだけどな。……つまりは美鈴がいれば何処でも良いわけで、そうなると……いやでも混浴は良い、最高だ。
完全に脱力している美鈴を胸に抱きながら、脩一は二人での初入浴中である。
そも二回戦を承諾されて、大人しく脩一が引き下がる筈もなかった。
当然ながら美鈴の反応を見ながら、激しく穿つ事はしない。そんな自分本意の性欲をぶつけなくとも、美鈴と二人で高め合う情交は想像を絶する快楽だった。
「んぅ……」
「美鈴……?」
「しゅ、ち、さ……」
「お風呂、気持ち良いね。ここの泉質は美人の湯って程、肌がすべすべになるんだってな」
「……んふ……っ、あ……まだ……感覚っが、おかし……」
「あちこち敏感になってる美鈴、エロかぁわぃ」
「も……ダメ、だから……っ」
「分かってる。明日の旅程を潰すようじゃ、美鈴に嫌われそうだから」
身体を温める為にお湯で肌を撫でるだけで、美鈴はびくびくと小刻みに震える。
素直に快楽を拾ってくれる彼女を、脩一は愛おしく感じた。
そもこの混浴も、初めは美鈴からかなり反対されたのだ。
一番の理由は羞恥からであろうが、それでも二戦後の体力尽きた彼女に、自力で入浴出来るまで体力の回復を待つ時間は残されていなかった。──部屋付きの露天風呂の使用は二十四時までであり、二人で交互に入る時間がなかったのである。
「ほら、もうあがろうか。首に腕を回せる?」
「んぅ……、何かもう介護されてる感じ」
「ふはっ。俺はそれでも良いよ。四六時中、美鈴に触れられる」
「むぅ~……、私も体力つけなきゃ」
「ムキムキになる?」
「そ、それはさすがに嫌だけど……」
互いに裸体ではあるものの、脩一が情事を意識させる触れ合いをしない為、美鈴は比較的平生の対応を返してくれていた。
脩一がそうする理由としてはただ一つ、美鈴に嫌われたくないからである。
彼女を気遣いながらバスローブを着せ、クリップで纏めていた美鈴の髪を解す。
癖毛だから嫌だと美鈴は言うけれど、脩一はこの緩やかに曲線を描く柔らかな髪が好ましいと思っていた。
──まぁ、美鈴ならストレートだろうがショートだろうが、結局のところ何でも良いと思えるんだろうけどな。
「どうしたの?脩一さん」
「ん?……いや、美鈴が好きだなぁと」
「えっ……、今?」
「今っていうか、いつも思ってるけど」
「も、もぅ……っ。そんな事言ったって、何も出ないんだからねっ」
「くくくっ。良いよ、それでも。俺は美鈴に求めてるんじゃなくて、与えたいんだから」
「っ~~~、物凄く恥ずかしいっ」
照れて顔を両手で隠す美鈴を姫抱きで布団に誘い、同じ布団へ脩一も潜り込む。
一方の布団は先程情交で使用してしまった為、美鈴も文句を言う事なく大人しく脩一の腕に収まっていた。
「……でも、与えたいっての……今なら私も少し分かるかも」
「ん?……美鈴?」
「えっと……好きってのはなんか、自分に向かってのかなって。愛してる……っての、相手に向けられている感じで……っ。脩一さん、おやすみっ」
話の途中だった感があるものの、美鈴は慌ただしく顔を布団に押し込む。
ストン──と落ちる音が聞こえた気がした。
「………………美鈴、愛してる。俺もその考え、凄く良く分かる。そ、か……。そうなんだ……」
「も、おやすみって言ったもん」
「うん、おやすみ、美鈴。俺の最愛の人」
美鈴の言葉に、脩一は初めて真理を会得した感覚を受ける。
そうして改めて優しく美鈴を腕の中に包み込み、その存在を感じ──心から満ち足りた感情を覚えた。
『恋』と『愛』の違いなのだと美鈴は言う。
『見返り』を求めない、己の感情の在り方。──これまで誰にも『愛』を告げた事のなかった脩一が、美鈴へ抱くものと確かに同義だった。
始まりは対応の最低だった脩一が、徐々に美鈴へ向ける心が変化していった。
そして少しずつ彼女を欲しい気持ちが強くなったが、決して奪いたい訳ではないのだと気付く。
過去の苦い経験から女性恐怖症気味の脩一だったが、美鈴は知っている『女性』という分類から少し外れていた。否──そういうタイプを知らなかっただけ。
異性に対して冷えきっていた脩一を、温かい心にさせてくれた美鈴。心だけでなく、肉体的にも彼は救われた。
──本当に、男として終わったかと思ってたし。………………有弘には爆笑されたけどな。マジであの時は、本気で絞めてやろうかと思ったぞ。
『俺、EDかもしれん。マジで……』
『ギャハハハハッ!そんなら、俺がやってやろうか?』
『くそ……。お前のチョン切ってやろうか』
『ブハッ!脩一が壊れちまった。ギャハハハハ……』
過去のやり取りを思い出し、内心で溜め息を吐く。
美鈴を知らなかった──女性に故意に近付こうと思わなかった頃の脩一には、考えられない程の現状の変化だった。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる